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業績好調のゾゾ、新体制での1年は? “ソウゾウのナナメウエ”行く集団に

2020年11月 5日 07:20

 ZOZO(ゾゾ)を創業したカリスマ経営者の前澤友作前社長が退き、澤田宏太郎社長兼CEOが就任して早1年が経った。当時のゾゾはPB事業の失敗による株価下落などから成長戦略の練り直しを迫られ、当時のヤフーの連結子会社に。新体制下では「PayPayモール」への出店や、「ゾゾマット」をフックにしたシューズ専門サイトの開設など、売り場と商材の拡充を進めている。澤田社長に1年の振り返りと今後の戦略などについて聞いた。
 






 ーーコロナ禍でECの利用者が増え、「ゾゾタウン」にも追い風となっている。

 「4月の緊急事態宣言を潮目として、事業環境が変わったのは間違いない。とくに、お客様の心理が変わった。実店舗で服を買うのが楽しくて、服を探すことは苦でも何でもないという人はまだたくさんいるが、そうした人たちの中に『ECで買う』という選択肢が出てきた。また、一番ボリュームとして大きいのは、実店舗で買うときもあればECで買うときもあるという人たちで、その人たちのEC利用率がグッと高まったことが大きい」

 ーーブランドのデジタルシフトも進んだ。

 「ブランドさんの意識は加速度的に変わってきている。もちろん、自社ECを強化しているブランドさんもあるが、モールという意味では当社に対する期待は高いと感じる。当社としても今までECという領域でファッション業界を引っ張ってきたという自負があるし、引き続き先頭を突っ走っていきたい」

 ーーブランドのデジタルシフトで御社のBtoB事業も伸びている。広告事業にも影響しているのか。

 「広告事業は完全にブランドさんのECに対する力の入れ方と比例して実績が上がるもので、お陰さまで広告事業の売り上げも順調に伸びている」

 ーーEC利用が伸びている中で、レコメンドの仕組みなどが新規客の定着化につながっている。

 「社長に就任したときは、いろいろな部分が少しずさんになっていたというか、大味なところがあった。リピート化を含めてECには細かくて地味だけどけっこう効果として出てくることが実はたくさん転がっていて、そうしたものをしっかり拾いながらチューニングを繰り返すということを昨年の冬くらいから取り組んできた。一方で、雑なプライスプロモーションを抑えたことで、前期の業績としては少し緩やかな成長率になってしまったが、今期に入って新規のお客様が増えたタイミングで、定着化につながる下準備をできていたのは良かった」

 ーー昨年12月に出店した「PayPayモール(PPM)店」もデジタル化が追い風になっているのか。

 「当初の戦略通りで、ゾゾタウン本店ではとらえ切れないお客様を獲得していくという部分は順調だ。Zホールディングス側の考えもあってプロモーション自体は抑え気味だったが、事業環境の安定化もあって下期はしっかり施策を打っていくことになると思う」

服好きと技術力の掛け算は最強

 ーー前澤前社長のトップダウン経営に対し、組織力で戦う経営を志向している。

 「1年が経ってやっと会社としての神経回路がつながったように思う。だいぶ下地が整った。これまでは前澤が会社の軸だった。前澤の退任後、それに代わる軸が必要だったが、それが私かというとそうではなく、そこは人ではないと思った。そういう経緯もあって、『MORE FASHION×FASHION TECH』に軸を置いた」

 「当社にはファッション好きなスタッフが集まっているので、その部分を生かさない手はない。一方で、売上至上主義というか、とにかく稼ごうと突き進み過ぎていた部分があり、皆に迷いがあったと思う。稼ぐことを重視し過ぎたことで、自分たちの好きなファッションが壊れていくというような感覚を持って働くスタッフが増え、それを私も感じていたので、改めて『ファッション好きが集まる会社だからこそできることをやろう』というメッセージを込めた」


 ーーFASHIONTECHの部分は。

 「テクノロジーの部分はZOZOテクノロジーズに分社化した効果もあり、非常にいい人材が集まっていて、ビジネスにつながるAIのエンジンなどを高度化できている。『MORE FASHION』と『FASHION TECH』をかけ合わせられれば最強だと思っている。AIやテクノロジーはさまざまな企業が取り組んでいるが、ファッション領域で当社ほど深いデータを持っている会社はないと思う」

