〈通販新聞 6月26日付 第1995号 (2025年6月19日発行) 2面〉
前号に引き続き、澤井珈琲の澤井理憲常務取締役に、同社の取り組みや今後の展望について話を聞いた。
◇
――海外では台湾に出店している。
「もともと19年に中国の大手仮想モール『アリババ』に出店しようと考えていたのだが、コロナで頓挫してしまった。再度体制を整えて挑戦した形だ」
――台湾以外での海外展開も検討している。
「店舗かECかは定かではないが、そのように考えている。グルメショップが越境ECに踏み切れない理由として、賞味期限と冷蔵・冷凍の問題があるが、コーヒーならばその両方に耐えうることができる。アジア圏以外にも出店したいが、やはり一番やりやすいのはアジアだろう。我々は台湾で10年間コンテナ出荷を行ってきた実績があるし、昨今は円安が非常に苦しいので、ドル支払いができる点は魅力的だ」
――AI活用の取り組みは。
「顧客対応、社内マニュアル作成、レビュー分析などに積極的に活用している。ショップの入り口は、トップページではなく商品ページだという風に捉えている。お客様は自身の想起するワードから商品を検索、購入して、レビューを書く。つまり、レビューには元となる検索キーワードが反映されているのではないかと考えた。レビュー分析の結果、よく見られたキーワードとしては、『大容量』、『コスパ抜群』、『職場』、『オシャレ』など。『お値段は上がりましたがまだまだ応援します』など、若干皮肉のようなコメントも見られた(笑)」
――物流面における課題は。
「楽天の『最強翌日配送』のように、翌日配送がマストとなってくると、コスト削減のため、ニッチな商材は削っていかなければならなくなる。コストに関しては、原材料高騰もそうだが、一番大きいのはやはり人手不足の問題。人的リソースを削らざるを得ないのに、さらに出荷を早めるというのは厳しい話だ」
――「最強翌日配送」に対応するために取り組んだことは。
「顧客の要望が大きい商品から順次対応を進めてきた。今のところ大きな成果があるわけではないが、楽天の売り上げ成長率は毎年106%前後と好調だ。値上げが続く中にもかかわらず売り上げが伸びているのは、ある意味『最強翌日配送』の効果があるのかもしれない」
――「楽天スーパーロジスティクス」は使っているか。
「使っていない。物流はすべて自社で行っている。鳥取県から配送できる範囲は広く、カバーできないのは北海道や沖縄、東北の北部くらい。鳥取は場所代や人件費が関東に比べて圧倒的に安い。とはいえ人口の少ない鳥取で人材を集めるのはなかなか難しい話だ。昨今は人材の流動化も進んでいるので、今後はハイクラス人材なども採用していきたい」
――さらなる成長に向け、今後注力していきたいことは。
「従来は楽天やヤフーの広告で訴求し、安く販売して、リピートを促し回収するというビジネスモデルだった。今後は動画などのコンテンツを活用して、澤井珈琲を買うベネフィットをサイト上で提案していきたい」
――Youtube上で「澤井珈琲チャンネル」を運営している。
「澤井珈琲は何でも早めに挑戦して早めに失敗しておきたいタイプなので、20年からチャンネル運営を始めた。最初に300万円を投資して撮影スタジオの設立を行った。初期費用が回収できるまでは、絶対にYoutubeを辞めないようスタッフに伝えている(笑)」
「動画マーケティングの時代はすぐそこまで来ているように思う。今年3月には『楽天市場ショッピングチャンネル』でライブ配信を行ったが、30分で約2万人が視聴してくれた。売り上げも好調だ。楽天では毎月18日の『市場の日』に30分のライブ配信を行っているが、毎回300万円ほどの売り上げがある」
――最近は「TikTok Shop」が注目されている。
「どこから手を出せばいいのか分からないので、とりあえずは様子見かな(笑)。でも確実に澤井珈琲との相性はいいはず。成功パターンが見えたのちに、澤井珈琲流に進化させていきたい」
――今後の目標は。
「昨今は仮想モール大手出店者の撤退が相次いでいる。しかしECというチャネルは顧客の数も、チャンスの数も桁違い。気を引き締めながらシェアを拡大していきたい。短期目標は年間70億円の売り上げと、〝お客様が見ていて楽しいサイト〟の設計。今のサイトは理想の30%も実現できていないので、さらに内容を深めていきたい」
「中期では100億円の売り上げが目標。30~32年をめどに達成したい。あとは各仮想モールのアワードでグランプリを獲得することが目標だ。長期目標は全世界に進出すること。個人的には、小学生の『将来なりたい職業ランキング』にECショップ運営者がランクインするくらい、ECの価値を高めていきたいと考えている」
――単一商材で100億円に到達できるのか。
「コーヒーだけで十分到達できると考えている。一番の課題は人材確保。正直、少子化がこんなに厳しいとは思わなかった。売り上げ拡大のためには生産体制の強化がマストだ。売り上げが50億円規模になってくると、月商1億円増やすのに10億20億の投資が必要になってくる。〝これ以上頑張らなくても、今のままで食べていけるじゃん〟と思うこともあるが、そこは弱い自分との闘いだ」(おわり)
