テレビ東京ダイレクトが音声AIで電話受注、まずは食品で実証開始

2026年03月11日 14:06

2026年03月11日 14:06

 テレビ東京ホールディングスの通販事業子会社、テレビ東京ダイレクトがAI(人工知能)を活用した電話受注対応を開始した。あらかじめ当該商品に関する情報や過去の顧客からの主な問い合わせ内容などを学習させた音声AIが顧客からの電話に対応し、顧客との会話を通して商品の届け先、決済方法、注文内容など受注に必要となる情報を聞き取り、受注を完結。聞き取った内容をテキスト化して受注データとして処理する流れ。2月下旬から売れ筋の食品で実証を開始。今後、実証を繰り返し、AIによる受注対象商品を拡大して改善を重ねつつ、受注時に呼量の多い売れ筋にも対応させたい考え。AI受注で通販番組放送直後といった呼量ピーク時などに受電しきれず対応を待たせたり、IVR(自動音声応答システム)で折り返し対応を行うといった「せっかくお電話をかけて頂いたのにすぐに注文できないというお客様の不満を解消したい」(西潟賢二部長)考え。また、電話がつながらないことで発生する販売機会ロスの削減や電話受注に関わる人件費の圧縮にもつなげたい狙い。


 同社ではAI受注に際して、「きわめて人に近い会話のやり取りができる」(西潟部長)と評するAIベンチャーのVerbex(バーベックス)の音声AIを活用。数百回におよぶテストを経て、2月下旬から実際の顧客に対応する実証を開始した。同社の食品通販事業「虎ノ門市場」で販売する食品のうち、SKU数が多くなく、また、商品に関する質問が比較的少ない食品についてオペレーターが対応する通常受電で取り切れなかった分のうち、100コール程度に限定して音声AIに対応させ、実証を行った。

 音声AIでは初めに「ただいまお電話が込み合っておりますので自動音声でご注文を承ります。ご不明な点は後ほど担当者より折り返しご連絡致します」と断ったうえで、通常の人によるオペレーターが受注対応を行うように注文商品名や注文数、電話番号、決済手段の確認(※音声AI受注では後払いと代引きのみに限定)、氏名、配送希望時間帯など商品の配送に必要な情報を聞き取り、「食品のため、今後、キャンセルをお受けすることができませんのでご了承ください」と重要事項を伝えて最後に「ご注文頂きありがとうございました」と対応を終了する流れ。AIと顧客との会話の内容は文字起こしされ、当該データを使って受注データとして加工するもの。

 なお、会話中に顧客から質問などがあった場合は、事前に学習済みの「過去にあったよくある質問」で回答できる範囲についてはその場でAIが回答を行い、回答が難しい質問などに関しては「担当者から折り返しお電話致します」とアナウンスして対応を終了し、その後、オペレーターが当該顧客へかけ直して対応する。また、同社ではクレジットカード情報を自社システムで保持しない体制を取っているため、対話ログが残ってしまうAI受注ではクレジットカ—ド決済に対応していない。そのため、顧客からクレジットカード決済を求められた場合などもAIによる受注対応を終了、オペレーターが対応する通常受注とする。

 会話中、顧客の声が聞こえにくかったり、不明瞭でAIが認識できなかった場合は何度かAIが顧客に聞き直しを行った後にそれでも認識できなかった際は一旦、当該パートを飛ばして受注対応を続行し、対応を最後まで行った後にAIが聞き取れなかった顧客の会話に「フラグ」を自動的に立て、担当者がAIと顧客との会話の対話ログ(※録音および文字起こし)を確認し、誤ったものは修正するほか、担当者が確認しても不明瞭だったものなどについては当該顧客に再度、連絡をして確認するという。

 初回の実証結果としては会話内の一部のイントネーションが不自然であったり、顧客の住所を確認するために復唱を行った際に、漢字の読み違いが発生するなど一部の問題はあったものの、受注対応自体は概ね順調だったという。同社でも「確認のため、AIとお客様がやり取りした音声を聞いたところ、お客様の中には人が対応していると最後まで思っていた方がいたくらいAIによる会話が非常に自然だった」(西潟部長)と初の実戦投入の結果を評価。ただ、会話中の顧客の「相づち」をAIが当該パートの話を顧客が理解・了承したと認識し当該パートを途中で終了し、次のパートに進んでしまい、返品に関する確認など重要事項を伝えられないまま受注対応を終えてしまうなどの事態が発生したケースもあったよう。

 初回の実証後から一週間後に行った同じく2月下旬実施の2回目の実証では初回の結果を受け、相づちに関する点など問題のあった部分を修正したことで、完全受注率は初回よりも向上したという。

 開始時点では商品数を絞って実証を繰り返しノウハウを蓄積していくが今後、月数回程度から数十回のペースと実証の回数を増やしつつ、加えて音声AIのよる同時応対数も現状の2〜3倍まで増やす。また、対応対象商品も入電数が多い売れ筋などにも広げて音声AIによる受注の実証を行って結果などを分析しながら改善を繰り返していく考え。また、食品だけでなく、主力の雑貨などの受注でも音声AIを活用した実証を行っていきたい考えもあるようだ。

 西潟部長はAI受注の実証を開始した狙いについて「テレビを見てあの商品が欲しいと思われ、お電話をかけて頂いたのに、なかなか電話がつながらなかったり、IVRで折り返しお電話することをお知らせしてお待ち頂くということはお客様満足度の低下にもつながるし、機会損失を招きかねない。また、テレビ通販はどうしても放送直後の呼量に応じてオペレーターの人員数を整えざるを得ない。また、放送が深夜の場合、オペレーターを集めることも容易ではない。電話受注におけるコスト負担や手間が非常にかかっていた」とした上で、AI受注の導入で最初の電話対応で受注を完結させることによる顧客満足度向上のほか、関連コストを現行の2〜3割程まで削減したい意向。また、受注対応だけでなく、顧客からの電話による問い合わせ対応にもAIを活用したい考えで、将来的には受注・問い合わせをあわせて関連コストを削減したいとしている。

カテゴリ一覧