〈堀田覚専務に聞くパルのEC事業の成長戦略〉 マーケットインのMDが奏功、「スリコ」のEC在庫も統合

2026年06月17日 15:07

2026年06月17日 15:07

 総合アパレル企業のパルは、2026年2月期のEC売上高を前年比11.0%増の590億円まで伸ばした。自社通販サイト「パルクローゼット」は社員インフルエンサーの活躍もあって好調を維持。衣料品のEC化率は40.8%とアパレル業界では高水準だ。「SNSやデータ活用も不可欠だが、結局は商品力が大事」と語る堀田覚取締役専務執行役員(顔写真)に、自社ECの強化策などを聞いた。


0618100745_6a3344e11490c.jpg ——前期のEC売上高は600億円突破まであと一歩だったが、自社ECや出店モールの各売り場で順調に伸ばした。前々期は小幅な伸びにとどまった「ゾゾタウン」経由も、前期は9.3%増の280億円で2ケタ成長に迫った。

 「まずEC全体で600億円には乗せたかった。『ゾゾタウン』については、前々期は同サイトでの構成比が高いヤングカジュアルが苦戦したが、前期は秋冬シーズンくらいからヤングカジュアル市場が復調したことが大きい。『ゾゾタウン』で実施している大型セールなど各種プロモーション施策にしっかり商品を充てることは継続的に取り組んでいる」

 ——自社EC売上高の構成比が高まっているが、なかなか「ゾゾタウン」経由を超えない。前期は前年比8.1%増の242億円だった。

 「自社ECに無理やり振りたいとは考えていない。『ゾゾタウン』は業績面でもマーケティング的にも意味のある売り場だ。自社ECのお客様と比べてゾゾユーザーはそこまで当社ブランドに対するロイヤリティが高いわけではないが、数多くの新しいお客様と知り合うチャンスがある」

 ——自社ECの新規獲得面では社員インフルエンサーのSNS発信が貢献している。

 「SNSの総フォロワー数は2450万人超に拡大しているので社員インフルエンサーのSNS発信はもちろん大事だが、それだけでは足りない。現状、アプリ経由売り上げがEC売上高の3分の2程度まで高まっている。会員数は間もなく1400万人に届いてくるが、アプリのダウンロード件数も900万件を超え、年内に1000万件の大台に乗りそうで、会員登録やアプリダウンロードの起点として実店舗が大きく貢献している。『パルクローゼット』の通販サイト、アプリを見ているうちにECでも買ってもらえるようになるので、ECチャネルの新規獲得に店舗スタッフの存在は欠かせない」

 ——広告費については。

 「広告も以前よりは強化している。テレビなどのマスメディアは活用していないが、ウェブ広告やSEO対策などがメインで、まだそこまで効果が出ているわけではないが、AI最適化などにも取り組み始めている」

 ——社員インフルエンサーが商品企画にも参加している。

 「人気スタッフが自身のSNSで抱えるフォロワーのニーズに対応した商品を企画するケースが増えていて、企画する社員インフルエンサーの数、商品数、売り上げも増えている。その部分に予算を組んでいるわけではないが、人気スタッフは熱量の高いフォロワーとの信頼関係ができていて、フォロワーが求めているものを理解して商品を作っているのですごく売れるし、結果的に社員インフルエンサーが企画する商品が増えている。かなりの頻度で商品化していて、ECチャネルだけで受注販売したり、店舗でも売ったりとケースバイケースで取り組んでいる」

 ——社員インフルエンサーが企画してヒットした商品は。

 「例を挙げると、EC専用のレディースアパレルブランド『ゼヴォン』では、昨年春に販売したデニムパンツが2週間で4000〜5000本売れた。元々、店頭にいたスタッフが『ゼヴォン』の社員インフルエンサーとして情報を発信している。EC専用ブランドで実店舗を構えていないので、SNSが強くないと成立しない」

 ——自社ECのコンテンツや機能面で強化していることは。

 「実店舗でも自分の骨格の話をしたりするお客様がすごく多いので、通販サイト内の骨格診断やパーソナルカラー診断などのコンテンツは鉄板というか、あって当たり前になっている。目新しさはないが、商品を決めるときの納得感につながる」

 ——通販サイトに掲載している着用モデルやスタッフコーディネートの顔を、ユーザー自身の顔に差し替えることができる顔合成AI機能「フェイスチェンジ」を一早く実装した。

 「前期は、メイキップさんと連携を密にして『フェイスチェンジ』をブラッシュアップして頂き、精度が上がってきたので利用者の満足度も高まっている。一度使ってもらえると何度も利用してもらえるので、もっと多くのユーザーに試してもらいたい。購買意欲の高いユーザーが『フェイスチェンジ』を利用していると思うので、コンバージョン率は使っていないユーザーと比べて高い」

 ——アプリはネイティブ対応しているのか。

 「ほとんどネイティブで、カート以降がウェブブラウザになる。当初はアプリよりもウェブの方が顧客満足度が高かった。アプリはどうしても開発がウェブより後になっていたからだ。最近はアプリの利用率が上がり、満足度もウェブより高くなっているので、よりアプリファーストでさまざまなことを考えている」

 「ウェブサイトの場合は広告経由で来訪する一見さんも多いが、『パルクローゼット』との関係性が深くなればなるほどアプリを使ってくれている。アプリ利用時に『自分向けのアプリだ』と思ってもらう必要があるので、購買データなどからアプリを開いたときの最初のページをほぼフルパーソナライゼーションしていて、ストレスなく買い物ができると思う」

 ——そのほかにECの成長に貢献している取り組みは。

 「ECのためというわけではないが、結局は商品力が大事。商品の需要をSNSやデータを使って予測し、ウェブ予約の状況を見ながら適時修正している。各種データがとれる時代なので、プロダクトアウトよりもマーケットイン型で精度を高めている。ニーズを掴むという観点でも『ゾゾタウン』に出店しているメリットがある」

 ——EC売上高が600億円規模になり、これから2ケタ成長を維持するのは難易度が高い。

 「高い成長を維持するには、これまで強化してきたSNSやデータ活用はもちろんだが、やはり商品力が大事になる。今は『パルクローゼット』という売り場をモール型にして外部企業に開放する考えはないし、自社のブランドの中で闇雲に商材を広げるわけにもいかない。ECチャネルだけではなく、テクノロジーの活用も含めて今の時代のモノの作り方とか、数量の決め方というのをアップデートしないといけないタイミングだと思う」

 ——そのほか、今期の成長に向けてカギとなるのは。

 「今年3月に、これまで大阪の倉庫にあった『スリーコインズ』のEC在庫を平塚のEC専用倉庫に統合し、カートも一緒になったので、ファッションブランドと一緒に『スリーコインズ』の商品も合わせ買いしやすくなった。『スリーコインズ』のEC化率はまだ数%と小さく、EC売り上げへの貢献度は低かったので、伸びしろは大きい。中期的に『スリーコインズ』はECだけで100億円の売上高を目指せるポテンシャルがある」

 ——「TikTokShop」など新しい売り場についてはどうか。

 「『TikTokShop』は売り場として試してみたいし、『TikTok』のアカウントを持っているスタッフも多いので、参加したいと思っている。ライブコマースは出演するインフルエンサーなどへの信頼感で購入するものだと思うので、当社のスタッフも相性は良いのではないか。ただ、TikTok側のシステムにデータやフルフィルメントを連携させるのに時間がかかりそうだ。また、長時間の放送とか、売れる時間が深夜帯となると、働き方などオペレーション上の課題もクリアしないといけない」

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