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ジャパネット一丸で挑む<「長崎スタジアムシティ」が始動> 2024年9月に完成へ

2022年 6月30日 13:00

 ジャパネットグループが進めるスタジアムを軸にホテルや商業施設などを組み合わせた2024年の開業を目指す大型複合施設「長崎スタジアムシティ」が7月から着工、本格始動した。ジャパネットグループでは通販事業と両輪となる新たな事業の柱としてスポーツ地域創生事業に取り組んでおり、「長崎スタジアムシティ」は同事業の将来を決定付ける最重要案件といえそう。その狙いや進捗、今後とは。
 





 「ふらっと一人で散歩にいった時に、『ここにスタジアムができたら素敵だな』という想いを持った。思い付きに近いところから走り出したが、気が付けばたくさんの想いが集まり、ものすごい規模になっていた。総工費もすごいことになってきた(笑)。新しい誰もやった事のないことにチャレンジしていく」。

 ジャパネットグループが通販事業と両輪となる新たな事業として取り組むスポーツ地域創生事業の軸となる「長崎スタジアムシティプロジェクト」を始動させた。三菱重工業が長崎市内に所有していた約7ヘクタールの造船工場跡地を同社が取得し、ジャパネットグループのサッカークラブの「V・ファーレン長崎」がホームとしても使用するサッカー専用スタジアム(約2万席)を軸にアリーナ(約6000席)やホテル(245室)、オフィス(約1万3900平方メートル)、商業施設(約90店舗)などを組み合わせた施設だ。7月1日から着工し、完成、開業は2年後の2024年9月を目指す。総工費は原材料高騰の影響等で当初計画よりも増え、800億円を超える見込み。

 テレビ通販の雄である同社がなぜ長崎スタジアムシティを創るのか、地域創生事業を行うのか。6月26日に同社の関係者や大石賢吾長崎県知事、田上富久長崎市長ら行政の関係者らが参加した起工式と発表会を開催し、髙田旭人社長が登壇、その想いや勝算などについて語った。

 「通販事業ではよい商品を見つけ、磨き、それを伝えるというステップを大切にしてきた。(スポーツ地域創生事業も)これと同じで、その地域の良さを見つけ、それを磨き上げて、しっかり伝えていくことができれば」(髙田社長)と勝算について言及し、「民間が主導となって投資をして収益化できる地域創生モデルを確立させることに成功した時に、日本の他の地域でも同様の取り組みで元気にしようという動きが増えるのではないか」と狙いと期待感を示した。

 「長崎スタジアムシティ」の運営もジャパネットらしく自前主義にこだわる。スタジアムシティの運営に必要な知見やノウハウの獲得のため、例えば、スポーツの試合運営に向けては専門会社をグループ内に新設して「V・ファーレン長崎」や同じくグループのバスケットボールクラブの「長崎ヴェルカ」のホームゲームの運営や関連グッズのショップ運営などを自社スタッフですでに実施中。スタッフ教育などにも力を入れており、2カ月に一度の面談を通じてジャパネットらしいおもてなし・品質を担保しているという。また、施設内の飲食店展開に向けて昨年7月に同社グループが運営・管理する長崎市内にある稲佐山の山頂エリアに有名レストラン出身のシェフを採用してレストランを開店。スタジアム内で販売するビールも子会社でクラフトビールを製造している。また、長崎スタジアムシティの効率的な運営のため完全キャッシュレス化を進めているが、これについても一昨年から専用プリペイドカードのほか、クレジットカードや電子マネーなどに対応するマルチ決済端末を開発して稲佐山の飲食店のほか、サッカーやバスケットボールに設置し、完全キャッシュレス化に成功。イベント開催も稲佐山を会場に様々なアーティストが参加する一昨年から音楽祭を開催、ノウハウを蓄積している。

 発表会ではピッチに近い臨場感のあるスタジアムや試合の様子を見ることができる国内初のスタジアムビューホテル、同社が福岡の新オフィスで培った働きやすい環境などのノウハウを詰め込んだオフィス、広場一体型ショッピングモール様々なパース(完成予想図)も公開して具体的な構想を説明したほか、「長崎スタジアムシティプロジェクト」を盛り上げ、PRするため、長崎県出身で歌手・俳優の福山雅治さんが出演し、自ら監修、総合演出を務め制作し、6月26日から全国放送を開始した企業CM「長崎スタジアムシティプロジェクト始動篇」を初披露。福山さんは同プロジェクトを盛り上げるためのスローガン「N team」を同社と共に考案し、今後、CMのほか、「アイデア自体はたくさん出ており、色々なことをやりましょうという話はしている。福山さんというスーパースターが(長崎市を盛り上げるという)”想い”を持って一緒に発信して頂けることに非常に期待している」(髙田社長)とし、様々なPR活動に参加していくという。なお、福山さんは発表会にも長崎市内のグラバー園から中継という形で登壇し、髙田社長との対談を行い、「長崎スタジアムシティ」への期待感などを語った。

