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海外勢への”規制”こそ急げ

2019年 4月25日 00:00

 公正取引委員会は4月17日、今年2月から調査していた「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行に関する実態調査」に関する中間報告を公表し、大手仮想モールから「一方的に契約内容を変更された」と回答した出店者や取引先が7割を超えるなど多くが不満を持っているという調査結果を明らかにした。同調査結果を踏まえ政府は仮想モールの規制強化も視野に議論を本格化させる方針のようだ。
 
 無論、仮想モール運営者側が定めた出店者側にとって不利となり得る規約変更などについては慎重な議論が必要だ。これまでの規約変更のプロセスが出店者側にとっては「一方的な押し付け」と感じていることは調査結果からも明白である以上、仮想モール運営者側は早急に方策を考え是正すべきだ。とは言え、それはあくまで事業者側の努力でできる取り組みであり、行政が不要な規制を課して成すことではない。不要な行政介入は必ず、当該産業の勢いを削ぐ結果につながることは過去の事例からも明確であり、通販事業者にとっても大事な「売り場」である仮想モールの勢いが失われては本末転倒だ。日本の数少ない成長市場の拡大を無用な規制で妨げてはならない。
 
 むしろ、行政が早急に動かなければならないことはその成長産業であるネット販売の売り場を提供する仮想モールが健全かつ公正な競争環境の下で切磋琢磨できる環境を整えるための”規制”であろう。仮想モールに限らずだが、音楽定額制配信サービス、アプリストアなどを含めたデジタル領域のビジネスは外国勢が国内事業者を圧倒している現状だ。無論、外国の企業が提供する各種サービスが優れたものであり、それ故に日本の消費者にも受け入れられ、大きなシェアを獲得していることは間違いない。ただし、その「優れたサービス」を作り出す源泉が不公平な前提条件の上に成り立っているのであれば問題だろう。
 
 課税面を1つとっても、現行の場合、海外企業は日本よりも法人税率の安い国で基本的には納税すればよく、そうして浮いた資金を設備投資やサービス強化に回すことができるが、それでは高い日本の税率で真面目に納税している国内企業は海外勢とは対等に戦えまい。そもそもアマゾンのような海外勢は、日本法人を合同会社としており、情報開示が不十分であり、実態の正確な把握すら難しいという問題もある。また、個人情報保護法や電気通信事業法、チケット転売規制法、著作権法など関連法の適用についても、外国企業に対する法の域外適用が不十分であり、国内企業にとってはコスト面を含む競争環境に不平等な差を生じさせている。
 
 行政は仮想モール運営者を規制する前に、海外勢との間で生じる不平等な差を埋める規制、対策こそ早急に進めるべきだ。そうでなければ、ただただ国内のモール運営者だけが委縮し、手足を縛られ、成長産業であるネット販売ビジネスが海外勢にますます飲み込まれる事態を誘発し、国益を大きく損なうことにもつながりかねない。
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