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日健栄協がコロナ禍に懇親会、会員軽視、問われる協会の識見

2021年 1月28日 13:30

 日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)が、国会議員、一部企業を招き、大人数の懇親会を企画していたことが分かった。年末にかけて新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府のコロナ対策に反した内容、会員軽視のスタンスに業界関係者から批判の声が上がっている。

 











議員と一部企業招き20人規模

 「正直困惑している」。12月頃、企画を知ったある関係者はこう漏らす。コロナ禍による景気減速で苦境にあえぐ企業は少なくない。12月は感染拡大で緊張感が高まっていた時期でもあった。

 企画は、「特定保健用食品(トクホ)及び機能性表示食品勉強会及び懇親会」(以下、懇親会)。開催は、1月13日。会場は、参議院議長公邸だ。

 出席者リストに記載があるのは、参議院議長であり、協会の会長を務める山東昭子参議院議員ら8人の議員。現内閣の官房長官や厚生労働大臣を含む錚々たる顔ぶれだ。

 業界側の出席者は、日健栄協の矢島理事長、青山充常務理事、特定保健用食品公正取引協議会の下田智久会長、企業は、大正製薬、日本水産、ヤクルト本社、サントリー、明治、花王に加え、関連6~7社と記載がある。全員が出席すれば、少なくとも総勢20人を超える大イベントになっていたであろう。

会食批判も、「延期」判断は1月

 だが、折りも折。厚生労働省は、コロナ禍でのイベント開催の必要性の検討や自粛を呼びかけ、「議員会食」には世論の厳しい目が向けられていた。

 政府の分科会は10月、「4人以下の会食」など対策の徹底を求めたが、12月には菅義偉首相と自民党の二階俊博幹事長ら8人との「ステーキ会食」が明らかになった。菅義偉首相はその後謝罪したが、二階氏は目的を「意見交換」と反論。さらなる批判を招いた。

 だが、協会の大イベントはその中でも予定。本紙が開催前の1月8日に取材した際に「延期」と回答があり、判断したのは、「1月5日以降」(下田顧問)とする。ただ、あくまで、延期。新型コロナの影響長期化から予断を許さない状況にあるが、改めての開催を予定している。

開催会場は議長公邸

 「議長として公正な運営を意図していても、党籍を有していては疑惑を招きやすい」。参議院議長は、その独自性、自主性を確保する観点から政争から距離を置き、党籍離脱が慣例になっている。立法府を司る三権の長であり、協会会長も務める山東議員は、そのような国会の公正な運営で重大な職権を担う。

 コロナ禍の開催だけでなく、当然ながら、その会場も慎重に判断すべきものであろう。だが、協会が会場に選んだのは、議長公邸。理由は「利便性がよいから」(下田顧問)。「会長職にあり、協会としては参議院議長という認識がない」(同)と、その適切性に疑問を抱いてはいない。

「先生方と意見交換したかった」

 開催の目的にも疑問がある。協会は、懇親会の意図を「先生方との意見交換」(下田顧問)と回答。「トクホの公正競争規約が策定され、健食業界が大きな変革期と捉えていた」(同)と成果を強調する。

 だが、規約自体、そもそもその策定に疑問の声は多かった。トクホ市場は、横ばいで推移。年間許可件数も90年代と同水準の30件程度と低調で存在感が薄れている。再活性化こそが求められていた。

 景品表示法の処分も、約30年の歴史でわずか1件。企業の抑制的な表示が窺え、公正取引協議会の参加も許可品を持つ約150社のうち、わずか26社(発足時)だ。当時、「必要性を感じない」、「問題ないカテゴリに業界自ら火付けした」と、企業の評判は芳しくなかった。設立から約半年を経過した今も活動の実績は見えてこない。懇親会開催を急ぐ必要性はあったのだろうか。

「企画自体のセンスを疑う」

 日健栄協は、12月1日、新型コロナの感染拡大を受けて賀詞交歓会の中止を早々に決めている。一方で、懇親会は予定。「全国から集まるものではない」(下田顧問)とするが、開催規模、社会情勢から中止が不可避なのは、誰の目にも明らかだ。開催を知った会員企業からも「水面下で一部企業のみを呼んで行おうとしていたことに怒りを感じる」、「企画自体あり得ない判断。コロナ禍の開催、議長公邸を選ぶセンスを疑う」、「会員軽視。協会の感覚と企業ニーズのズレはどこからきているのか分からない」、「医療現場が逼迫する中、健康産業でリーダシップを発揮すべき立場にある団体の行動とは思えない」など批判の声が上がる。

                                                                        ◇

 協会は、あくまで「先生方の勉強会」とし、事務局的な立場との認識を示している。

 コロナ禍の開催や議長公邸使用の適切性などについてリストにある議員に尋ねたが、本紙掲載までに回答は得られなかった。企業にも同様の質問を行ったところ、「お問い合わせの件について、当方は存じ上げません。お答えはご容赦いただきたい」(大正製薬)、「当社からコメントはございません。(日健栄協に)お問い合わせください」(ヤクルト本社)とのみ回答があった。

 「協会からかん口令が敷かれている」(関係者)というのがその理由とみられるが、「先生方、企業に迷惑がかかってはいけない」(下田顧問)と、気にする前に、まず向き合うべきは会員企業ではないか。業界をけん引する団体の識見はかようなものだ。


