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ポーラ・オルビスHD、「抗シワ」で部外品取得 新領域で承認、「将来はオルビスで」

2016年 7月21日 11:20

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ポーラ・オルビスグループのポーラが「抗シワ」の効果をうたう医薬部外品(以下、部外品)を発売する。部外品はこれまで「美白」や「肌あれ」に関する効果しか認められてきておらず、抗シワという領域の承認は初めて。来年初めに承認を得た商品の販売を予定しており、積極的なプロモーションの展開で年間100億円規模の売り上げの商品に育成をめざす。

製造販売の許可は、グループで製造を担うポーラ化成工業が取得した。

 承認を得た有効成分は、4つのアミノ酸からなるエラスターゼ阻害剤(※)。肌の奥に位置する真皮に存在するコラーゲンなどを分解し、シワの原因となる「好中球エラスターゼ」と呼ばれる酵素の働きを抑える。"真皮"への働きかけは医薬品にのみ認められてきたものであり、今回、行政が部外品による真皮へのアプローチを認めたのも初めてになる。

 他社を含め部外品で新規の有効成分が認められたのは2009年を最後になかった。新領域における承認を受け、今後、「抗シワ」領域における研究開発、承認申請が活発化する可能性がある。

 来年初めに販売する部外品は、「ポーラ リンクルショットメディカルセラム」(美容液)。30代以降の幅広い層をターゲットに展開。「シワを改善する」という表示を行う。

 商品は、20グラム、価格帯は1万5000円前後を予定している。「最先端の知見、成分はまずはハイプレステージブランドの『ポーラ』で活かすのが基本的考え。その後、グループで有効活用する」(ポーラ)としており、当面は、グループで通販を行うオルビスでの活用は予定していない。

 シワの改善効果は、日本香粧品学会の「抗シワ製品評価ガイドライン」に沿って評価した。目尻に
シワのある68人の女性を対象に、有効成分を含まないプラセボと比較対照した試験(二重盲検無作為化試験)を実施。12週間の利用で7割の女性でシワの改善効果がみられた。

 化粧品でも11年以降、同じガイドラインに沿ったシワの改善効果で「乾燥による小ジワ」に対する効果をうたうことができる。ただ、対象は浅いシワ(ガイドラインにおけるシワグレード1~3)に対するもの。今回、部外品の評価では、シワグレード4~6というより深いシワに対する効果を確認している。

 ポーラでは、研究着手から15年の歳月をかけてシワの改善メカニズムの解明や、5000以上の素材の中から安全性が高く、阻害作用のある成分を見出してきた。

 ※有効成分の正式名は、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム

「新領域」認可の背景は?
ポーラの横手社長「身の引き締まる思い」
安全管理体制も承認背景か

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ポーラの横手喜一社長(写真)は、他社に先駆けての「抗シワ」という新領域における医薬部外品取得に際し、「身の引締まる思い」との思いを口にした。新規有効成分を先行的に使えることへの期待がある一方、ここ数年、問題の多かった部外品領域において、安全性を担保した展開に対する責任の重さも感じている。

 化粧品業界は、2009年、シャネルが他社で美白有効成分で承認を得て以降、新規有効成分の承認が止まっている。背景に、部外品を巡る問題の続発がある。

 11年には悠香の薬用石鹸で小麦アレルギー発症問題が起き、13年にはカネボウ化粧品の美白化粧品で白斑問題が起きた。いずれも被害拡大の一因に有害事例の把握が遅れたことが指摘されている。これを受けて厚労省では、副作用の報告義務を強化した。

 以降は部外品の申請も停滞。集団訴訟に発展するなど問題が発生した場合のリスクも大きく、市場はアンチエイジング領域がけん引しつつも、高い安全性が求められてきた。今回、「深いシワ(シワグレード4~6)」への改善効果が認められたことで、今後、「抗シワ」の部外品市場が活性化する可能性がある。

 ただ、今回の承認には、ポーラ独自の販売体制も影響しているとみられる。顧客一人ひとりに専任の販売員がつく担当制。購買履歴や肌状態を把握しつつ、商品を提案する。横手社長も「お客様との関係性がきちんとあることで新成分を承認してもよいのではないか、という判断もあったかと思う。事業会社としての売り方への期待や信頼に応えられなければ今回承認をもらったことに対する社会的な役割を果たせない」と、承認を重く受け止める。

 部外品審査は品質、有効性、安全性試験で行われるため「(販売体制は)審査で直接評価することはない」(厚労省医薬品審査管理課)のが基本。ただ、被害情報の収集体制の充実が心象面で与える影響はあったかもしれない。

 起こり得る副作用は、軽微なものから乾燥によるかさつきや紅斑、白斑、色素沈着など。成分特性によるものでは、エラスターゼに炎症を抑える働きがあり、その阻害がマイナスに働くこと。部外品申請に必要な安全性試験で問題のないことを確認している。

 販売後も2年間、皮膚科医と連携をとり、市販後調査を継続する。



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