〈通販新聞 6月26日付 第1995号 (2025年6月19日発行) 2面〉
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――海外では台湾に出店している。
「もともと19年に中国の大手仮想モール『アリババ』に出店しようと考えていたのだが、コロナで頓挫してしまった。再度体制を整えて挑戦した形だ」
――台湾以外での海外展開も検討している。
「店舗かECかは定かではないが、そのように考えている。グルメショップが越境ECに踏み切れない理由として、賞味期限と冷蔵・冷凍の問題があるが、コーヒーならばその両方に耐えうることができる。アジア圏以外にも出店したいが、やはり一番やりやすいのはアジアだろう。我々は台湾で10年間コンテナ出荷を行ってきた実績があるし、昨今は円安が非常に苦しいので、ドル支払いができる点は魅力的だ」
――AI活用の取り組みは。
「顧客対応、社内マニュアル作成、レビュー分析などに積極的に活用している。ショップの入り口は、トップページではなく商品ページだという風に捉えている。お客様は自身の想起するワードから商品を検索、購入して、レビューを書く。つまり、レビューには元となる検索キーワードが反映されているのではないかと考えた。レビュー分析の結果、よく見られたキーワードとしては、『大容量』、『コスパ抜群』、『職場』、『オシャレ』など。『お値段は上がりましたがまだまだ応援します』など、若干皮肉のようなコメントも見られた(笑)」
――物流面における課題は。
「楽天の『最強翌日配送』のように、翌日配送がマストとなってくると、コスト削減のため、ニッチな商材は削っていかなければならなくなる。コストに関しては、原材料高騰もそうだが、一番大きいのはやはり人手不足の問題。人的リソースを削らざるを得ないのに、さらに出荷を早めるというのは厳しい話だ」
――「最強翌日配送」に対応するために取り組んだことは。
「顧客の要望が大きい商品から順次対応を進めてきた。今のところ大きな成果があるわけではないが、楽天の売り上げ成長率は毎年106%前後と好調だ。値上げが続く中にもかかわらず売り上げが伸びているのは、ある意味『最強翌日配送』の効果があるのかもしれない」
――「楽天スーパーロジスティクス」は使っているか。
「使っていない。物流はすべて自社で行っている。鳥取県から配送できる範囲は広く、カバーできないのは北海道や沖縄、東北の北部くらい。鳥取は場所代や人件費が関東に比べて圧倒的に安い。とはいえ人口の少ない鳥取で人材を集めるのはなかなか難しい話だ。昨今は人材の流動化も進んでいるので、今後はハイクラス人材なども採用していきたい」
――さらなる成長に向け、今後注力していきたいことは。
「従来は楽天やヤフーの広告で訴求し、安く販売して、リピートを促し回収するというビジネスモデルだった。今後は動画などのコンテンツを活用して、澤井珈琲を買うベネフィットをサイト上で提案していきたい」
――Youtube上で「澤井珈琲チャンネル」を運営している。
「澤井珈琲は何でも早めに挑戦して早めに失敗しておきたいタイプなので、20年からチャンネル運営を始めた。最初に300万円を投資して撮影スタジオの設立を行った。初期費用が回収できるまでは、絶対にYoutubeを辞めないようスタッフに伝えている(笑)」
「動画マーケティングの時代はすぐそこまで来ているように思う。今年3月には『楽天市場ショッピングチャンネル』でライブ配信を行ったが、30分で約2万人が視聴してくれた。売り上げも好調だ。楽天では毎月18日の『市場の日』に30分のライブ配信を行っているが、毎回300万円ほどの売り上げがある」
――最近は「TikTok Shop」が注目されている。
「どこから手を出せばいいのか分からないので、とりあえずは様子見かな(笑)。でも確実に澤井珈琲との相性はいいはず。成功パターンが見えたのちに、澤井珈琲流に進化させていきたい」
――今後の目標は。
「昨今は仮想モール大手出店者の撤退が相次いでいる。しかしECというチャネルは顧客の数も、チャンスの数も桁違い。気を引き締めながらシェアを拡大していきたい。短期目標は年間70億円の売り上げと、〝お客様が見ていて楽しいサイト〟の設計。今のサイトは理想の30%も実現できていないので、さらに内容を深めていきたい」
「中期では100億円の売り上げが目標。30~32年をめどに達成したい。あとは各仮想モールのアワードでグランプリを獲得することが目標だ。長期目標は全世界に進出すること。個人的には、小学生の『将来なりたい職業ランキング』にECショップ運営者がランクインするくらい、ECの価値を高めていきたいと考えている」
――単一商材で100億円に到達できるのか。
「コーヒーだけで十分到達できると考えている。一番の課題は人材確保。正直、少子化がこんなに厳しいとは思わなかった。売り上げ拡大のためには生産体制の強化がマストだ。売り上げが50億円規模になってくると、月商1億円増やすのに10億20億の投資が必要になってくる。〝これ以上頑張らなくても、今のままで食べていけるじゃん〟と思うこともあるが、そこは弱い自分との闘いだ」(おわり)