勉強会「問題ない」、議長公邸利用も「議長との認識ない」

<日健栄協の下田智久顧問に聞く 懇親会企画の目的と真意>




 議員、一部企業を出席者とした勉強会・懇親会の開催は、誰が企画し、どのような目的があったのか。日本健康・栄養食品協会の下田智久顧問(協会前理事長)が取材に応じた。

 ――勉強会開催の目的について聞きたい。

 「開催は積極的に公表していない話。明かせないならこだわらないが、どう知ったのか」

 ――答えられない。どう知ったのかを協会として知る必要があるのか。

 「今後も勉強会を企画することはあり得る。いちいち情報が洩れていくのは困る」

 ――勉強会開催が問題と認識していないならよいのでは。

 「そう思う。答えにくいのであればしつこくは聞かない」

 ――誰が企画したものか。

 「矢島鉄也理事長と私が相談して決めた」

 ――開催の目的は。

 「トクホの公正競争規約の導入など業界の大きな変革期と捉え、その現状を先生方に説明して意見交換したいと考えた」

 ――政治的アプローチにより何を達成したいと考えたのか。

 「国民にとって信頼できる業界にするため、意見を賜りたいということで発足した勉強会になる」

 ――その成果として機能性表示食品制度の導入などがあるとの考えか。

 「そうなる。政府の規制改革会議では機能性表示の新制度に向けた検討が行われ、トクホの公正競争規約もできた。これも先生方との議論の中でそのような仕組みを導入したらどうかという話があった」

 ――開催を決めた時期は。

 「昨年10月頃だ」

 ――結局、開催しなかった。

 「していない」

 ――延期した、とのことだが、延期はいつ決めた。

 「1月5日の御用始めの際、新型コロナの感染拡大等を踏まえ開催する状況にないと考えた」

 ――中止ではなく延期なのか。

 「先生方の指導を仰ぎたいので、コロナが収束してくれば開催を考えることはある」

 ――賀詞交歓会の中止はいつ決めた。

 「12月1日に決定して会員に告知した」

 ――理由は。

 「12月のコロナの拡大状況が芳しくないことがあって決めた」

 ――賀詞交歓会は中止しながら、一部企業を集めて勉強会開催を進めては会員企業の納得が得られないのではないか。

 「全国から集まる賀詞交歓会は無理だろうと考えた。少人数の勉強会も色々と言われており、緊急事態宣言の発令も予想される中で決めた」

 ――開催を公にしていない。

 「していない」

 ――協会事業として行うことについてなぜ公表しないのか。

 「勉強会は13年に発足した議員有志の集まり。事務局長が事務的な役割を担っている。何回か開催しているが、当時から公表していない。そこで重大な決定があればお知らせすることはある」

 ――出席者はどういう基準で選択したのか。

 「その都度、テーマに応じて健食業界に造詣に深い方を選んでいる。今回は、トクホの規約が大きなテーマであり、会員企業の中で売り上げが多いところ、商品分野の重複がないよう勘案した」

 ――関連6、7社の具体名は。

 「それはそちらで把握しているのでは。こちらはあまり積極的に言いたくはない」

 ――ほかに意見を持つ企業があっても公表しておらず手をあげることができない。

 「大人数を集めて意見調整するのは現実的ではない。なので、トクホの販売量が多く、しっかりした意見を持っている企業を協会内で相談して決めた」

 ――議員の出席の有無は。

 「勉強会も明確な規則があるものではなく、決まっていたのは山東会長、鴨下幹事長の両先生。自由に参加してくださいというもの。当日来られない方もいるだろうし、出席者が不確定な段階で開催を取りやめた」

 ――開催費用は協会が拠出するのか。

 「予算を組んでいるものではなく、協会は先生方のお手伝いという立場。費用は参加者で均等に負担いただく」

 ――議長公邸を会場とした理由は。

 「先生方もすぐ来られ、遠方から来る企業の交通の便を考え私共からお願いをした」

 ――議長は、公正な国会運営のため、党籍離脱が慣習になっている。いち団体の催しで議長公邸を使うのは適切ではないのではないか。

 「そこまで考えず、利便性を考えた。山東会長は20年以上、協会の会長職にあり、協会としては参議院議長という認識がない。適切性は答える立場にないが、貸してくれるのであればありがたいと考えた」

 ――議長の立場でいち団体の会合に出席することの適切性はどう考えている。

 「私は議長というより会長としての認識が強い。協会の勉強会ではなく先生方の勉強会なので、山東先生が中心に会を開くことは問題がない。これとは別に会長として指導いただくのも無報酬の名誉職であり、運営に口を出すこともないので問題ない」

 ――テーマには現在検討されている疾病リスク低減トクホの対象拡大もあるか。

 「テーマに入ってくる」

 ――協会は検討会に委員として参加している。検討会で意見発信すればよいことで、水面下で政治的アプローチを行うことはいらぬ疑念を招くのでは。

 「そのようなことをする団体ではない。そこで利害があることを決めることはこれまでもない。先生方は行政、業界のスタンスとはまた異なる視点でご意見される。それをお聞きしたかった」

 ――今後、会員企業への説明は考えているか。

 「ご提言を受けて必要がない限り、開催内容を説明することは考えていない」

 ――今回の件で山東議員にも質問書を送ったが回答がない。

 「中止にしたものであり、取材に応じる必要があるかどうかも考えた。ただ、先生方や企業に迷惑がかかってもいけないと考え、私がまとめて回答すると山東先生にも伝えた」

 
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