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【アスクルが挑む「宅配クライシス」㊤】 自社配送の外販を本格化、配送コストの低減へ

2018年12月25日 13:10

 アスクルが大手配送会社の配送運賃の値上げに起因した上昇する物流コストの削減に向けた施策を矢継ぎ早に進めている。これまで同社の配送を担ってきた物流子会社が展開する配送サービスを外部に外販する試みを本格化させたほか、運営する個人向け日用品通販サイト「ロハコ」で従来まで大手配送業者に依存していた宅配を見直し、自社配送率の引き上げを推進する。同じく大手配送業者に委託していた中・長距離の幹線輸送の自社化、大手配送業者の拠点までの荷物(商品)の持ち込み、梱包サイズの適正化など様々な施策を展開し始めた。”配送サービスの外販”といった攻めの施策で配送効率を高めつつ、新たな収益を得る仕組みや今後も運賃値上げや総量規制が起こる可能性もある大手配送業者の依存度を下げ自社グループによる配送シェアを上げていくことでリスクヘッジとコストの抑制を進める狙いだ。(写真は同社プレスリリースより)

 アスクルでは物流子会社のASKUL LOGISTによる配送代行サービスを今期に入ってから本格化した。すでに4社の配送を受託。また、3社とも契約締結が完了しており、今下期(12~5月)から実配送を始める予定。荷主の社名は明らかにしていないがネット印刷、ファッション通販、化粧品メーカー、健康器具通販、食品・飲料メーカーなどだという。これまでも一部の事業者で配送代行事業は実施してきたが、「これまでは大手配送業者に値段で太刀打ちできず、スケール化できなかった」(同社)が、昨今の大手配送運賃の値上げ、いわゆる「宅配クライシス」以降は、「(大手宅配業者の配送運賃が)かなり値上がりしたため、価格で勝負しつつも、利益が取れる状況になってきた。配送費の値上げで多くの企業が困っており、相談がたくさん寄せられるようになった。チャンスを感じている」(同社)として、今後は積極的に受託先の開拓を進めていく考え。これにより、新たな収益の確保のほか、アスクルの法人向けオフィス用品通販および「ロハコ」という自社通販事業の荷物に加えて、外部事業者から受託した荷物を物流子会社が混載して配送することで配送密度を高め、配送コストの削減につなげたい狙いがあるようだ。

 また、「ロハコ」の自社通販の配送業務の大手配送業者への依存度を引き下げる施策も推進する。「ロハコ」において都内16区や大阪市内12区で実施してきた自社配送による1時間刻みの時間指定配送サービス「ハッピー・オン・タイム」の対象地域を広げ、12月19日から都内では足立・葛飾・墨田・江戸川の4区を、大阪市内では阿倍野・西成の2区を新たに対象エリアに加えた。今期中までに、都内23区全域をカバーし、大阪でも市内24区全域に加えて周辺の豊中市と吹田市、また池田市および茨木市の一部も対象エリアとする考え。加えて、物流子会社と地場の協力配送業者などで独自配送網を構築し、主要都市を中心に自社配送を行い、自社配送率が7割弱に達している法人向け通販で培った配送網を「ロハコ」にも活用。BtoBの配送網に「ロハコ」の商品も乗せることでこれまで都内と周辺、また大阪、福岡、愛知に一部にとどまっていた「ロハコ」の自社配送エリアを一気に拡大。期初時点では10%にとどまっていた「ロハコ」での自社配送率を今期末までに35%超に、来期までには40%超まで伸ばしたい考えで、将来的には法人向け通販と同じく7割としたい構想があるようだ。

 宅配だけでなく、全国の物流センター間の中・長距離の幹線輸送の自社化も進める。従来まで「ロハコ」商品の幹線輸送は大手配送会社に委託してきたが、11月20日からまずは大阪・吹田に構える基幹センター「AVC関西」でピッキングした商品を夜間のうちに福岡の拠点「ALP福岡」および名古屋の「名古屋センター」に輸送して、そこから各地域の顧客宅に配送する仕組みの運用を開始した。今後は関東の物流拠点間でも同様の試みを検討していく。宅配、幹線とも自社化を進めることで配送コスト削減に加えて、「状況次第で今後も配送運賃値上げや荷物の総量規制などをしかねない大手配送会社への依存度を低減したい」(同社)狙いがあるようだ。

 大手配送会社に配送を委託する場合のコスト削減策も進める。これまで受注を受けて出荷する「ロハコ」の商品はアスクルの物流センターに配送会社のトラックが引き取りに来る形だったが、9月からはまずは東京と横浜で配送会社の2拠点にアスクルの物流子会社が持ち込む形とした。10月からは関西エリアでも展開し始め、現在ではコスト低減効果の高い9拠点への持ち込みを行っている。これにより、一過性ではなく継続的でかつ大きくコスト削減につながるほか、当日発送や翌日発送のための時間制限のギリギリまで商品を持ち込むことが可能になるメリットもあるようだ。

 また、秋口からは購買データに基づき、梱包する商品のサイズや数量に合わせて、最少のサイズの段ボールに梱包する試みを実施。これにより、段ボールサイズは平均して小さくなっており輸送コストや配送効率の改善につながっているよう。

 こうした施策に加えて、倉庫内の高度自動化などの効率化を進め、コスト削減を図るほか、1月10日からは「ロハコ」で送料を徴収しない1回の購入額、いわゆる配送バーを引き上げる。従来まで1回の購入額が税込1900円以上の顧客には基本配送料の税込350円を徴収せず、無料としていたが、同日から送料無料となる購入額を引き上げ、税込3240円とするもの。同時に当該購入額に満たない場合に徴収する基本配送料は税込216円に引き下げる。これにより、配送1箱あたりの売り上げ単価を引き上げ、配送費率の低減を図る。加えて、今下期から「ロハコ」を方向性を転換。従来のコモディティ商品中心の品ぞろえで規模拡大を優先した戦略から、メーカーと協力して付加価値の高い、また、「ロハコ」でしか購入できない専用商品などを軸とした利益を重視した戦略を切り替える方針を示しており、「宅配クライシス」で上昇したコスト増を飲み込み、まずは安定的な事業継続と今後の事業拡大のために「ロハコ」で下期には限界利益黒字化を目指す考えだ。(㊥につづく)
 
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