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【ECエバンジェリスト川添隆が語る】 ~EC担当者に求められる倫理観を巡って~

2019年12月25日 15:00

 ビジョナリーホールディングス(メガネスーパーの親会社)でEC事業、オムニチャネル推進、デジタルマーケティングを統括し、他社のEC・オムニチャネルのアドバイザーでもある川添隆氏(https://twitter.com/tkzoe)。その川添氏が昨今感じたEC担当者が持つべき倫理観について語ってもらいました。
 






最近出会った「未解決の問題」について

 実を言いますと、私の中でECを巡って「未解決の問題」がいくつかあります。

 例えば「通販サイトのリニューアル」。どうすれば失敗せずに無事にリプレイスすることができるのか。そのためにはリニューアルということに過度に期待しすぎてはいけませんし、事情を知ったプロを巻き込み、リスクを減らすことが大事になります。あるいは「人の採用」。ECで活躍できる力を持った人材を採用できない企業は、その人材のポジションや年収、文化の面で思い違いをしていることが多いです。そのギャップが存在する以上、優れた人を外部から迎えることができないのです。私としてはこうした問題について再三指摘してきましたし、これからも言い続けていきます。
 
 そして最近、別の未解決問題に行き当たりました。11月末にデジタルマーケティング関連のカンファレンス「アドテック東京」に参加しました。その際に別室会場で、広告代理店やマーケティング支援会社などのサプライヤーを中心としたランチセッションが開催され、そこでアフターデジタル時代の役割を話し合う機会がありました。そこでの話で印象的だったのが、クライアント企業の担当者がデジタル領域の知見不足や学習意欲のなさ、社内で他の部署を巻き込むのが難しいために、取り組みが発展しないというような事例です。数人の参加者からこの話を聞きましたが、私も以前からこの問題を認識していて、かなり根深い闇のように感じました。

 そもそもシステム関連のベンダーや、マーケティング支援をいただくサプライヤーと、それを依頼する発注者側は対等なパートナー関係であることが望ましいです。ところが、いまだにサプライヤーを“業者”とみなして接する企業が多いと捉えています。そうした企業の姿勢は「こちらがオーダーしている領域範囲内、内容のみ提案してくれればいい」といった、露骨な主従関係を強いるものです。

 ECの領域もマーケティング、MD、店舗などに影響を及ぼすようになってきている現在においては、他の部門の協力が必要な場合が増えています。サプライヤー側としては、そうした協力を得られなければ新たな取り組みの実施ができなくなってしまいます。クライアント企業の文化、担当者の視座・感度や、普段からの巻き込み力不足ということがネックになるケースもあるのです。


同じ船に乗って経験をシェアするというスタンス

 発注者とサプライヤーは対等なパートナーである必要があるというのは、私も含めて業界として発信し続けなければならないと思います。私が発注者となる場合、そのプロジェクトを通じて自分も相手の担当者もともに育ちたいという思いがあります。同じ船に乗って、経験をシェアして、結果を出していきたいです。仮にサプライヤーの担当者が若い人に引き継いだとしても、これまでの経緯やこちらの方針をきっちりと説明し、新たなパートナー関係を築こうとします。

 なので、会社は違えども、意識としてはほぼ社内のメンバーのように思っています。重大な過失があればもちろん何らかの責任追及をしますが、些細な失敗についてはそれほど問題視しません。同じ失敗をしないことのほうが大事です。サプライヤーのメンバーを、社内メンバーのような意識で取り込んでいくのは、自社のEC部門の人数が少ない企業ほどオススメします。

 発注者側に非があることも少なくありません。無理なことを押し付けたり、前提条件を十分に共有せずに「とりあえず提案してください」と言ってみたり、発注後は丸投げ状態で企業内の横の連携を取ろうとしない、などなどです。一方で、サプライヤー側の問題点があるとすれば、長い目で見てクライアントごとの戦略構築や関係構築ができていない、クライアント企業のビジネス理解が浅い(サービスを利用したことがない)といったことがあるでしょう。円滑にプロジェクトを進めるにはお互いに努力が必要なのは言うまでもありません。

