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消費者の景表法運用 野党議員が「質問主意書」、「萎縮招く」恣意的運用を問題視

2019年 3月25日 14:45

 また、景品表示法の運用を”恣意的だ”と批判する者が現れた。声をあげたのは、立憲民主党の岡島一正衆議院議員。3月8日、政府に対し、景表法の運用に関する「質問主意書」を提出していたことが分かった。その中で岡島議員は、最近の法運用に「経済活動、広告表現の萎縮を招く」と懸念を表明。法解釈の妥当性などで、6項目に渡る質問の回答を求めた。問題意識の背景には先入観からくる多少偏った認識もあるようにも思えるが…。厳格化に歯止めのかからない運用に批判の声が高まっている。

 問題視するのは、景表法の「全体印象」による判断。明確な線引きが示されない中、こうした抽象的判断では、「処分を判断する担当者の恣意性の排除が困難」と指摘。刑法を例に「全体として悪人に見えるからひとまず逮捕しよう」という運用に等しいとして、「全体印象」の判断が罪刑法定主義に反しないほど明確か否か、回答を求めている。

 ちなみに質問主意書では、景表法5条3号(原産国表示など特定の業種・事項の規制)を前提に質問するが、「優良誤認」(同条1号)について聞きたかったとみられる。

 また、表現は広告代理店や媒体社がチェックしている実態があるとして、これら事業者の指導・処分実績、法令遵守に向けた事前相談が行えないかも尋ねている。

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 気になるのは、なぜ、岡島議員が突如、戦いの狼煙をあげたかだ。岡島議員は17年の衆院選、小選挙区千葉3区から立候補するも敗れ、比例で復活当選した議員ではあるが。

 質問主意書からは、最近の法運用に「商行為を過度に萎縮させる」と、かなりご立腹な様子。業界紙が報じたある健康食品会社の行政処分取消訴訟が関心を持つきっかけになったという。実名は伏せられているがだいにち堂を指しているとみられる。立法目的と運用のギャップ、「表現の自由」侵害の恐れがあることから、訴訟を行っている企業とは別の企業にヒアリングを行い質問に至った。

 ただ、独自のヒアリングで得た情報をもとに、「消費者庁に持ち込まれる案件の大半は業者からの情報提供で、消費者の苦情はごく少数」とし、積極的に通報する企業の存在も問いただしている。この点、本紙掲載までに岡島議員からコメントは得られなかったため情報の”確度”は不明だが、いずれにしても強い懸念は一貫している。

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 質問主意書は、政府見解を求める上で、野党にとって有効な政治活動の手段。一方で、「国会答弁より大変。行政からすれば”質問主意書は避けて”という思い」(業界関係者)と、行政の業務に与える負担が大きい。その答弁は、担当省庁への割り振りから原則7日以内に答弁を作成。内閣府法制局のチェックを経て閣議決定までしなければならない決まりだ。

 今回の件に限らず、景表法の運用はここ最近、至るところで問題視されている。昨年末には、政府の規制改革推進会議で「恣意的な運用」と問題視されたばかり。「葛の花事件」など企業の不満も蓄積している。

 昨年8月には、だいにち堂が消費者庁を提訴。「有利誤認」でも行政訴訟が起きている。一方で、消費者庁は自らが課した課徴金納付命令の誤りを認め、取り下げる失態も起きた。

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 昨年末、会見で長官自ら景表法による厳正対処を指示しているか尋ねた際、岡村和美長官は「庁全体の方針」と回答していた。ただ、関係筋からは、「庁内、対策課内でも厳しすぎる方針に意見が割れている」といった声も聞かれる。質問は、3月13日に内閣に転送されており、消費者庁もこれを「事実」(表示対策課)と認め、政府が19日に答弁を閣議決定したが、いかに答えるか。


 
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