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【揺れる景表法③ 「不実証広告規制」の魔力】 根拠なければ違反、抑制的運用から暴走へ

2019年 4月18日 13:35

 景品表示法が規制する優良誤認は、条文中の「著しい」を「顧客誘引性があること」と東京高裁が判例で示し、実質的に広告表現すべてに広まる。その後、判例の次元を超え、「著しい」の解釈さえも吹き飛ばす「核兵器」が景表法に備わる。それが「不実証広告規制」だ。

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 想像して欲しい。自分が過去に話し、書いた内容に、ある日警察官が捜査に訪れ、「嘘の疑いがある。証拠を示せ」と命令される。期限は2週間以内。出さない場合、出しても証拠と警察が認めない場合は、法違反とみなし、事案が公表され、罰金を科される。

 捜査と裁判、実質的に「警察」「司法」の二つを執行できる強権だ。仮に新聞やテレビの報道内容に、警察が同じ事を行ったら、社会を揺るがすことは必定だ。憲法が保障する「表現の自由」との関係が、大きくクローズアップされよう。

 しかし現在、消費者庁による景表法違反の取締りのうち、優良誤認の取締りは、ほとんどが前述のような効力を持つ「不実証広告規制」により行われ、違反となっているのだ。

 2013年度は、優良誤認で措置命令を行った41件のうち、22件が不実証広告規制によるもので、約半分。しかし年々その割合は高まり、17年度は実に8割超の案件に適用されている(=)。

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 「捕まったら死刑」。ある行政関係者はその凄まじい取締り効果と権限をこう評する。

 「不実証広告規制」とは耳慣れない日本語だが、文字通り「不実証=実証されていない」広告を規制するものだ。

 「優良誤認」の判断に際し行政が必要と認める時、表示を行う事業者に期間を定め、表示の裏付けとなる合理的な根拠となる資料の提出を求める。事業者側が根拠を提出しない場合、資料が根拠と認められない場合は、その表示を「優良誤認」と”みなす”ことができるものだ。現在、景表法の7条2項に規定されている。

 ポイントは優良誤認と「みなす」点だ。これにより、取締りが極めて容易になるが、一方で規制の目的と手段が逆転し、「言葉狩り」が始まる危険も高じる。どういうことか。

 通常の違反事件の調査では、「著しい優良性(優良誤認)」の疑いのあるものについて、当局が表示と実態のかい離を指摘して、これが違反か否かの判断基準となる。ところが不実証広告規制では、優良誤認の疑いがあるものに、根拠資料を出せと命じて、資料が期限内に出ないと即違反。資料が出てきても、当局が「これは根拠ではない」と判断されると違反だ。

 つまり「著しく優良」だから、景表法違反だったのが、「根拠がない」から、景表法違反になってしまう。主と従が入れ替わる訳だ。不実証広告規制が景表法に加わったのは16年前の03年。「今の時代であれば、不実証広告規制は、絶対に国会を通らない」。消費者庁関係者でさえ、こう話す。

 ではなぜ、これほどまでに強力な規制が成立したのか。前回触れた空気清浄器の事件を含め、効果や効能の表示に関して、その当時、景表法を運用していた公正取引委員会が、手を焼いていたからだ。

 例えば、ゴキブリなど害虫を寄せ付けないとうたう害虫駆除器の効果について、当局が優良誤認の疑いを持ったとする。

 これを違反とする場合、公取委はこうした分野を研究する学者に、機器の効果の分析を依頼し、表示通りの性能かを立証する必要があった。しかも、予算がないため、無料で行ってもらうように頼み込んでいたという。さらに、結果が出るまで、相応の時間も要する。

 加えて「身長を伸ばす」「鼻を高くする」などの常識ではありえないトンデモ表示も、いちいち効果を調べる必要があった。

 これらの手間と時間を無くして、迅速に効率良く違反事件を処理するというのが公取委の狙いだった。

 しかし、このロジックがそもそも問題だ。警察が証拠固めに時間がかかるから、「無実」の証拠を出さないと逮捕というようなことが許容される訳はない。

 ただ「不実証広告規制」が憲法が保障する「表現の自由」に照らして危ういという意識は、当時の公取委にはあったようだ。このため、当初は明らかにインチキと思われる表示にのみ、不実証広告規制を用いる抑制的な運用だった。しかし、そのタガは時間とともにはずれ、「不実証広告規制」は暴走を始める。(つづく)
 
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