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コロナや円安、厳しい逆風<上半期の通販業界を振り返る> 新しい買い物体験への挑戦も

2022年 7月21日 12:00

 2022年も半年が経過し、折り返しに入った。コロナの感染拡大については、依然として一進一退の状況となっており、通販業界としても人々のライフラインを支えるという重要な役割が今も続いている。産業界全体を見渡すと、歴史的な円安に伴う輸入品価格の高騰に加え、原材料不足による価格改定など、歓迎できない話題も多く聞かれた。消費環境が厳しい状況となる中、今上半期に通販業界で起きた主な出来事を振り返ってみる。

 




















 まずは、コロナ禍を巡る動きから見ていく。年明け1月には東京をはじめ、感染拡大が顕著となっている各県でまん延防止等重点措置が適用(3月下旬に解除)。外での人流を抑制する状況となり、昨年同様に非対面である通販を活用した消費活動が盛んになってくる。

 こうした動きに伴って、ECでの買い物体験をより充実させていくためのサービスやツールが相次いで導入されていった。前年に引き続き活況だったのがライブコマースで、主だったところでは、「&mall」を運営する三井不動産商業マネジメントが、スター販売員によるスペシャル配信を開始。また、auCLでは吉本芸人を多数起用したライブコマースを行ったほか、日テレ7とセンテンスでは共同配信によるライブコマース企画も開始している。ANAPでは2月にティファレトと、アパレル商品を中心に取り扱うライブコマース事業の合弁会社を設立することで合意している。

 ライブコマース以外のサービスでは、ゾゾネクストやソフトバンクなど3社が仮想試着アプリの実証実験を開始した。また、大日本印刷では、ECと連動した秋葉原のVRコンテンツを開設し、ギフト通販のシャディではメタバースカタログの取り組みを開始するなど、新しい買い物体験を提供するための試みが次々と発表されていった。

物流周りでの新しい試みも

 また、コロナの感染対策で急速に普及が広がっていった自動配送や置き配の分野でも、新しい試みが始まっている。まずは、楽天グループなど8社が、自動配送ロボットの普及による利便性向上を目指す「ロボットデリバリー協会」を1月に発足。楽天グループについては、5月にパナソニックホールディングスや西友と、茨城県つくば市で自動配送ロボットの公道走行による配送サービスのデモンストレーションを実施している。また、ヤマト運輸やKDDIなど3社が、スマホを車の鍵にするデジタルキーを活用した車内への置き配の実証実験も行うなど、配送課題の解決に向けた施策が広がっていった。

 そのほか、海外で先行していたコロナ禍でのトレンドでもある「クイックコマース」について、日本では対照的な動きが見られた。1月に入りZホールディングスがグループ傘下各社と組んで、日用品や食品、飲料などを最短15分で配送するサービスを本格展開。その一方で、フードデリバリーサービス大手のフードパンダが、日本でのサービスを終了している。

 EC周りのサービスを強化するに当たって、デジタルマーケティングのてこ入れも進んでいった。千趣会は、独立系経営戦略コンサルティングファームと、データを活用したマーケティングなどを行う合弁会社を設立。ニトリHDでも、デジタル戦略専門の子会社として、ニトリデジタルベースを設立。ニトリグループとは異なる賃金体系や成果報酬を取り入れることで、優秀な人材獲得を図る考え。

 コロナ禍を機に昨年ごろから一気に関心が高まったSDGsやサステナブル関連の取り組みでは、アスクルが1月に、日野自動車らと電気自動車を用いた配送業務を通じて最適な電気自動車の運用方法などを探る実証実験を開始。クックパッドでは3月より、一般販売されない規格外サイズ食材などの販売を開始している。そのほか、ゾゾでも来夏に稼働予定の新物流拠点において、設備投資による業務の自動化を推進することで約30%の省力化を目指すと発表している。

化粧品や衣料などで再編も

 M&Aや事業譲受など業界勢力図の再編に向けたニュースもいくつか見られている。1月にロコンドがデファクトスタンダードからファッションECの「waja」事業を譲受したのを皮切りに、2月にはユーグレナが、環境配慮品取り引きモールを運営するフレンバシーと、フェムテック事業を展開するイルミネイトを相次いで子会社化。

 3月にはアダストリアが子会社を通じて、子供服のECブランドのオープンアンドナチュラルを連結子会社(孫会社)化。INSTYLE GROUPでは化粧品通販のメビウス製薬とその関連法人の全株式を取得して子会社化している。そのほか、6月にはアイケイグループがベビー・マタニティ用品のコンビから化粧品事業を譲受した。

メーカーや大手小売で情報流出

 行政処分関係でも動きがあった。消費者庁は1月、大幸薬品が販売する「クレベリン」シリーズ4商品に景品表示法に基づく措置命令を下した。昨年12月、消費者庁が措置命令案を提示し弁明の機会を付与した段階で命令の差止訴訟を提起したが、処分を免れなかった。4月にもシリーズの「置き型」2商品で景表法に基づく措置命令を受けた。

 そのほか、4月にはECや広告運用支援を行うウェンドレスに対して、6月には健康食品を販売している沖縄特産販売に対して、それぞれ景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を下している。

 そして今年もまた個人情報の流出が相次いで起きた。決済代行事業のメタップスペイメントでは最大約46万件のクレジットカード情報が流出したと発表。森永製菓では複数のサーバーが不正アクセスを受けて、通販サイト「森永ダイレクトストア」の顧客情報165万人分が流出した恐れがあると発表。家電量販店のエディオンでも、不正アクセスを受けてサーバー内に保存した顧客情報の7万件超が外部に流出した恐れがあると発表している。

 通販業界のみならず、今上半期に国内の小売市場で非常に大きな関心事となったのが「円安」だ。3月以降、急速に円安基調が進み、6月には約24年ぶりとなる1ドル=135円台を記録。輸入商品の価格が高騰し、通販企業各社もコスト増分を吸収し切れず、商品価格の改定を行ったところは少なくなかった。

 これに関連して、2月からロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したことも、原材料価格などを押し上げる大きな要因となっている。事態の解決には今後も長い時間を要する可能性が高く、さらなる悪化を懸念する声も上がっている。

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 春先以降はコロナの感染者数が減少していったこともあり、訪日外国人観光客の受け入れ再開など、経済活動拡大の機運も高まった上半期だったが、7月以降は再びコロナの感染者数が増加傾向に入り、状況が一変した。通販業界でも、大規模なプロモーション活動などは見合わせるような様子が伺える。引き続き、下半期においても各社には難しい環境下での舵取りが予想されている。

 
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