〈笹川コンシューマー商品本部長に聞く JR東日本商事の市場拡大戦略〉 ファンと交流機会拡大、顧客起点の商品開発が鍵に

2026年07月22日 14:44

2026年07月22日 14:44

 JR東日本商事では、通販事業などを所管するコンシューマー商品事業において、今年度から市場拡大に向けた積極路線に舵を切っている。同社はECに関してJR東日本グループの仮想モール「JRE MALL」に複数店舗を出店しており、中でも「鉄道グッズ」と「地産品」の2軸で商品を展開。更なる成長に向けては、「顧客起点」を意識したアプローチを鍵に挙げている。同事業責任者の笹川俊成コンシューマー商品本部取締役本部長に今後の方針や展望を聞いた。


0723111238_6a6178963ce6c.jpg ——今年度から営業方針を大きく変えている。

 「鉄道グッズや地産品の事業は、両方とも立ち上げから10年以上が経過した。これまでは売り上げ規模が小さく、事業運営も厳しい面があり、その収支改善が最大の目標であった。しかし、ここ数年の取り組みでこの目標がほぼ達成できた。当然、今後も収支は重要になるが、これからはより事業としての成長や市場の拡大を意識したものに大きく方針を転換したい」

 ——従来の方針としては。

 「これまでは単品の売り上げや粗利を積み上げて収支改善することを優先した事業展開であったため、ヒット商品をたくさん売るというシンプルな活動を中心にやっていた。売り上げが順調に伸びる中で、一方で商品や売り場にファンの存在が確認できるようになってきた。

 当社は選び抜いた多くの商品を持っており、また販路も直営店だけではなく、卸先も含めて広がってきている。これらの商品群や売り場、さらには我々が目指している『鉄道を多くの人たちにもっと楽しんでもらいたい』、『地域の良さを多くの人たちに伝えたい』という事業ビジョンも含めてブランド全体で、顧客と向き合ったビジネスを展開していきたいと考えるようになった」

 ——方法として考えられることは。

 「顧客の中で(企業に対して)ブランド価値が生まれるのは、商品を購入したタイミングではなく、商品や店舗を通じた体験や感動が生まれた瞬間なのだと思う。なので、商品や売り場がたくさんあり、売り上げが高いというだけではこちらも顧客の評価や満足度を正しく把握することはできないし、ブランドに感じてもらっている価値を理解することは難しい。そのため、消費者の方たちとブランドとの間にもっと直接的な接点を作って関係性を構築したいと考えている。

 そこに向けて、例えば鉄道グッズで言えば『TRAINIART(トレニアート)』ブランドについて、昨年から公式LINEアカウントの運用を始めた。地産品の『のもの』ブランドに関しても、オンラインコミュニティ『おいしい日本再発見!byのもの(絆のコミュニティ 公式サークル館内)』を設けて、そこで顧客とコミュニケーションをとることを開始した。そこでは単純に商品販売に関わる活動だけではなく、顧客が我々に対して何を求めているかということを把握し、ブランド側から提供したいと考えている価値をそこで伝えるようなコミュニケーションを増やしている」

 ——具体的には。

 「LINEでは、アンケート機能を使って過去に販売していた商品の人気投票を行い、上位の商品を再販するという企画を行った。また、もっとシンプルに、発売している商品の評価を気軽に投稿できる機能も追加し、顧客参加型の取り組みを図っている。

 地産品に関してもオンラインコミュニティでは、顧客がお勧めする地域の菓子や、好きな商品の思い出を尋ねるなど、ちょっとしたお題を投げかけて、ファンからの声を集めるような施策を行っている」

 ——グッズと地産品それぞれのファンに対してアプローチする内容は変わるのか。

 「鉄道グッズファンの人たちはニーズを明確に示してくれるので、それに対して我々が提供する商品や売り場が合っているのか、もっと何を求めているのかなどを具体的に聞くようなコミュニケーションを取っている。

 一方で、地産品については我々も世の中にあるすべての地域商品を知るまでに至っていないため、顧客がどんなものを知っていて求めているのか、価格帯や内容量など需要に一致する商品が提供できているのかどうかを把握することがまず先になっている。時間はかかると思うが、結果としてこうしたファンの人たちとともに、事業を一緒に作りあげていくことを目指したい。

 どうしても我々は実店舗が都内に集中していて、顧客は利用できる駅なども含めてリアルでの購入機会は限られてしまう。やはりECを通じて多くの顧客が自分のタイミングで自由に購入してもらえるということは重要。そのため、コミュニケーションの場もやはりデジタルが中心になると思う。一方で、実店舗はリアルならではの特別な体験ができる場としての役割を強めたいとも考えている」

 ——現状のコミュニティの規模感は。

 「26年6月24日時点で、トレニアートの公式LINEは友だち数が約1万5000人。地産品のオンラインコミュニティのサークル参加人数は約4000人となっている。まだ始まったばかりで人数も少ないが、それぞれ着実に増えていっている。ECや店舗の利用者がここを経由してもらえるようになると商品の購入割合も高くなるだろう。

 鉄道グッズや地産品の事業に関しては、こちらが選定した商品を『買ってください』と働きかけていくというよりも、顧客の皆さんが求めるものを正しく理解して、その需要にあった商品を我々が調達・仕入れ・開発して届けていくという事業だと思っている。そうなると、やはり顧客起点の考えはこれまで以上に強める必要が出てくると考えている」

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