気になる言葉「決済承認率」 3DSで認証が厳格化、承認率の改善支援に脚光

2025年07月09日 18:08

2025年07月09日 18:08

 今年3月に導入が義務付けられたクレジットカードの本人認証サービス「EMV-3Dセキュア(3DS)」。クレジットカードの不正利用防止を目的としたもので、カード番号の盗難被害にあう通販サイトが減らない中、EC企業にも加盟店としての導入が求められている。


 この3DS必須化によって、不正被害が起きた際の負担先として従来までは加盟店だったものがカード会社へと移行した。そのため、カード会社がこれまで以上に認証を厳格に判定するようになっている。これにより、生じているのが「決済承認率の低下」だ。従来までは問題なく通過できていたものが、審査の厳格化を受けて、顧客のカード決済がエラーとなり、認証が通りにくくなる事態が起きているのだ。

 この問題に詳しいYTGATEの高橋祐太郎代表によると「カード会社の心理としては、とにかく不正利用が1件起きると(不正売買商品の)全額負担になる。手数料ビジネスのカード会社としては大問題のため、とにかく怪しいものは通さない、不正を減らそうという力が働いて、正常な取り引きも含めて今は承認が通りづらくなっている」とする。EC関連では、家電やブランド品といった高額商品に加えて、CtoCサイトでの転売対象になりやすいトレーディングカードなどの商品を扱う通販サイトの決済ほど、認証がより厳格になっているという。

 カード決済が承認されずに商品を購入できなかった顧客としては、当然、他のサイトに移って買い直すこととなる。せっかく支払いのステップまで到達した顧客を目の前で失ってしまうことは非常にもったいない。加えて、一度決済エラーではじかれた顧客が、再びそのサイトに戻ってくる可能性も低いため、EC企業にとっても頭の痛い問題だ。

 対応としてはカード会社への承認率改善の交渉が必要となるが、その際には加盟店であるEC企業がどういった商品を扱っていて、どのような導線で決済をしていて、また、3DSを導入して不正を排除できる対策がきちんととれているかなどを明示できなければならない。YTGATEの場合は、加盟店企業ごとの顧客との取引状況をカード会社別で見える化する無料診断を展開している。あわせて不正対策も行っており、その結果をもとに承認率改善の交渉も代行。EC企業を中心に徐々に診断ニーズが増えているという。「加盟店から『3DSを入れてからなぜか決済が通りづらくなった』との話をよく聞く。『なぜか』ではなく、理由を見える化して対策することが重要」(高橋代表)と説明。例えば請求書と発送先の住所不一致の場合は、乗っ取りを疑ってアカウントを停止するなどの対策も考えられる。結果的に承認率が改善されればカード会社としても加盟店としても、安全な取り引きが増えることになり、顧客にとっても使いやすいサイトになるというのだ。

 同社によるとこの問題に関して、EC企業をはじめ加盟店側の認識はまだまだ乏しいというのが率直な印象だという。EC企業としてはこうした決済承認率・エラー率を把握していないと、知らぬ間に大きな機会損失を生んでいることにもなる。承認率が低いカード会社がないか、個別に分析を行い、改善に向けた交渉を一刻も早く行うことが重要だ。

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