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ヘルスケア表示 拱手の代償③ 無責任広告の末路

2020年 8月28日 10:49

デジタルタトゥーの痕跡
 
 薬機法の「何人規制」では警察側が一敗地にまみれた事件もある。しかし、ネット広告で逃げ延びることは難しい。「デジタルタトゥー」が刻まれているからだ。

 「何人規制」を用いて、広告代理店関係者を5人も検挙した大阪府警。
 
 新タイプの摘発であり、「医薬品的効能効果」「ねつ造」「架空の体験談」など無責任な広告を展開する代理店や制作会社、放置や意図的に利用する広告主に強い抑止効果を生み出している。文字通り「一罰百戒」だ。
 
 「何人規制」での芋づる摘発や制作や代理店サイドに狙いを定めた検挙は、ハードルが高い。外形的には広告主の広告であり、関与の証拠固めが難しく、時間を要するからだ。さらに言えば、捜査権を有する警察や検察のみ可能で、厚生労働省や消費者庁の行政処分調査では、権限、ノウハウ、時間的制約に照らして、不可能だ。警察しかできない難易度の高い案件である。
 
 判例が「薬事警察」の積極運用を縛ってもいた。11年の神奈川県警「キトサンコーワ事件」の影響だ。神奈川県警はキトサンの健康食品で、がんなどへの効果をうたっていたキトサンコーワの社長らを逮捕。「何人規制」を適用して関連書籍を販売した出版社の元社長らも逮捕する。その後、橫浜地裁は元社長を無罪とする。加えて神奈川県への名誉毀損での損害賠償訴訟も認められる。「何人規制」での証拠固めの難しさを示すケースだった。
 
 以降、健食の薬機法違反事件の摘発件数で、無双だった神奈川県警は消極的となる。玄人筋では、薬機法違反事件に情熱を持っていた担当の退職や、神奈川県警↓橫浜地裁横須賀支部送検の有罪パターンが崩れたことが影響したとも言われていた。
 
 ではなぜ大阪府警はステラ漢方、KMウェブコンサルティング、ソウルドアウトという、3つものヤマをあげることが出来たのか。
 
 ポイントは「デジタルタトゥー」であろう。
 
 デジタル化により、情報のやり取りは早く、細かくなった。これはビジネスのスピードを加速し、深化させた。一方で過程は余すところなく、PCに痕跡を残す。広告を出稿するまでは、当然のことながら、クライアント⇔広告代理店⇔制作会社の3社で、内容の確認・変更・承認等がメールで行われる。これはある1社のPCで削除しても、関係の1台でも残っていれば、家宅捜索でたちまち実際の関与度と商流が警察に把握されてしまう。しかも、河井議員夫妻の買収容疑で注目された「デジタルフォレンジック(電子鑑識)」を使えば、削除した過去データも復元可能だ。

 「何人規制」を粛々と発動できる条件は揃っているといえよう。
 
 ネット上にも「デジタルタトゥー」は残り続ける。実際、問題となったステラ漢方の「肝パワーEプラス」の薬機法違反と思われる広告(=写真)は、8月24日の時点でも大手ポータルで商品名を検索すれば、直ぐに確認できる。アフリエイト等でネット上に拡散された広告は、簡単に回収できないのだ。
 
 そもそも薬機法で規制されている「医薬品的効能効果」を食品の広告でうたわねば、何ら問題にはならない。
 
 サプリメントビジネスにおける原理原則が、ネット広告では疎かになっていることが事件の最大のポイントであろう。
 
 ネットの広告を扱う代理店や制作会社の一部は、薬機法に対する緊張感が著しく欠けており、これは構造的問題だけに病根が深い。
 
 なぜ、そうなるのか。制作会社や広告代理店は、複数のクライアントから、同時並行的に依頼を受けるからだ。制作や代理店フィーはネット広告は大きくはない。アフィリエイトであれば出来高制。強い表現で売上げを稼ごうとの意図が働く。体験談等も、フォーマットが出来上がっており、転用するケースもあるとされる。広告ではなく、物語(フィクション)だ。これまでは「何人規制」は積極的に運用されず、広告サイドは何をやっても大丈夫と浮かれていたとも言えよう。しかし、今回の事件は「祭りの終わり」を告げた。(つづく)
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