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“通販DX”の進展で見える化を【PTP 有吉昌康社長に聞く 1年で進化した「ordr」の現状、そして今後】

2022年 6月 9日 13:00

 PTPは、全国の通販番組枠の検索が行えて通販番組の出稿戦略などに役立てるサービス「ordr(オーダー)」をリリースして1年を迎えた。当初、通販番組検索サービスと位置付けて展開してきたが、この1年間に導入先などからの要望に応じた機能実装や改変に取り組んだことで、”通販DXサービス”に進化しているという。「ordr」のこの1年における動向、そして今後について有吉昌康社長に聞いた。

 





 ――「ordr」のサービスを提供しようとした狙いは。

 「昨年5月にスタートした際に打ち出したのは、全国全ての地上波127局の通販番組、そしてBS主要6局の通販番組のデータを集めるということだった。日本全国の全ての通販番組をデータにして”見える化”すると宣言した。あたかもグーグルで検索したかのように、2ページ目、3ページ目を見ていくうちに気になる枠を探し当てることができるというイメージでスタートを切った」

 ――その後、相次ぎ新たな機能の実装を行っていった。

 「特に重要だったのが、昨年秋から年末にかけて取り入れた『効率検証』と呼ぶ機能だ。通販企業は受注数データ(呼量データ)を持っているが、毎日のように昨日は売れたのか、この1週間はどうだったか、数カ月間で見るとどうだったかということを気に留めている。データ自体はエクセルで管理するのが一般的だが、このエクセルというのが非常に不便な代物でもある。データベースとして膨大な数の通販番組に関する数値を何年分も蓄えていくとなると、エクセルは重くて開かなくなってしまう。また、データを管理していた担当者が辞めてしまって困っているという話も多く聞いた。そこで呼量データもクラウドで管理することを可能にして、『ordr』で効率検証を行えるようにした。1~2秒という瞬時でデータを見ることができ、前の月の状況、次の月の状況もすぐに切り替えながら確認できる。この効率検証が高い評価をいただいたことで、『ordr』が広がることになった」

 「『50コールくらいしかないと予測していたのに、100コールもあり、これはうれしい悲鳴だけれども、なんでだろうか?』と、その要因を探るための機能が効率検証だ。100コールもあれば、この番組枠を次回も使いたいと思い実際に放映してみたら、20コールしかなかった。そのようなことの繰り返しが多いと聞いた。原因が分からないから、博打をうち続けるようなものになってしまうので、我々は効率の良し悪しの原因が分かるにはどうすればよいかを考えた。導入先とも相談したことだが、重要度が高いもののひとつが天気だった。本来であれば非常に好天に恵まれる季節の日なのに、ところが土砂降りに見舞われて3、4日も雨が降り続けて、皆が家に居たというシチューションだったから売れたというようなことが分かる」

 ――エリアごとそれぞれの天気のデータを提供するのか。

 「エリアだけでなく、各エリアの時間帯ごとの天候、温度、そして湿度も。『ordr』を立ち上げれば自動的に表示でき、『昨日の午前11時の番組枠が効率よかったのは天気が悪かったためだったのか』と確かめられる」

 ――天気以外にも効率を左右する要素は他にもいろいろとありそうだが。

 「以前の勤務先のシンクタンクで小売チェーンのシステムを担当していたことがあるが、先方の担当者の方から売り上げを左右する3つの要素として、CM(宣伝)、天気、そして地方イベントということを教えていただいた。これらは通販番組でも同様に当てはまる。CMというのは番組放映ということであり、2つ目が今述べた天気、そして残っているのが地域イベントだが、それも間もなく『ordr』で確認できるようにする。『昨日、売り上げが悪かったが、おかしい』と思ったら、ある地方では花火大会が開催されていた。大きな花火大会となると、地上波で放映することが多い。東京でも隅田川花火大会はテレビ東京が夕方から2~3時間ほど放送する。その時間帯は通販番組のレスポンスが取りづらくなると予測することできる。また、大相撲の放送も大きく影響する。多くの人、特に高齢者がNHKを見ているからだ」

 ――地域イベントに関する情報は都道府県レベルで提示するのか。

 「そう。東京にいると、地方でどのようなイベントが大事か、お祭りでもどれが重要なのかということが分からないし、インターネットで調べても良く分からない。だが、それらを我々は全部調べた。地域イベントは毎年変わるようなことはないのだが、若い人でなく、60歳以上の人が関心を示すようなイベントは何かという点に目を付けていかなければならない」