 「具材はたくさんあるので、引き続きファッションの中の深いデータを使い倒して、サイトに来て下さったお客様にまず1回買って頂き、その後はリピートにつなげる仕組み化を進める。『MORE FASHION』と『FASHION TECH』のかけ合わせができ始めてきたことが、足もとの業績にも表れていると思う」


 ーー澤田社長の時間の使い方は。

 「対話の時間を重視している。現場で何が起きているのか、スタッフがどういう意見を持っているかなどを聞くことに徹していて、もちろん私の意見も伝えるが、とにかく現場に転がっているアイデアを拾いたい」

 ーーゾゾの働き方として現オフィスを段階的に縮小し、週2日出社を打ち出した。

 「オフィスワークは在宅をメインにした勤務を続ける中、リアルの場で話す意味合いは絶対にあると思っている。とくに右脳を使うデザイン部のスタッフには2週間に1回くらいは感染対策をしながら集まって、緩い感じで会議をしようと伝えた。実際に会って話すといろいろなアイデアが出てくる。当社は業界の先頭を多少ぶつかりながらも進んでいくというポリシーで今後も突き進むつもりなので、そういう部分は大事にしたい」

 ーー”ゾゾらしさ”をひと言で表すと。

 「社内的な標語として『ソウゾウのナナメウエ』というのを打ち出した。”ゾゾらしさ”とは何かを考えたときに、いろいろな”らしさ”があるが、これだけはというものを決めることになり、『ソウゾウのナナメウエを常に行こう』というマインドにたどり着いた。社内に浸透させていきたいし、これは当社のDNAだと思っている。時代の先頭を走るが故にいろいろなところでぶつかるが、転んでもタダでは起きないというベンチャー魂みたいなものを現体制でも重要視したい」

Z社とは補完関係 広告事業でも成果

 ーー昨年は「ゾゾアリガトーメンバーシップ」を引き金とした一部ショップの退店もあった。ブランドとの関係強化に向けては。

 「初歩的なことだが、ゾゾとしてはこういうことを考えていますと、ブランドさんにある程度の期間をもってしっかり伝えていくことを指示として出している。同じ施策を実施するにしても、1週間後に始まるのと1カ月後に始まるのでは受ける印象も異なる。そこは大きな反省点だ。スピード感は多少落ちるかもしれないが、ブランドさんありきの商売だと思っているので、ていねいに取り組んでいきたい。やはり当社の強みは、ファッションを分かっているスタッフが最前線でブランドさんとコンタクトしていることで、そこは他のECモールとは違うし、真似できない部分だと思っている」

 ーーマルチサイズやマーケティング支援などもブランドとの関係性強化につながる。

 「やはり服作りの部分はブランドさんには敵わないということがPBを展開して分かったので、マルチサイズプラットフォーム(MSP)事業という形でブランドさんと一緒に多サイズ展開の服を作らせて頂いている。ブランドさんが得意な領域と当社が得意な領域があるので、MSP事業に限らず、お互いの得意分野をかけ合わせていきたい」

 ーーD2Cもそうした取り組みの一環か。

 「先日発表したD2Cブランドはインフルエンサーさんと組み、当社の生産背景を使っているが、ブランドさんと一緒に取り組んでいるパターンもある。ブランドさんにインフルエンサーさんとの取り組みを提案し、ブランドさんの生産背景で商品づくりを行うケースだ。そうしたD2Cも含めてブランドさんとはさまざまなコラボをしていきたい」

 ーー1年前にヤフー(※現Zホールディングス)のグループに入った。

 「パートナーとしての安心感がある。良い意味で文化とかビジネスのやり方などが違うが、ぶつかり合うわけではなく補完関係にある。Zホールディングスはメディアを生業にしてきた会社で、当社はECの会社だ。ITという意味合いでは一緒だが、ビジネスの考え方は似て非なるもので、そこは体感している。例えば、広告事業については当社が暗中模索の状態でシステムなどを構築していたが、アドテクノロジーのノウハウを注入してもらい確実に効率が高まった。『ヤフー!』からの送客面でも、当社では想像もできなかったチューニングを施しながら非常に綿密に送客してもらえている」

 ーーその逆は。

 「ECは当社にノウハウがある部分が多々あって、『PPM』のUI・UXなどについて日々議論し合うなど、いい補完関係にある。『PPM』はこれからのECモールで、探しやすさという意味ではゾゾ本店に比べるとまだまだ。今、やることリストができあがっていて、これからいかに開発していくかというフェーズにある」

