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国内流通額が上昇傾向に【ラクーンコマースの和久井社長に聞く 卸・仕入れサイトの成長戦略は?㊤】 小売店だけでなくサービス業が利用、商材の拡充も奏功

2020年 5月14日 11:50

 ラクーンホールディングス子会社のラクーンコマースは、アパレルや雑貨を中心とするメーカーと小売店などの事業者が利用するBtoB卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」が流通額を伸ばしている。昨今は商材の幅を広げているほか、小売店以外のサービス業にも門戸を開放している。海外向けサイトでも新たな挑戦を始める同社の和久井岳社長(写真)に成長戦略などを聞いた。

 








 ――改めてスーパーデリバリーの現状は。

 「出展企業については中小メーカーの取り込みを進めてきた。1月末時点で出展企業数は1700を超え、商品掲載数も110万点を突破した。ラクーンが18年11月に持株会社制に移行し、コマース事業を当社が継承して以降はハンドメイド作品の作家さんも開拓している。副業OKという社会的な流れもあり、ハンドメイド作品を本格的に売りたい人も多い。CtoCサイトで実績を上げ、次に効率的に販路を広げられるサイトとして『スーパーデリバリー』はマッチしている。ハンドメイド作品はどこでも手に入る商品ではなく、小売店にとっても差別化商品になり得る」

 ――引き続きアパレルと雑貨が中心か。

 「ファッションと雑貨が中心だが、そこにはこだわらない。商材を限定すると、ファッションと雑貨を望んでいる小売店しか利用せず、成長が頭打ちになる。日用品や食品など、これまで取り扱いが少なかった分野を開拓している」

 ――小売店は実店舗中心の事業者が多い。

 「確かにそうだが、ネットショップを軸に展開する企業も増えているため、実店舗が中心かどうかは重要ではない。近年はアマゾンさんや楽天さん、ゾゾさんといった大手ネットプレーヤーの力が強まっていて小売店の事業環境は厳しく、サービス業に属する事業者も『スーパーデリバリー』で備品などを購入できるようにマーケットプレイスを開放している。ネイルサロンや飲食店、旅館などが利用している」

 ――マーケットプレイスの質を維持するための工夫は。

 「同じような商品を複数社が販売すると価格競争になったり、場が荒れる原因となるが、メーカーなど流通の川上に近い企業に参加してもらうことで、そうした価格競争は『スーパーデリバリー』内では起きない」

 「仕入れる側については、これまで質の良い小売店とメーカーをマッチングさせることが『スーパーデリバリー』の使命としていた時期もあったが、メーカーによってどういう取引先が良いお客様かという定義は異なる。たくさんの量を買ってくれる取引先なのか、ブランディングがしっかりしていて小売り価格を守りながら売っている取引先なのか、その捉え方はさまざま。マーケットプレイスが『良い取引先とはこういう企業』と無理強いすることはあまり意味がない。当社としてはたくさんの選択肢、売り先を用意することが大事になる」

 ――国内流通額が上昇傾向になってきた。

 「飲食店などのサービス業を積極的に取り込んできた成果が出ている。サービス業は小売業よりも数が圧倒的に多く、小売業だけに依存していたらサービスの衰退につながっていた。前年比トントンとかマイナスになる時期もあったが、今第3四半期累計(5~1月)の国内流通額は7%近く伸びた」

 ――昨年冬にアマゾンファッションへの卸を本格始動した。

 「『スーパーデリバリー』で取り引きするのは、自ら仕入れ販売するリテーラーとしてのアマゾンさんになる。巨大な小売店のひとつが『スーパーデリバリー』の会員小売りになったということで、他の大手小売りが利用したいと言っても断らないだろうし、それが今回はアマゾンさんだった。アマゾンさんにとってはメーカー開拓の一環として当社に声をかけたのだと思う」

 ――コロナ禍でECが注目されている。


 「リアルの接客や来客を必要としないECは消費者に商品を供給するインフラとして重要だし存在価値も高まっている。当社もサプライチェーンの一端を担う企業として会員小売店のネットショップ運営企業に対し、商品の仕入れ先として役立ちたい」 (つづく)
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