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楽天市場で新施策スタート 「送料無料」対応分かれる、支援期間延長への期待も

2020年 3月26日 13:40

 難産の末、3月18日にスタートした仮想モール「楽天市場」の「送料無料ライン」。楽天では、新型コロナウイルス感染拡大の影響などを鑑み、全店舗への一律導入を見送る形となった。同施策が独占禁止法に違反しているかどうか、公正取引委員会による調査は終わっていないものの、出店店舗にとっては、ひとまず次のフェーズに移ったといえる。各社は「送料無料」にどう対応したのか。
 









 楽天では施策開始にあわせて、送料無料ラインを導入した店舗において、一度の注文で税込み3980円以上買い物をすると、通常の5倍の「楽天スーパーポイント」がもらえるキャンペーンを実施した。さらには、大型セール「お買い物マラソン」も21日から開始、店舗の売り上げを底上げするための施策を立て続けに行った。

 新施策についてユーザー向けに説明しているガイドページには「39(サンキュー)ショップ(送料無料ライン対応店舗)」が検索できる窓を設置。買い物カゴの画面に施策に対応していることを示すアイコンを表示するようにしたほか、楽天市場内検索の結果画面にも同アイコンを出すようにする予定だ。

 施策への参加店舗数は分かっていない。楽天では「新型コロナの影響で導入できない店舗への配慮があるほか、導入店舗数ではなく楽天市場の流通額の伸びを追うべきだという担当者の判断もあり、開示していない」(EC広報課)と説明。施策の効果については「流通自体は好調で手応えを感じているが、本施策の細かい効果検証、分析はこれからになる」(同)という。

 参加店舗限定のポイントキャンペーンについては、18日に行われた公取委の定例会見で、菅久修一事務総長がキャンペーンの違法性の有無を問う記者からの質問に対し、「独禁法には(取引先の)不当な差別的取り扱いを禁止する規定があるが、それは条件が例えば多少違うからすぐに違反となるわけではなく、行為の実態や市場の状況を見ながら判断していく。個別案件なので言いにくいが、少なくとも本件については審査継続中だ」とコメントした。一方、楽天では「当社が実施する各施策については、さまざまな観点から検討を行い、法令順守に努めている」(同)としている。

単価減を懸念

 楽天としても、新施策を消費者に向けて大々的にアピールしていきたいところだが、実際はどの程度の店舗が参加したのか。「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2019」受賞店舗のページを見ると、同施策に対応していない店舗も見受けられる。楽天が対応店舗数を開示していないため実態は不明だが、店舗に聞き取りをする限り(表参照、SOY受賞店舗など大手を中心に本紙が聞き取り)、未対応の店舗はそれなりにあるようだ。

 アパレル関連Bでは、3980円よりも高い金額での購入で送料無料としている。そのため、3980円での購入から送料無料になってしまうと、まとめ買いをしていた人が減る懸念が出てくる。「単価が一度下がるとなかなか上がることはない。人口が減少し、顧客数が減っているこの時世で単価を下げるのは厳しい。下げた分に見合っただけ顧客が増えればいいが……」。

 CD・DVD関連の店では「以前からメール便では低い購入金額での送料無料に対応しており、宅配便の送料無料までの金額を下げると、顧客が重量制限のあるメール便ではなく宅配便を使うようになり、粗利率が悪化する」と対応しない理由を説明する。化粧品の店では「自社で展開する他の店舗との公平性を期すために変えなかった」とする。

 また、ある出店者は「新型コロナウイルス対策商材の注文が急増し、スタッフが出荷対応に追われている。今はとても対応している余裕がないので、一律導入が見送られて助かった」とほっとしたように話す。

効果はいつ出る

 一方で、施策を導入した店舗からも「送料無料ラインを引き下げたことで、単価の減少が生じると想定しており、物流コストの圧迫が厳しさを増すと考えている」(総合通販A)、「コストが増えるため、利益率は落ちる。モール全体の売り上げが伸びればカバーできる」(雑貨関連A)、「事前の実験では、客単価が落ちてコンバージョンレート(CVR)は上がらなかった。多くの出店者が実施すればユーザーの反応は変わるかもしれないので、CVRが上昇して利益率がこれまでと同水準、もしくは高まればいいのだが」(アパレル関連A)など、単価の低下や利益の減少を懸念する声も聞こえてくる。

 こうなると注文が増えるかが問題となってくるが、今のところは「変化はない」(健康食品)、「特に影響はなく、知り合いの店舗も同じ状況のようだ」(雑貨関連C)。とはいえ「新型コロナの影響で消費マインドが落ちている」(アパレル関連A)ことを考えると、多くの店舗にとって逆風が吹いている可能性は高く、現段階では施策の導入がどんな影響をもたらしたかは読みにくい。

 楽天では施策を導入した店舗に対し、注文1件あたりメール便100円、宅配便250円を支援金として3カ月間提供する。「十分ではないが、ゼロよりはいい」(スポーツ用品の店)、「送料無料で効果があるなら1年間補てんしてもいいのでは」(健康食品)、「期間が短いし価格も安い」(化粧品)、「施策を導入させることを目的とした一時的な措置であり、3カ月間の補てんも短期間だ」(総合通販A)、「補てんといっても3カ月だけなので、長い目で見ると施策の導入で損をする」(CD・DVD関連)など、厳しい声もあったが、「最初は全店舗に強制し、楽天は身銭を切らない感じだったが、その後の方針転換で送料を補てんすることになったのは評価できる」(アパレル関連A)、「頑張ったと思う。数の出る小物を扱っている店にとってはありがたい」(雑貨関連C)といった声もあった。

 施策を巡る楽天の対応については「同様の対応を今後も続けていくのであれば、出店者はもとより、消費者の楽天離れも進んでいくのでは」(健康食品)、「モール自体に悪いイメージが付いてしまうことは良くはない。今回の一件がユーザーからどう見られているのかが気になる」(雑貨関連B)との意見が出ていた。

 今後は長期的に流通額がどう推移していくかが問題になるが、「3980円という価格はユーザーが殺到するほどのインパクトはなく、ユーザーへの認知もまだ不十分」(アパレル関連A)、「すぐにインパクトのある数字が出ないとなると、店舗にとっては効果の有無が測りにくい」(雑貨関連C)との声もあり、楽天側が店舗の納得できる効果を、数字として示せるかが重要になりそうだ。

 ただ、「少しずつ顧客に浸透していけば伸びるのでは、という期待はある」(スポーツ用品)との声があるように、即効性を求めるのは時期尚早という面もあるだろう。新施策のユーザーへの周知も今後進んでいくはずで、新型コロナ禍がある程度収まってからが本番という見方もできる。楽天側でも、店舗の流通増を下支えするための支援策を打ち出していく必要があるだろう。
 
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