 ーークロスショッピング構想も始まる。

 「ゾゾタウンPPM店でブランドの店舗在庫を表示して、店頭在庫をピックアップする運用を11月に始める。PPM店の一部ブランドで始まり、ゾゾ本店での運用も視野にある。11月のPPM店はテスト的な要素もあるので、そこで得たものも含めてゾゾ本店にも導入したい。ただ、決済のタイミングを詰めないといけないし、ブランドさんだけでなく館さんも関係してくるので調整も必要になる」

 ーーPPM店での決済と在庫は。

 「PPM店での運用については、支払いはPPM内で済ませてもらい、お客様が館のショップか直営店に取りに行く形で、在庫は店頭の在庫となる」

 ーーデータ・AI活用での連携は。

 「当社はファッション関連の深いデータを持っているが、それ以外の領域はZホールディングスが多くのデータを持っているので、それを組み合わせて何ができるかということだと思う。ただ、データの範囲が広ければ広いほど、ファクトを見つけるのは難しく一筋縄ではいかないが、挑戦し続けないといけない」


技術革新を軸に商材を拡充

 ーー今後の成長に向けて商材拡張と売場拡張を掲げているが、商材面ではシューズで一定の成果が出ている。

 「シューズは、自宅で簡単に足の3Dサイズを計測できる『ゾゾマット』対応の靴が今年2月下旬のサービス開始時は100モデルだったが、10月下旬時点で1173モデルまで増え、売り上げもついてきていて順調だと言える。ただ、現状に満足しているかというとそんなことはなく、『靴を買うならゾゾタウン』というところまでもっていきたい。そのためにもプロモーションやサイト上の見え方の部分も変えていく」

 ーー今後のターゲット分野はテクノロジーを軸に広げていく。

 「テクノロジー活用というフックは必要だと思っている。今どきECで売っていない商材はあまりないので、当社の強みを生かすためにも技術革新をベースに商材を広げることが勝ちパターンになる。ちょっと面白い仕掛けも用意して新しいカテゴリーにチャレンジしていく」

 ーー3D計測用ボディースーツ「ゾゾスーツ2」を発表したが、旧ゾゾスーツの技術をブラッシュアップしたということか。

 「技術としては、半分は旧ゾゾスーツの延長線上のものだが、ロジック自体は大きく変わっていて、ゾゾスーツ2とは言ってもけっこうジャンプアップしている」

 ーー旧ゾゾスーツのように大量に配布するものではない。

 「そういう使い方にはならない。技術関連については、外部のパートナーさんと組んだ方が遠心力が働くと判断して今回、ファッションにとどまらない幅広い活用に向けてパートナーさんを募集させて頂いた。服についても、ボディーサイズが分かっただけではダメで、服自体の採寸や素材なども分かった上で初めてマッチングできる。ボディーサイズのその先を考えると、さまざまな会社のいろいろな可能性に使って頂いた方が、当社の技術を広める近道になる」

 ーーゾゾスーツ2によるPB拡大を目指すことにはならない。

 「そうはならない。服のデザインに関して餅は餅屋だと思うので、最近の取り組みとしてはインフルエンサーさんの知見を使わせて頂いてD2Cブランドを作った。服をデザインするという部分は外部の知見を頂きながら取り組んでいく。ただ、服を製造するということについては、業界を引っ張り、先頭を走る上では必ず必要な機能になる。IT技術力などを導入してパートナーの企業さんと一緒に行っていく」

 「例えば、想定外に多く売れたアイテムが出てきてブランドさんの追加生産も間に合わないとなったときに、生地はオリジナルと違っても同じようなアイテムを当社の生産背景を使って素早く作れれば、『ゾゾタウン』ですぐに予約販売できるし、サプライチェーンが回ることになる。そうした取り組みを多くのブランドさんとできれば業界の健全化にも貢献できるので、ブランドさんとの協業を志向している」

 ーー以前はサイズ問題の解消を軸にしたPBでの海外展開を目指していたが、今はどうか。

 「海外についてはまだ模索中で、PBのあのやり方ではダメだというのは分かった。中国では今、”ファッションメディアEC”をフロムジャパンの切り口でどこまでできるか試している。そこで軌道に乗れば、少なくともアジアでは同じ仕組みで展開できるのではないか」
 
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