
衣食住の幅広いブランドを展開するサザビーリーグは4月1日、社内のDX推進室を分社化し、新会社サザビーリーグアウルスケープを立ち上げた。これまで自社ブランド運営で培った知見をもとに、デジタルマーケティング支援を外販していく。新会社の社長に就任したのは、DX推進室の室長を務めていた相川慎太郎氏(=写真)だ。相川新社長に、サザビーリーグアウルスケープの事業内容や今後の展望について聞いた。
――DX推進室での取り組みは。
「DX推進の高まりを受けて、2022年にDX推進室が設立された。40ほどの自社ブランドに対してCRMやECの構築、SNSマーケティングの支援を行ってきた。たとえば、ジュエリーブランド『agate(アガット)』では、ECと店舗のデータを統合するCRM基盤の構築を支援した。売り上げや顧客データなどを集約した統合顧客データベースを作り、そこからDWH(データウェアハウス)を通して、MAツールと各種BIツールに連携した。CRMの統合基盤を構築したことで、本来やりたかったパーソナライズ施策が実施できるようになり、複数の指標が改善した。たとえば、店舗とECのクロスユース率が20%増加し、会員比率が10%、LTVが30%増加した」
――新会社でも同様のサービスを提供、外販していく。
「サザビーリーグのブランドは独自性を非常に大切にしていて、たとえばカートシステム一つとっても、ブランドごとに異なるものを使っている。ブランドの抱える課題や規模感に合わせてツールを変える手法は外部にも活用できるのではないかと考え、外販に至った」
「CRM、EC、SNSの3本柱に加えて、新たにブランディング支援も行う。従来はパートナー企業との連携こそあったものの、基本的には社内用のサービス設計は行っていなかった。分社化に合わせて、サービスの柱の一つに据える」
――支援業界は。
「まずはこれまでサザビーリーグが展開してきたアパレルやジュエリー、生活雑貨、飲食といった領域の企業をターゲットにしていく。将来的には宿泊業や食物販など、新たな領域にも横展開していきたい」
――新会社のビジョンは。
「『複雑化した現代ブランドビジネスをシンプルにする』という企業理念を掲げている。一昔前は、単純に良いものを作って、良い場所に出店すれば商品は売れた。しかし現代は、SNSやCRMなど、やらなければいけないことが非常に多い。デジタル上でも顧客満足に向けた取り組みが必須になって、実際それが上手い企業が生き残っているように思う。とくにアパレル業界はデジタルに精通した人材が少ないし、ブランドを成功に導くためのプロセスが複雑化しているので、ブランド戦略をシンプルにするお手伝いがしたい。ゴールはずばりブランドエクスペリエンス(BX)の向上だ。DXばかり行っていてもだめで、ブランドの体験自体を良いものにしなければならない」
――サザビーリーグでの店舗運営がBXに活きるはずだ。
「OMOなどはもはや前提の話だが、店舗とECの連携を考える上で、ブランドの世界観は考慮していかなければならない。たとえばメルマガ一つとっても、ブランドの独自性を損なわないような打ち出し方を考える必要がある」
――D2Cブランドの運営が活きる点は。
「サザビーリーグ時代は18年にD2Cブランド『ARTIDA OUD(アルティーダウード)』を立ち上げた。『アルティーダウード』は当初EC専売のジュエリーブランドで、そもそも店舗を持たないブランドをどうやってデジタル展開すればよいのかという戸惑いがあった。D2Cブランド隆盛の中で、生き残ったのは世界観をしっかりとデジタルで表現できていたブランドだ。どういったビジュアルや言葉を使えば、自分たちの提供価値がよりクリアに伝わるのか、常に考えていた。当時はすでにSNSが主流だったので、文脈をいかに上手くSNSに乗っけるかというところは細かく設計を行っていた」
「現代では、いかにユーザーに共感してもらうか、ブランドのストーリーを伝えるかというところが肝要。我々の分析チームはサザビーリーグの約20ブランドのSNSアカウント分析を行っていて、エンゲージメントや保存数が多かった投稿に関しては全社内に共有している。いいね数と違って、そうした情報は外側から把握できないので、共有する価値がある」
――DX推進やSNSマーケティングにおけるトレンドは。
「大前提ECが厳しくなってきているので、リアル回帰の流れは大きい。改めてオフラインの体験や店舗の役割をきちんと構築しなければならない。単に商品を売る場所というだけでなく、デジタルサイネージを設置するなど、店舗を体験の場として活用する流れが来ている。最近は店舗販売に主軸を置いたブランドが多いが、とはいえECと店舗の売り上げ落差を作らないような形で支援ができればいい」
――数値目標は。
「今後3年間で50社の外部ブランドを支援したい。3年間はサザビーリーグのノウハウが活用しやすい既存領域で支援を行い、そこから他業種に展開していく」
――BXを推進するSaaSプロダクトの開発も検討している。
「考えている方向性としては、いわゆるBIツール。可視化したデータをブランディングに活用するソリューションを考えている。一般消費者よりも、ディレクターやMDなど、ブランディングに携わっている方が対象のツールになるだろう」
――現時点での支援状況は。