 ――今年3月にはサービス開始から1年を迎えるに当たってイベントを開催した。

 「『第1回通販DXカンファレンス』を開催して、比較的早期から『ordr』に着目して使っていただいている通販企業の担当者にお話していただいた。通販業界を皆で良くしていこうと企画した。つまり、今風の言葉にすると”DX”であり、古い仕事の仕方、つまり紙とエクセルなどで行うのは効率が悪く、そのような状況から脱却するための取り組みについて議論していただいた。当社としても昨年5月にローンチした際には、通販番組枠のデータというものがないという状況から始めたが、業界の課題は分からなかった。そこで通販企業の皆さんから話を聞いていくと、あれこれとおかしなことや、非効率なこと、非合理なことがあり、我々のように違う業界の人間の視点から見てみると、こうしたらいい、ああしたらいいと思うことがたくさんあり、アイデアの宝庫でもあった。そして、この1年でそれを実現してきた。皆さんから知恵を出していただいて、当社はIT企業なので技術で可能なことを実現していく。業務知識を教わりながら、これとこれを一緒にしてクラウドでやればいいじゃないかという風に提案させていただいている」

1年で28万の通販番組を蓄積

 ――昨年4月からデータを蓄積してきているが、この1年間ではどれほどの通販番組のデータが集まったのか。

 「番組数では約28万だ。また、我々は”パート”と呼んでいるが、1つの番組で総合通販企業が複数の商品を販売しているケースもあり、その商品ごとにパートにわけて放映しているが、このパート単位では40万ほどになった」

 ――導入先企業で扱う商品で多いカテゴリーは。

 「『ordr』の全データを見ると、健康食品と化粧品の比率が高く約6割。導入企業もこのデータの傾向と同じで、やはり健康食品と化粧品の会社が多くなっている。例えば、直近の1カ月のカテゴリー比率では、パート数で健康食品が33%であり、化粧品を合わせると全体の半分ほどを占める」

 ――1年で「ordr」の導入先数はどれほどになったか。

 「30社ほどに導入いただいており、導入先合計の通販番組枠全体での枠数のシェアは4分の1を超える」

 ――今後1年でどの程度まで増やす考えか。

 「3月にカンファレンスを行って以降、違った傾向が出ている。それまでは情報武装している大手の通販企業が一層の情報武装を狙っての導入が多かったが、最近は、中堅の通販企業からの問い合わせが増えており、どんどん導入が進んでいる。番組枠数のランキングで言うと、50~100位に位置する企業が相次いで導入するようになっている。1日当たり数枠しか放映しないような通販企業も使い始めるようになっている。ただし、そのような企業はリソースが少ないので、ただ単にツールを提供するだけでなく、使い方も併せて説明させていただき、コンサルティング的なことも行っている。6月下旬に第2回のカンファレンスを予定しているが、中堅企業向けのコンテンツも用意する。上位100社のうち7~8割の企業に導入いただけるよう期待しており、そうなると大半の通販番組の企業を網羅することになり、通販番組枠全体のシェアで9割程度にすることができる」

 ――今後の新たな機能実装の計画は。

 「この先の1、2年はまだまだ新たに取り組まないといけないことがある。ひとつはコールセンターに関する部分だ。例えば、オペレーターは、お客様がどの番組を見て注文をしてきたかを尋ねる業務があるが、その作業は実は無駄なことであり、オペレーターは受電して成約するために待機しているわけで、余計な時間を省いて、次の受電に移ることで効率的に業務を回せる。我々としては、オペレーターに負荷をかけずにどの番組からの受電であるかが分かるような仕組みづくりを構築したいと考えている」

「どの放送局の番組、時間帯で良い結果が出たかを把握することは、次回の予測を立てる上での重要な情報ともなり、次回の番組枠の選定に大いに役立つ。そして、その先で機械を使った予測、いわゆるAIによる予測が可能になる。データが全部そろっている状態になれば精緻な予測が可能になる。しかも既に市場の4分の1のデータが入っている。これらのデータを使えばかなり精度の高い予測ができる。番組枠の効率が合うかどうか、1コール当たり〇〇円と見た場合、10コールであれば○○円で買えるな、と当然、皆さんも予測しているので、当社の予測とどちらが実際の結果に近いかを数社に依頼して勝負している。今のところ当社が勝っている(笑)。これをどんどんバージョンアップしていけば、さらに精度を上げていくことができる。通販企業にとって一番の核の部分であり、ここをもっとブラッシュアップすることで皆さんにより一層ご活用いただけることになる」

 ――そのコール予測に関する機能の実装はいつ頃になるか。

 「現在、モデルの実証段階にあり、間もなく設計に入り、その後に開発を進めていくことになるだろう」
 
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