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「機能性表示食品」広告規制が緩和へ、景表法適用に猶予、第三者の自主規制活用

2019年 6月13日 14:25

 機能性表示食品の広告規制が緩和される。消費者庁は、景品表示法違反の予見性向上のため、機能性表示食品の広告規制をめぐるガイドラインを作成する。業界の協力を得て第三者機関を設置し、執行の透明性も高める。政府の規制改革推進会議の提言を受けたもの。企業からは「制度を活用の大きなメリット」と期待の声が上がっている。


 
景表法処分「予見性低い」と答申 

 「根拠が不十分か十分なのか、分かりにくい。要件を満たしているか否か、はっきりさせる」(内閣府規制改革推進室)。消費者庁にガイドライン策定を求めた規制改革推進会議は、6月6日の「第5次答申」の狙いをこう話す。

 景表法は、全体の印象から違法性を判断する。このため、企業が景表法上の問題を予見することが非常に難しい。執行においても、表示に対する根拠の妥当性をめぐる判断理由は示されない。

 機能性表示食品は、健康食品と比べても、リスクが高い。制度は届出ガイドラインに沿って科学的根拠を示し、「不備事項指摘」など消費者庁による複数回のチェックを経て公開。だが、あくまで企業の自己責任による届出制で担保はない。公表後は、公開情報をもとに業界内外から疑義が呈される可能性があるほか、消費者庁自身、これを背景に景表法の調査に動くことがある。いわば常時監視の状態だ。

 こうした中、2017年11月に起きた「葛の花事件」では、「届出表示」と「広告」のかい離が問題視された。昨年6月には、「甘草由来グラブリジン」を含む機能性表示食品に対する景表法の調査も行われた模様だ。「葛の花」と異なるのは、科学的根拠そのものが問題となったとみられる点。制度に沿って公開した根拠を背景にした取締りに、多くの企業が制度活用の意欲を削がれた。

「処分相当の事案指針で説明」  

 機能性表示食品は、科学的根拠を欠いた場合、食品表示法に基づく「撤回(行政指導)」、景表法による「措置命令(処分)」の二つの対応が混在している。答申では、どちらの対応になるか予見性が乏しく、事業者の萎縮を招いていると指摘。「食表法は、事案の軽重により『指導』『指示』『命令』といった方針が明確だが、景表法にはない。課徴金がかかるほど重い措置であるのに突然の処分では困る。食表法同様、何が悪質性が高く、処分相当の事案なのか、ガイドラインで分かりやすく説明する」(同)として、景表法で処分対象となる事案について、表示対策課に考えを示すことを求める。

 また、届出の段階で、販売後の関係法令上の問題点を把握できるよう、届出と事後規制に関わるガイドラインも要求する。これら措置について、「業界と意見交換を行いつつ、今年度中に作成する」(同)としている。

公取協のスキームを活用 

 運用面でも業界との連携を強化する。答申では、第三者的役割を持つ機関を活用し、法執行の透明性向上を図る仕組みの構築を要求する。

 規制改革推進会議がイメージするのは、公正取引協議会だ。公取協は、業界自らが定め、消費者庁、公取委の認定を受けた公正競争規約を運用し、自主規制を行う。ただ、「健食業界は事業者も多く、市場を網羅する公取協はつくれない」(同)。このため、そのスキームを活用しつつ、届出製品の根拠の妥当性判断など、消費者庁と連携して景表法事案に対応する。消費者庁にも業界の自主的な表示適正化に向けた取り組みの支援を求めており、自主規制により法執行に猶予を持たせることを想定しているとみられる。

 第三者機関は、「業界団体の協力を得て、メンバーを構成する新たな団体を想定。景表法の知見に精通した団体に協力を求めていく」(同)としている。

 機能性表示食品の広告規制について、第三者機関と連携する業界団体に加盟する企業への対応は、「(第三者機関を通じて対応するイメージに)なる」。一方、連携関係にある業界団体に所属しない企業への取締りは「従前と変わらない」(同)としており、対応は大きく分かれる。

消費者庁「答申の意図汲み対応」 

 答申に対し、消費者庁表示対策課は「消費者庁にしっかりやりなさい、と宿題を出された形。(答申の)意図を考え、よく読み込んで対応していく必要がある」とする。公取協をイメージするかには、「選択肢の一つだが、これから検討する」としている。ガイドライン作成にも「業界の意見を聞きつつ作成する」としている。

 食品表示企画課は、「届出後の指摘に一定の基準、指針がなく予見性が低いのであらかじめ指摘の可能性があることを指針で示すことを求められていると認識している」としている。

 規制改革推進会議における答申は、昨年11月、同会議において日本通信販売協会(=JADMA)、健康食品産業協議会が行った問題提起が契機となった。昨年末の会合では、JADMAが、景表法の処分が広告全体から総合的に判断され、個別案件で判断が異なることなど「予見性が低い」と指摘。処分基準と事例の公表を求めた。健康食品産業協議会も取締りの境界線が不明確なため予見できず、「事業者の萎縮を招き、不公平感がある」と訴えた。これらの問題提起を受けて、規制改革推進会議が、消費者庁に対応を求めていた。

 今回の答申に、JADMAは、「制度を活用する企業は、基本的に消費者庁が設計した制度に沿って届出を行い、情報公開もしている。であれば、本来、表示の問題もまずは指導で対応し、次に処分などで対応する方法もあるのではないか」と、コメント。

 一方で、今後のガイドライン作成には、「(評価は)内容による。答申をそのまま解釈すれば、予見性が高く、事業者が萎縮せず、分かりやすい指針が作成されることを期待する」と、今後も消費者庁の対応を注視する考え。

 健康食品産業協議会は、「予見可能性が高まるのは良いこと。いきなり処分が行われる唐突感、分かりにくさがなくなることは予想されるので希望に沿った答申。ガイドラインに沿った表示であれば景表法を適用するのではなく、第三者機関が仲裁するものであってほしい」とする。

                           ◇

 第三者機関を通じた運用となることで、機能性表示食品を取り巻く広告規制は大きく変わることになる。「いわゆる健康食品」との区別も明確になり、制度活用に乗り出す企業も増えることが予想される。制度は4年を迎えて、大きな転換点を迎えることになりそうだ。

 
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