「昨年からSNSやCRMの領域でアパレルメーカーを支援している。取引先の皆様に期待されるのは、サザビーリーグの多種多様なブランド運営で培った、お客様視点の考え。カートシステムベンダーやCRMシステムベンダーの既存取引先も多くいるので、支援先の企業には複数の選択肢と実績を提示していくことができる」
――DX推進室での取り組みは。
「DX推進の高まりを受けて、2022年にDX推進室が設立された。40ほどの自社ブランドに対してCRMやECの構築、SNSマーケティングの支援を行ってきた。たとえば、ジュエリーブランド『agate(アガット)』では、ECと店舗のデータを統合するCRM基盤の構築を支援した。売り上げや顧客データなどを集約した統合顧客データベースを作り、そこからDWH(データウェアハウス)を通して、MAツールと各種BIツールに連携した。CRMの統合基盤を構築したことで、本来やりたかったパーソナライズ施策が実施できるようになり、複数の指標が改善した。たとえば、店舗とECのクロスユース率が20%増加し、会員比率が10%、LTVが30%増加した」
――新会社でも同様のサービスを提供、外販していく。
「サザビーリーグのブランドは独自性を非常に大切にしていて、たとえばカートシステム一つとっても、ブランドごとに異なるものを使っている。ブランドの抱える課題や規模感に合わせてツールを変える手法は外部にも活用できるのではないかと考え、外販に至った」
「CRM、EC、SNSの3本柱に加えて、新たにブランディング支援も行う。従来はパートナー企業との連携こそあったものの、基本的には社内用のサービス設計は行っていなかった。分社化に合わせて、サービスの柱の一つに据える」
――支援業界は。
「まずはこれまでサザビーリーグが展開してきたアパレルやジュエリー、生活雑貨、飲食といった領域の企業をターゲットにしていく。将来的には宿泊業や食物販など、新たな領域にも横展開していきたい」
――新会社のビジョンは。
「『複雑化した現代ブランドビジネスをシンプルにする』という企業理念を掲げている。一昔前は、単純に良いものを作って、良い場所に出店すれば商品は売れた。しかし現代は、SNSやCRMなど、やらなければいけないことが非常に多い。デジタル上でも顧客満足に向けた取り組みが必須になって、実際それが上手い企業が生き残っているように思う。とくにアパレル業界はデジタルに精通した人材が少ないし、ブランドを成功に導くためのプロセスが複雑化しているので、ブランド戦略をシンプルにするお手伝いがしたい。ゴールはずばりブランドエクスペリエンス(BX)の向上だ。DXばかり行っていてもだめで、ブランドの体験自体を良いものにしなければならない」
――サザビーリーグでの店舗運営がBXに活きるはずだ。
「OMOなどはもはや前提の話だが、店舗とECの連携を考える上で、ブランドの世界観は考慮していかなければならない。たとえばメルマガ一つとっても、ブランドの独自性を損なわないような打ち出し方を考える必要がある」
――D2Cブランドの運営が活きる点は。
「サザビーリーグ時代は18年にD2Cブランド『ARTIDA OUD(アルティーダウード)』を立ち上げた。『アルティーダウード』は当初EC専売のジュエリーブランドで、そもそも店舗を持たないブランドをどうやってデジタル展開すればよいのかという戸惑いがあった。D2Cブランド隆盛の中で、生き残ったのは世界観をしっかりとデジタルで表現できていたブランドだ。どういったビジュアルや言葉を使えば、自分たちの提供価値がよりクリアに伝わるのか、常に考えていた。当時はすでにSNSが主流だったので、文脈をいかに上手くSNSに乗っけるかというところは細かく設計を行っていた」
「現代では、いかにユーザーに共感してもらうか、ブランドのストーリーを伝えるかというところが肝要。我々の分析チームはサザビーリーグの約20ブランドのSNSアカウント分析を行っていて、エンゲージメントや保存数が多かった投稿に関しては全社内に共有している。いいね数と違って、そうした情報は外側から把握できないので、共有する価値がある」
――DX推進やSNSマーケティングにおけるトレンドは。
「大前提ECが厳しくなってきているので、リアル回帰の流れは大きい。改めてオフラインの体験や店舗の役割をきちんと構築しなければならない。単に商品を売る場所というだけでなく、デジタルサイネージを設置するなど、店舗を体験の場として活用する流れが来ている。最近は店舗販売に主軸を置いたブランドが多いが、とはいえECと店舗の売り上げ落差を作らないような形で支援ができればいい」
――数値目標は。
「今後3年間で50社の外部ブランドを支援したい。3年間はサザビーリーグのノウハウが活用しやすい既存領域で支援を行い、そこから他業種に展開していく」
――BXを推進するSaaSプロダクトの開発も検討している。
「考えている方向性としては、いわゆるBIツール。可視化したデータをブランディングに活用するソリューションを考えている。一般消費者よりも、ディレクターやMDなど、ブランディングに携わっている方が対象のツールになるだろう」
――現時点での支援状況は。
「昨年からSNSやCRMの領域でアパレルメーカーを支援している。取引先の皆様に期待されるのは、サザビーリーグの多種多様なブランド運営で培った、お客様視点の考え。カートシステムベンダーやCRMシステムベンダーの既存取引先も多くいるので、支援先の企業には複数の選択肢と実績を提示していくことができる」