TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

ユーキャンの前期は大型販促が苦戦、通販ブランド統合でさらなる成長へ

2025年 6月 5日 12:00

 ユーキャンの2024年12月期の通販売上高は、消費者のリアル回帰や物価上昇など消費動向が大きく変化したことなどを受けて計画値には届かなかった。

 テレビCMや新聞の折り込み広告などを活用したメディアミックスの大型プロモーションとしては、昨年1月に人気商品の「カシオ電子辞書」を展開。能登半島地震の影響をあまり受けずに計画通りの販売となったが、それ以降は、主力の売り場である新聞の発行部数減に伴う投資効率の悪化もあって苦戦を余儀なくされた。

 一方でウェブ受注は堅調だ。これまでも、「ビクターウッドコーンオーディオ」や「カシオ楽らくキーボード」など一部の戦略商品でウェブ限定カラーや限定セットなどを展開しているほか、テレビCMで「詳しくはウェブへ」とECに誘導するテストを始めていることから、ウェブ受注比率が徐々に増えている。

 前期は「日本大地図」など、ECとの親和性があまりないような商品でもウェブ受注が増えており、注文の受け皿として通販サイトの存在感が高まってきている。

 生活雑貨を幅広く取り扱うココチモ事業では、前期にECシステムを移行し、ポイントアップキャンペーンなど、ウェブ会員登録をしてもらうための施策を強化したほか、ユーザーレビューツールを実装したこともあってオーダー率が増加。ウェブとの親和性が高い商品のウェブ受注比率は20%を超えてきたという。

 また、昨年は元日の能登半島地震に加えて、8月の日向灘地震では南海トラフ地震臨時情報が出されたこともあって生活者の防災意識が高まった。

 同社では東日本大震災より前の2009年から防災関連商品を手がけているが、ニーズの高まりに対応して防災関連商品のラインアップを拡充。3月と9月にDMなどで顧客にアプローチして販売数量を伸ばした。

 同社の防災セットは累計20万セット以上を販売しており、さらに単体商品や防災食を冊子カタログにして買い替えニーズにも応えている。

ブランド一元化
ウェブも強化へ


 今年4月1日からは、これまでCD・DVD・大型書籍などのコンテンツを提供してきた「文化教養事業」と、生活雑貨ブランドの「ココチモ」を統合して「ユーキャン ライフ&カルチャー」をスタートした。

 ココチモは13年11月に立ち上げたブランドで、最近では文化教養事業の売り上げを上回る水準まで成長しているが、これまでは両ブランドの通販サイトやバックオフィス、サービス内容などが異なっており、同じユーキャンの顧客でも利用しづらい面があった。

 同社はデジタルマーケティングの強化を図る上で〝ユーキャン〟のブランド力を活かした効果的な集客を行う狙いや、両ブランドのノウハウとマインドを共有してより良い新商品・サービスを開発する目的で、約2年半をかけて基幹システムと通販サイトを統合しバックオフィスやサービス内容も一本化した。

 新ブランドの理念として「大人世代が心豊かに、健やかに毎日を過ごせる社会の実現」を、ブランドキャッチコピーには〝暮らしいきいき、心わくわく〟を掲げているが、この策定に当たっては「ブランド理念構築プロジェクト」を立ち上げ、ライフ&カルチャー事業部(旧通信販売事業部)のスタッフが全員参加して決定。「今後はこの理念やコピーがスタッフのよりどころになり、判断に迷った時などに立ち返る指針となる」(ライフ&カルチャー事業部・手島篤志執行役員)とする。

 〝暮らしいきいき、心わくわく〟のコピーは各スタッフの名刺に記載したほか、新ブランドで広告を打つ際にも打ち出す。また、新ブランド誕生の冊子を制作して優良顧客に届けたほか、商品購入者にも同梱する。

 新ブランドは商品ジャンルをあまり絞ることなく拡大していきたい考えで、開発担当者だけでなく事業部の全員がバイヤーとなってヒット商品を創出していく。また、体験型の付加価値を付けたり、顧客と双方向のやり取りができるような商品、サービスを開発する考えだ。

 今回、新たにウェブ会員サービス「ユーキャンフレンズ」を発足。ウェブポイントの付与や会報メールの配信などを行うとともに、商品開発のモニター制度などを通じて顧客との接点を強化することで、ウェブ会員の定着と活性化につなげ、5年間で80万人のウェブ会員獲得を目指す。

 一方、日本製と天然素材にこだわった大人女性向けのファッションブランド「着心地のいい服」は、ブランドのコンセプトがはっきりしているため、さまざまな商品を扱う「ユーキャン ライフ&カルチャー」ブランドには含めず、引き続き独立したブランド名で成長を目指す。

 「着心地のいい服」では昨年11月にオールインワンジェルの取り扱いを開始。同商品も日本製と天然素材を打ち出しており、今後は基礎化粧品など定期購入が期待できる商材を強化したい意向だ。

 今期は、ライフ&カルチャー事業部のテーマに「劇的な進化の実現」を掲げる。前期までに取り組んできた進化や変化に向けた取り組みを深めて実行に移す。「これまでの取り組みを踏襲するだけでは、変化の早い消費動向に対応できない」(手島執行役員)とし、過去に大ヒットした商品への依存度を低め、大ヒットする新商品を一から開発・創出する。

 加えて、今期は販売ルートの開拓も進める。購読部数が落ちている新聞以外の売り場を探すことが急務なため、CD・DVDの音源などを保有する強みを活かし、例えばコンテンツとして配信するなど、物販だけでなくサブスクサービスや講話イベントなどコト消費も含めて商品・サービスを開発していく。
楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 ECのお仕事プロ人材に 通販売上高ランキングのデータ販売