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【揺れる景表法⑤ 「消費者庁」という迷宮】 一体感欠く組織、表対課の「独善」で進む執行強化

2019年 5月 9日 15:00

 「不実証広告規制」は創設当初の「効果・性能」への限定運用から、「注文数」「業界最大手」などと一般表示へも拡大を続ける。「ぼんやり」等の暗示表現に合理的根拠を求めるに至り、トンチの域に入る。暗示の根拠を示せる訳はなく、暗示で消費者の著しい優良誤認が生じるとも考えにくい。取締りの予見性も失われ、「表現の自由」とも鋭く対立しよう。混乱は、「迷宮」とも言われる消費者庁の体制にも一因がある。

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 消費者庁の創設は2009年9月、今年で10年目となる。自由民主党の政治主導で発足が決まるが、折しも民主党への政権交代が重なり、初代の担当大臣には、社会民主党の福島瑞穂党首(当時)が就任した。各省庁から表示や安全に関する29の法令を移管し、職員は主に出向による混成部隊となる。

 消費者庁は、政治のグリップが効きづらい組織といえる。担当大臣は他職と兼任で、現在の宮腰大臣も、8つの所管との掛け持ちだ。

 大臣の入れ替わりが激しいのも特徴だ。10年間で17人、特に民主党政権時には発足間もないなか、3年あまりで8人が就く慌ただしさ。これでは大臣不在ともいえる状況だ。

 国民に選ばれた国会議員が消費者庁の長であることは重要だ。組織の理屈ではなく、議員本人の見識、コモンセンスが反映されるからだ。大臣が兼務であり、交代が頻繁という点では重石がうまく機能していないと言える。

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 重石が弱いとなれば、組織としてしっかり内部を固め、機能する必要がある。ところが消費者庁は各省庁からの出向で構成されているため、一体感に欠ける面もある。

 実際に現在の景表法執行ラインを、出身官庁を含めてみてみる。

 上から、長官(法務省)→次長(内閣府)→審議官(公正取引委員会)→表示対策課長(公正取引委員会)→食品表示対策室長(農林水産省)→同室課長補佐(厚生労働省)という布陣だ。まだら模様が見て取れよう。長官、次長以外はほぼ出向元官庁の指定席となっており、よほどのことがない限り変わらない。幹部は約2年で、出向元に戻り、消費者庁からは離れる。

 事件処理は、表示対策課長が中心となるが、同じ組織出身で、呼吸があうのは公取委の出向者の専任ポストとなる審議官と課長のラインになる。

 公取委は景表法の移管前から運用しており土地勘があり、調書の取り方などノウハウも有している。他部署の仕事には介入しないという霞が関の掟もあり、景表法の運用に他省庁の出向者が口を挟むのは難しい状況だ。

 実際「表示対策課は極端な秘密主義。幹部でさえ迂闊に部屋に入れない」(消費者庁関係者)という声もある。事件調査の情報漏えい防止とはいえ、あまりの壁の高さには内部からも疑問の声があがっているのだ。

 閉鎖的な組織体制は結果として独善を生む。景表法の運用が、さしたる議論や反対もないままに、異様なほどに強化されているのは、外部とのコミュニケーション不足も影響していよう。

 実は公取委が景表法を運用していた時代には、独善や暴走を防ぐブレーキがついていた。他ならぬ公取委の委員の存在だ。

 当時も景表法の運用は事務方である事務総局の景品表示監視室が行っていた。違反とする措置命令の前には、委員会にかけて、委員の承認を取る必要があった。公取委の委員はさまざまな経歴を持つ有識者で、そこでは自ずからコモンセンスが働いていた。

 典型が「開運財布」の事件だ。03年12月に、公取委は「持つだけでお金が貯まる」などと表示していた開運財布について、優良誤認で景表法違反とした。当時を知る関係者によれば、これには公取委の一部委員から「待った」がかかったという。「こんな表示にまで景表法を使うのはおかしいのでは」との疑問だ。

 一方で当時は新聞雑誌などで開運商法が氾濫していた。こうした背景を丁寧に委員に説明し、ある条件付きで承認されたのだという。

 表示の根拠を出さねば即違反とする「不実証広告規制」の導入で取締りは極めて容易になっている。一方で課徴金が導入され、企業へのダメージは大きくなっている。これを鑑みれば、景表法運用には以前に増した緊張感が必要なはずだ。

 一方で景表法違反はあくまで行政処分であり、犯罪捜査ではない。そこにも留意した柔らかな法運用が欠かせない。その意味で、政治・行政・司法の三権で運用に疑問があがったのは偶然ではなかろう。(つづく)


 
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