TSIが決済刷新で海外進出加速、2月にサイト統合 「コモジュ」導入

2025年06月25日 14:52

2025年06月25日 14:52

0625145247_685b8eaf3df9d.jpg TSIは今年2月、グループの通販サイト「mix.tokyo(ミックスドットトウキョウ)」を刷新した。同社が展開する49ブランドのうち、34ブランドによるモール型オンラインストアとしたもので、通販サイト構築サービス「Shopify(ショッピファイ)」でサイトを作成。決済プラットフォームには「KOMOJU(コモジュ)」を導入した。


 多数のブランドを抱えるTSIでは、オムニチャネル戦略を重視していたこともあり、ブランドごとに通販サイトを運営、ピーク時には31サイトを手掛けていた。しかし、コストがかさむ上に組織の肥大化や仕組みの煩雑化といったデメリットが生まれたという。

 TSIの親会社であるTSIホールディングスでは、中期経営計画において収益構造の改革を打ち出している。2027年2月期に約100億円の収益改善を達成する計画だが、ECにおいては、サイトの乱立による非効率なシステム関連のオペレーションコストを削減することで、約5億円の改善効果が出ると見込んでいる。

 TSIの岸武洋EC事業統括部副統括部長兼オペレーション部長は「コロナ禍が収まり、アパレル業界では実店舗への回帰が進んでおり、当社でも自社ECの売り上げは成長が鈍化しつつある。EC単体で売り上げを伸ばしていくには投資が必要だが、そのためには中身を筋肉質にしないといけない」とサイト刷新の理由を説明する。

 「ショッピファイ」を選んだのは、コスト面でリーズナブルかつ汎用性があるため。岸副統括部長は「『ショッピファイ』はどちらかといえば中小向けという印象があったが、他の大手アパレルが使っている点も決め手になった。(乗り換えにより)トータルの運営コストは半分くらいに減った」と明かす。会員メンバーズサービスを統合し、買い物の利便性を向上。顧客体験を充実させながら、運営コストだけで5億円という大幅なコスト削減を実現したわけだ。

 とはいえ、これまでの通販サイトでは、機能開発により、いろいろな仕組みを積み上げることで使いやすいサービスを築いてきた。「アドオンの機能はいったん捨てるという決断をしたわけだが、『ショッピファイ』はカスタマイズ用のアプリがたくさんあるので、大半の機能はカバーできている」(岸副統括部長)という。

 11カ月という短期間でのサイト移行となったわけだが、「大きい課題は出ていない」(同)という。ただ、サイト刷新により、旧会員1100万人に再登録してもらう形となったことから、現状の会員数は大幅に減っている。TSIが抱えるブランドの実店舗において、会員登録を促しているものの、売り上げでいうと従前より若干目減りしているのが実情だ。

 岸副統括部長は「インセンティブなど、スタッフが顧客への声がけ回数を増やすための施策が大事だが、その一方でデジタル側でのアプローチも必要になってくる」と話す。大型プロジェクトのため、刷新後の数カ月は試運転期間となっていたが、5月の大型連休からはキャンペーンをスタート。現在は夏商戦に向けて販促を強化している。

 さらに岸副統括部長は「もともとTSIはブランド単位で戦ってきた会社なので、ブランドエンゲージメントがすごく強い。そのため、サイトを統合したのに1ブランドでしか買わない顧客が多い。ブランドを横に広げるための取り組みを強化したい」と意欲を語る。



 決済プラットフォームにはDEGICA(デジカ)が手掛ける「コモジュ」を導入。東南アジアなど、海外の決済手段に対応していることや、拡張性に優れている店が決め手となった。

 デジカの徳満泰彰ヴァイスプレジデントは「日本の決済代行会社は、国内決済には強いが海外決済には弱く、逆に海外の決済代行会社は海外決済に強いが国内決済に弱い傾向が強い。当社は国内・海外問わずさまざまな決済手法に対応している」とコモジュの強みを説明する。65以上の決済方法に対応しており、これを数百に増やすプロジェクトも進んでいるという。

 また「ショッピファイ」との親和性が高い点も強みだ。さらに、独自の不正検知システムの導入により、「チャージバック(クレジットカード不正利用)」も起きにくい。実際、TSIの新サイトでは、カードの承認率を保ちつつ、チャージバックは現段階で1件も発生していないという。

 日本のアパレル市場は規模が右肩下がりで縮小しており、TSIのような大手アパレルにとって、海外進出は喫緊の課題。岸副統括部長は「27年までに東南アジアや台湾向けに事業を展開したい。越境ECは決済がとても重要なので、豊富な決済手法に対応していることは大事」と話す。

 東南アジアや台湾は、日本とし好の差が少なく、身体のサイズにも大きな違いがないことから、MDに大きなローカライズをする必要がない。通販サイト刷新と新決済システムの導入で、海外進出を加速したい考えだ。

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