「売り手市場」変わらず<主要通販各社の2020年新卒採用> 採用数前年比は増減が半々、「内定辞退率」は改善の兆し
2020年 3月19日 13:40
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本紙が主要な通販実施企業約30社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用状況は別表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが10社、「減少」したのが11社となった。また、「前年と同数」とした企業は3社だった。
採用人数の前年比を見てみると、組織強化や事業成長を理由に若手の増員を図ったところがあった一方、内定辞退を見込んであらかじめ多めに内定を出したとの回答も散見。減少の理由についても、掲げていた目標採用数に届かなかったという企業もあり、売り手市場を色濃く反映させた結果となった。
最も増加幅が大きかったのが再春館製薬所で前年比42人増、次いでベルーナの同9人増となった。再春館製薬所では説明会の実施回数を前年度比で1・5倍に増加したことや、インターンシップの実施回数の増加、内容の刷新などを図った結果、人数拡大につながったとしている。
一方で、減少幅が大きかったのはファンケルの同19人減、RIZAPグループの同12人減、ジャパネットホールディングスの同10人減となった。ジャパネットホールディングスでは事業の変化に合わせてターゲットを絞った採用活動を実施したことが背景にあるとしている。
また、男女比率に関しては回答企業22社中、15社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、前年度と同じ傾向となった。
エントリー数については、前年並みか、増加したとする企業が多くあった。1000件以上を超えたと回答した割合が多く、最も多かったのはジュピターショップチャンネルで、前年比203%となる2万1000人超だった。
採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、大手就活サイトの「マイナビ」が最も多く、次いで、自社サイトによる告知と企業合同説明会が同数。「リクナビ」と大学内説明会が同数で続いている。
前年にはあまり見られなかった傾向として「ダイレクトリクルーティングサービス」の活用がある。従来の求人広告を出して広くエントリーを募るような「待ち」の手法ではなく、仲介業者の採用データベースなどを通じて企業側が直接希望する人材にアプローチするというもの。これまでと違って企業側も自らが積極的に働きかける採用活動に取り組む姿勢が見られている。人材紹介サービスの利用も同様の理由で増えており、「学生自身も会社選びを行うに当たって第三者の視点や意見を欲していることが影響しているのでは」との見方があった。
そのほか、少数意見としては既存社員からの紹介や、アパレルECではファッション関連情報サイトの活用などが見られた。また、SNSを通じた募集については数年前と比べて数が減少している。企業アカウントは本来、消費者への気軽な情報発信を目的としたツールであることから、採用活動という堅いシチュエーションにはあまりそぐわないことなどが影響していると考えられる。
選考過程での各社の特徴的な取り組みでは、新卒一括採用を行っていないオイシックス・ラ・大地がインターンによる現場仕事の体験を行っており、互いのマッチングを実施。キューサイでは昨年度より書類選考・筆記試験の実施を無くして、面接に重点を置いた選考にしている。ジャパネットホールディングスは全社総合職について受験者の好きな方法で想いや得意なこと、一生懸命頑張ってきたことを4分間で表現する「表現力テスト」を実施。好きなことや得意なことに打ち込む時の楽しそうな表情はその時しか見ることができないことや、短時間でその内容を伝えるという力も大事にしているからだという。
ファンケルでは総合職に関して、役員の選考時に1人10分×3人の役員と面接を実施。販売職では接客ロールプレイングを行う。ロコンドでは最終選考会の時点で実際に業務を体験する機会を取り入れている。新日本製薬では昨年同様に応募学生が1次面接官を選ぶ「直感面接」を採用。学生に近い新卒入社メンバーを中心に面接官を選抜した。入社後の活躍イメージを具体化してもらった状態で入社を迎えることができるような選考設計にしたという。ジュピターショップチャンネルでは同社のビジネスに関するレポートの提出を課して、より同社への理解を深められる機会を設けている。また、選考の過程では現場社員との接点を多く設けて、働くイメージを持つ機会にもつなげている。