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「成長へ新たなチャレンジ」【宮下正義取締役に聞く ベルーナの今期戦略とは】 コロナ禍の1年で得たデータ活用

2021年 4月 8日 12:30

 ベルーナでは、新型コロナウイルス感染拡大を受けた”巣ごもり需要”を取り込み、2021年3月期の総合通販事業は好調に推移した。今年も通販市場の拡大が見込まれる中で、コロナ禍を踏まえた同社の成長戦略とは。宮下正義取締役執行役員経営企画室長に聞いた。

 









 ――コロナ禍で好調な事業と苦戦した事業があった。

 「アパレル店舗や和装店舗などの実店舗事業、さらにはホテル事業が売り上げを落とし、総合通販においては、外出着が苦戦した。一方で、家具、雑貨、インナーや、ちょっとした外出にも使える『ワンマイルウエア』は好調だった。さらに、家で過ごす時間が増えたことから、グルメが大きく伸びている。単品の食品だけではなく、ワインや日本酒、おせち料理など、グルメは全ジャンルで大幅増となっている。ワインや日本酒は過去から継続して好調を維持していたが、食品類は近年横ばい傾向だったので、コロナ禍で大きく傾向が変化した形だ」

 「当社の総合通販事業は、売り上げ構成比でいえばアパレルが7~8割、うちインナーが1~2割であり、中でも主力商品はレディースアパレルだ。レディースアパレルに関しては微増にとどまったが、大型家具や雑貨など、家の中で使う商材のほか、インナーやメンズアパレルが大幅に伸びた。メンズに関しては2年ほど前から強化しており、広告での露出度も高めているが、コロナ禍においてテレビ広告の単価が下がったことも後押した。ただ、レディースはやはり外出着が苦戦している。こうした状況を受けて、21年発行の春号や夏号カタログに関しては、コロナ禍で売れる商材を増やした。インナーについては発行部数を増やしているし、品揃えも拡大した。また、雑貨関連も積極的に新商品を開発し、SKU数を増やしている。一方でアウター系のアパレルに関しては、無理にSKU数やページ数を増やすのではなく、やや縮小した」


 ――総合通販事業では新規顧客獲得が順調だった。

 「コロナ禍で通販企業以外の業種では広告費削減の動きが強まっていたことが影響し、テレビや紙の広告単価が下がったことが大きい。媒体費は前年と同じだとしても出稿量は増える状態で、レスポンスも非常に良かった。実際には、金額ベースで媒体費は前年を上回ったが、売上高広告費比率は維持していたので、無理をせずに新規顧客を獲得することができた。ネット広告に関しては単価こそ下がらなかったが、こちらも積極的に広告を投入した。テレビや紙で当社の広告を見たユーザーが、社名検索して流入するというケースが目立ち、ネットの媒体費を使わずに新規顧客がネットで購入した状態となった。つまり、ネット広告を増やしても、ネット販売全体の売上高広告費比率が維持できたわけだ」

 「広告単価はすでに従来の水準に戻ってきているが、積極的に広告出稿を実施したことにより、『どんな商品ならどれくらいのレスポンスが取れるのか』が分かった。広告単価が以前の金額になったとしても、レスポンス率をこれまでよりも向上させることで効率を維持したい」


 ――専門通販事業ではナース向け通販やグルメなどが好調に推移した。

 「『アンファミエ』『ナースリー』のナース向け事業においては、マスクや消毒液、血中酸素濃度を計る『パルスオキシメーター』などの衛生用品が引き続き好調だ。ただ、新規顧客のうち、マスクやパルスオキシメーターの単品購入者に関しては、広告宣伝費の投入はよく考えて行わないと、費用対効果がおかしくなる恐れが高い。ナース通販の顧客は医療従事者が中心だが、こうした顧客は医療従事者かどうかが分からない。ユニフォームやシューズなども同時に購入している顧客は医療従事者だと判断できるが、単品購入者はそうでない可能性が高いので、こうしたユーザーに対し、どこまでアプローチするかは慎重に見極める必要がある」

 「グルメ事業も同様に、21年度は戦略の立て方が難しくなる。ただ、こちらはターゲットの差異が問題ではなく、今後外出がしやすくなった際に、レスポンスが低下する恐れがあるという点が課題。離反を防ぐには顧客満足度を上げる必要がある」


 ――21年3月期におけるアパレル店舗の新規出店は3店舗にとどまった。

 「今後はレスポンスが戻ってきてから出店を再開することになるだろうが、来客が以前と完全に同じ水準まで戻ると思っていない。当初は店舗と通販で相互送客を実現するという目論見だったが、通販を主軸として、店舗は外部の状況を踏まえた運営にする必要がある」

 ――2021年の通販市場をどう見るか。

 「コロナ禍は通販の認知をこれまで以上に広げるきっかけになったのは間違いない。コロナ禍が収束しても、一部の顧客は離反するするだろうが、一方で『通販の便利さ』を肌で感じ、購買体験に満足した顧客に関しては、通販の利用度が上がっていくだろう。当社に関しても、離反する顧客よりも、定着する顧客の方が多いと考えている。このチャンスをどう活かすかによって、通販市場におけるプレイヤーの勢力図は大きく変わるのではないか」

 「ニーズのある商品をスピード感を持って市場に投入し続けられるかが勝負の分かれ目になる。当社でも『チャレンジング精神』にスポットを当てている。通販は『実績を踏まえて売れる確率の高い商品を開発する』のが王道のスタイルだが、市場環境の流動性が高い状況下では、ある程度目算が立つ商品についてはまず販売し、手数を増やすことで勝ちパターンも増やす、というように方針が変わってきた。新しいカテゴリーに参入したり、弱かったカテゴリーに注力したり、まずは試してみて、通用するのかしないのかを見極める。通販に追い風が吹いている中で、いかに売れる商品を投入できるか。昨年度に得たデータを活用するとともに、新たなチャレンジをしていくことで、今年度も成長を続けたい」

 
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