TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

畑中基執行役員に聞く ヤフーショッピングの今 ① キャンペーン復活奏功、ふるさと納税も流通増に貢献

2025年 5月29日 12:00

 LINEヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」は、2024年3月期の流通額が落ち込んだ。ポイント還元施策を相次いで取りやめたことが大きな要因だが、25年3月期は毎週日曜日のキャンペーンを復活させるなど、販促費の投入を再開。ポイント付与率は「ばらまき」を行った時期よりは低いものの、一定の成果はあったようだ。畑中基執行役員コマースカンパニーショッピング統括本部長に近況を聞いた。
 
 ――2025年3月期のヤフーショッピングを振り返って。

 「LINEヤフーとしては、『LYPプレミアム』会員をいかに増やすかということで、会員の満足度を上げて、継続率を高めることに取り込んできた。コマース分野としては、会員向けの大きな特典として、日曜日のポイント倍率を高めたり、『超PayPay祭』といった買い物イベントを開催したりした。言葉を選ばずに言えば、会員を『えこひいき』することで、流通総額は2桁成長に近い数字を残せた。比較的堅調に推移したのではないか」

 「大型販促に関しては認知が高まり、より大きくスケールするようになっている。特に昨年末の超PayPay祭は想定よりも大きく伸ばすことができた。消費者が『ここで買う』メリットをかなり作れたのではないか。ポイントだけではなく、セール商品のバリエーションを増やしたことも大きい」

 ――「日曜日に買う」という習慣を作ることができた。

 「以前はソフトバンクの携帯電話利用者に対し、日曜日はポイントを10倍にするキャンペーンを展開していた。そのため、キャンペーン廃止後も日曜日は他の曜日よりも売れていたわけだ。もともと『日曜日に買う』という習慣がユーザー間にあったため、そこに被せたことによる効果は大きかったのではないか」

 ――24年3月期の流通総額は厳しい状況だったが、23年3月期と前期の流通総額を比較した場合は。

 「流通総額は戻ってきており、23年3月期を上回っている」

 ――LYPプレミアム会員の獲得については、新規登録すると、3カ月間無料利用できるだけではなく、PayPayポイント4000円分と、ヤフーショッピングで使える3000円クーポンを2枚付与するというキャンペーンを実施した。

 「初回クーポンでまず買ってもらい、その後は『日曜日を中心にたくさんポイントが付くんだ』ということを理解してもらい、リピート購入してもらうことができた。会員になるメリット、ヤフーショッピングで買うメリットを作れたことが大きかった」

 「ただ、3回目までの購入は促進できたものの、より頻度高く買ってもらうことは課題となっていた。ただ、2月から付与ポイントが期間・利用場所限定となったことに伴い、リピート率が上昇している。26年3月期は定着率とリピート率を高めるとともに、ヘビーユーザーを増やしていくための施策を徹底する」

 ――成長のドライバーはLYPプレミアム会員の増加か。

 「そうだ。もう一つは、ふるさと納税のポータルサイト『ヤフーふるさと納税』だ。従来から外部のふるさと納税ポータルサイトが出店する形でふるさと納税を取り扱ってきたが、返礼品の申し込み受付などの寄付手続きがモール内で完結できるようになったことで、流通総額の伸びに大きく貢献している」

 ――ソフトバンクグループには、ポータルサイト大手の「さとふる」もあるが、需要を食い合っていないのか。

 「そういうことはなく、純粋に納税額がプラスになっている。ヤフーショッピングの既存客だけではなく、LYPプレミアム会員で、まだ当モールを使ったことがない新規にもかなりアプローチできた。他のポータルサイト大手も納税額が伸びているのは確かだが、伸び率ではわれわれがトップクラスではないか。ポイント施策はもちろん、UI/UXが優れている点も評価されたと思う」

 ――9月いっぱいでポイント付与はできなくなる見通しだ。

 「しっかり駆け抜けるつもりだが、本番は10月以降だろう。自治体との連携も含め、何ができるかを検討している。ヤフーふるさと納税にしか無い返礼品や他のポータルサイトよりも安い寄付額といった点でも準備を進めている」(つづく)
楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 ECのお仕事プロ人材に 通販売上高ランキングのデータ販売