 ジャパネットグループが一丸となり、社運を賭けて取り組む「長崎スタジアムシティ」。通販事業と両輪として事業の柱として育て上げたいスポーツ地域創生事業の将来を左右する取り組みは今度、どうなっていくか。注目されそうだ。


リスク以上にリターン、「一緒にすごい世界創る」

髙田社長、大石知事、田上市長に聞く進捗と今後は?

 高田旭人社長と大石賢吾長崎県知事、田上富久長崎市長に「長崎スタジアムシティプロジェクト」の進捗や今後、意気込みなどについて聞いた。(6月26日開催の発表会での本紙記者を含む報道陣からの一問一答から一部を要約・抜粋。写真左から大石賢吾長崎県知事、ジャパネットHDの髙田旭人社長、田上富久長崎市長)

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 ――「長崎スタジアムシティプロジェクト」の進捗は。

 髙田社長「順調だ。原材料が高騰しているため、恐らく総工費は当初に見込んでいた700億円よりも増え、800億円超になってしまうと思う。まだ流動的で800億円におさまるかどうか分からない(笑)。予算を守るために目指すものを落とすか否かという葛藤はあったが、ゴールは変えない。コストが上がってしまうが、(様々な)アイデアが出てきており、(収支などを含めて)手ごたえを感じている」

 ――「長崎スタジアムシティプロジェクト」に長崎の県民、市民にどう関わってもらいたいか。

 髙田社長「前向きに一緒になって楽しんで頂きたい。チャレンジにはリスクも伴う。ただ、リスクをとらないと大きな成功はないと考えている。色々なチャレンジをしていくのでポジティブに後押しして頂きたい」

 ――「チャレンジにはリスクが伴う」とのことだがリスクはどこに感じているか。

 髙田社長「一番は財務上のリスクだ。もし上場企業だったら、まず株主の賛同を得られないような取り組みだろう。当社は年商2500億円くらいの規模だが、800億円超を投資すると。しかも、今までやってきた(通販の)事業とはまったく異なる世界だ。(「長崎スタジアムシティ」の関連事業で)もし200億円の売り上げが増えたとしても、効率で言えば通販で掃除機などを販売した方がよく、リスクも圧倒的に少ない。そういった意味でかなりチャレンジングなことをしているなとは思っている。ただ、リスク以上に大きなリターンがあると思っている。それは長崎で民間を中心にして地域創生を成功させることで、他の地域でも同じように地域創生をやっていける世界を作っていくこと。それは社会的意義としても、経営者としても楽しい。それに共感してくれる社員と一緒にすごい世界を創っていきたい。そうした想いはすでに皆、持っており、そういった意味ではすでにリターンは得ているのではないか」

 ――行政ではどう支援していくのか。

 大石知事「通りや公園など非常に公共性の高い施設も作って頂けるため、そういった観点からしっかり国の支援制度を活用して長崎市と連携しながら補助していきたい。また、情報発信でしっかりと盛り上がっていけるように長崎県としてサポートしていきたい」

 田上市長「色々な側面があるが、分かりやすいのはアクセスだ。駅から施設までのアクセスをしっかりと整備して、作るだけでなく盛り上げていけるよう民間の皆様と一緒に取り組んでいきたい」

 ――「平和」に関して何らかの取り組みは考えているか。

 髙田社長「長崎にとって”平和”というキーワードは非常に重要だ。スタジアムの構想の中でも平和について何か学べる施設を作ろうかという議論もあったが、すでに長崎には平和のメッセージを伝える施設は多くある。スタジアムシティとしては”ハブ”になって、国内外の旅行者がスタジアムシティに訪れた時に平和公園に行こうとか、佐世保に行こうとかそういう形でつないでいくことが大事だと思う。まだ発表はしていないが、世界的に有名なレストランを誘致するなどの計画もある。様々な人々がこの場所に期待と思っていただける理由を作るために色々なアイデアを形にしていくし、順次、発表していきたい。長崎全体を盛り上げることができるハブになりたい」
 
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