 互いに連携をとる上で「アイデアを出し合う時間がない」ということが障害になるケースが多いのではないでしょうか。私はサプライヤーの方と話す際に、こちらの課題を共有したり、最新情報を得ようとします。個別で時間をとってもらう場合もありますが、定例の打ち合わせをする場合は、後半20分とかでそういう機会を作るようにしています。しかし、そうした材料の共有・収集に時間を割く人が少ないのではないでしょうか。その結果、来期の戦略や予算取りが必要になった時になって、焦ってしまうわけです。そこで必要になるのがコミュニケーションの質と量です。

 ただ、コミュニケーションは必ずしも対面である必要はありません。信頼関係があれば、フェイスブックやTwitterのメッセンジャーでもいいのです。対面であれば、要件を早く済ませてお互いの課題を共有する時間を作るのは、誰でもできるのでオススメです。そうして何度もやりとりを交わしておくことで、いざ会社から案を求められた時に必要な答えを出せるのが理想でしょう。


ビジネス上の倫理観は個人に紐づいている

 日本におけるビジネスの場で取引先と対等な関係を築くかどうかは、それぞれの企業の倫理感が問われると捉えています。「金を払っているからこちらが偉い」と考える人もいれば、「ゴールを目指してともに歩もう」と思う人もいます。

 そんなことを考えていた際、芸人の中田敦彦さんが配信している「YouTube大学」で、渋沢栄一の「論語と算盤」を取りあげた回を視聴しました。詳しくは是非YouTubeを見ていただくとして、正しい倫理観・道徳観を持ち商売をやっていくことの重要性について、わかりやすく解説されています。江戸時代にメインストリームとなった朱子学であったり、儒教に触れられている部分もありますが、倫理観や道徳感に関しては、シンプルに「論語」を解釈するというのが特徴です。

 私たち個人の倫理観・道徳観というものは、親や学校教育の影響で身につけていくでしょうが、社会的な評価として重要なポジションがあるわけではないと認識しています。社会に出ると企業文化や関わってきた上司などの“環境”によって私たちは方向づけられていくのではないかと思います。そしてその際には、仕事のノウハウを教えてもらったとしても、ビジネス上の倫理観まで丁寧に教えてもらったというのはあまり聞いたことがありません。すなわち、ビジネス上の倫理観は個人に紐づいている部分も大きいのではないでしょうか。


星﨑社長はビジネスの倫理教育をやってくれている

 その意味で言うと、私が所属しているビジョナリーホールディングス社長の星﨑に強く惹かれる大きな要因が、彼の厳格な倫理観とそれを皆に教育していこうとする姿勢にあると言えます。例えば、仮に会議の発言で、外部の企業や部下に対して「~をやらせる」という発言があった場合、星﨑はその言い回しを訂正するよう注意します。つまり、外部の企業に対して心の中で「従わせる」という気持ちがあると判断し、その言葉使いを改めさせるのです。そうすることで発注者側と請負者側との間で“いびつな関係”が生じるのを防いでいるのです。折に触れてそういった振る舞いや考え方の重要性を説いています。

 星﨑が会議の場でこのような振る舞いを毅然と行うのに接していると、これは「ビジネスの倫理教育」なんだと思うようになりました。出会ってから、8年経過しますがこのスタンスは全く変わりませんし、取引先だけでなくビジネスに関わるすべてに対して及んでいます。

 片方に無理がある関係では長続きしませんし、対等にディスカッションできる関係にはなりません。もし、無理なお願いをせざるを得ない時でも礼を重んじるということ。私個人の経験で学んできたことはありますが、星﨑からの教育でビジネスの倫理観を確立できたと思っています。これは、EC担当者として社外の人と関わったり、振る舞う上で非常に大切な指針になっています。

 こうした倫理観がベースにあると、取引関係においてもいびつな上下関係が生まれることがなく、有機的な共創関係を築けるのではないかと考えています。


(通販新聞社が発刊する「月刊ネット販売」の連載「ECエバンジェリスト川添隆の“日々のアレコレ”」から一部修正して掲載しています)
 
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