東京地裁は今年7月、消費者庁が発出した景品表示法の措置命令を取り消した。判決では、年間の処分件数の6~7割に適用される「不実証広告規制」の問題も指摘された。
景表法の措置命令が取り消されたのは初めてで異例のことだ。
消費者庁は23年、forty-four(=フォーティフォー)が糖質カット炊飯器で行っていた「いつものお米を美味しさそのまま」、「糖質45%カット」といった表示を「あたかも通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質が、45%カットできるかのように示す表示」と認定した。フォーティフォーはこれを不服として昨年4月に提訴した。
不実証広告規制は、商品・サービスの優良性に関する表示について、企業に根拠提出を求めることができる。根拠提出がなければ優良誤認とみなせる〝みなし規定〟がある。
適用の条件は、商品・サービスの「効果・性能」に優良誤認の疑いが生じた時。主観的(気分爽快など)、抽象的(健康になる)な表現は基本的に対象にならない。優良誤認の蓋然性が高い表示でなければ、規制は適用できないということになる。
裁判では、「通常炊飯と同様の炊き上がり」という違反認定が争点になった。「糖質カットの性能に根拠を求めたと思っていた」(業界関係者)という声も聞かれたが、そもそも争われていない。
消費者庁は、「同様の炊き上がり」という表現について、水分の割合、これにより変化する米粒の硬度(食感)から「具体的、客観的に測定し得ることを想定して表現した」と述べ、主観的・抽象的な表現にはあたらないとした。これを前提に、不実証広告規制の適用に問題はなく、全体印象から「糖質の割合以外は、通常炊飯の米飯と同じ」と主張した。
しかし、地裁は、広告で釜の構造が異なり炊飯機能の切り替えが必要であることや、炊き方が異なることが示されており、「同様の炊き上がりという認定は事実誤認がある」と判断した。
不実証広告規制の運用にも重要な影響を及ぼす判断も下された。
措置命令は、企業から表示根拠の提出はあったにも関わらず、「同様の炊き上がりを示す資料は提出されなかった」とみなした。
地裁は、「炊き上がり」は抽象的、主観的評価にとどまり、「規制適用の前提を欠く」と、法運用の瑕疵も指摘している。つまり、主観的で根拠を持ちようがない表示に「同様の炊き上がりであるかのように示している」と難癖をつけ、「根拠がない」と言っているようなものだ。
判決により、消費者庁は規制運用の見直しが必要になるだろう。
規制は、優良誤認の疑いがある表示を対象に、企業が当然、根拠を保有しているとの前提に立って適用される。行政効率の観点から、立証責任の転換を図るものであり、処分の大半に適用されてきた。
だが、判決では違反認定そのものに誤りがあれば、「表示根拠を持っていて当然とはいえない」と指摘している。
そもそも景表法が執行を判断する表示の「全体印象」は主観的な判断を含み、違法性の判断に関わる「消費者像」も社会の変化に伴い変わっていく。これを適切に捉え、消費者庁は合理的な商品選択を阻害する表示を排除しなければならない。絶対的権限であるがゆえに、適用は慎重に判断されるべきであり、今回、その問題点が指摘された。大半の処分に同規制を適用してきた弊害だろう。
処分を受けた企業は、消費者の信用毀損、広告など事業活動に重大な影響を受ける。消費者庁に優良誤認に導く裁量はなく、優良誤認の蓋然性が高いものでなければ適用できない厳格な運用が必要になる。
東京地裁は今年7月、消費者庁が発出した景品表示法の措置命令を取り消した。判決では、年間の処分件数の6~7割に適用される「不実証広告規制」の問題も指摘された。
景表法の措置命令が取り消されたのは初めてで異例のことだ。
消費者庁は23年、forty-four(=フォーティフォー)が糖質カット炊飯器で行っていた「いつものお米を美味しさそのまま」、「糖質45%カット」といった表示を「あたかも通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質が、45%カットできるかのように示す表示」と認定した。フォーティフォーはこれを不服として昨年4月に提訴した。
不実証広告規制は、商品・サービスの優良性に関する表示について、企業に根拠提出を求めることができる。根拠提出がなければ優良誤認とみなせる〝みなし規定〟がある。
適用の条件は、商品・サービスの「効果・性能」に優良誤認の疑いが生じた時。主観的(気分爽快など)、抽象的(健康になる)な表現は基本的に対象にならない。優良誤認の蓋然性が高い表示でなければ、規制は適用できないということになる。
裁判では、「通常炊飯と同様の炊き上がり」という違反認定が争点になった。「糖質カットの性能に根拠を求めたと思っていた」(業界関係者)という声も聞かれたが、そもそも争われていない。
消費者庁は、「同様の炊き上がり」という表現について、水分の割合、これにより変化する米粒の硬度(食感)から「具体的、客観的に測定し得ることを想定して表現した」と述べ、主観的・抽象的な表現にはあたらないとした。これを前提に、不実証広告規制の適用に問題はなく、全体印象から「糖質の割合以外は、通常炊飯の米飯と同じ」と主張した。
しかし、地裁は、広告で釜の構造が異なり炊飯機能の切り替えが必要であることや、炊き方が異なることが示されており、「同様の炊き上がりという認定は事実誤認がある」と判断した。
不実証広告規制の運用にも重要な影響を及ぼす判断も下された。
措置命令は、企業から表示根拠の提出はあったにも関わらず、「同様の炊き上がりを示す資料は提出されなかった」とみなした。
地裁は、「炊き上がり」は抽象的、主観的評価にとどまり、「規制適用の前提を欠く」と、法運用の瑕疵も指摘している。つまり、主観的で根拠を持ちようがない表示に「同様の炊き上がりであるかのように示している」と難癖をつけ、「根拠がない」と言っているようなものだ。
判決により、消費者庁は規制運用の見直しが必要になるだろう。
規制は、優良誤認の疑いがある表示を対象に、企業が当然、根拠を保有しているとの前提に立って適用される。行政効率の観点から、立証責任の転換を図るものであり、処分の大半に適用されてきた。
だが、判決では違反認定そのものに誤りがあれば、「表示根拠を持っていて当然とはいえない」と指摘している。
そもそも景表法が執行を判断する表示の「全体印象」は主観的な判断を含み、違法性の判断に関わる「消費者像」も社会の変化に伴い変わっていく。これを適切に捉え、消費者庁は合理的な商品選択を阻害する表示を排除しなければならない。絶対的権限であるがゆえに、適用は慎重に判断されるべきであり、今回、その問題点が指摘された。大半の処分に同規制を適用してきた弊害だろう。
処分を受けた企業は、消費者の信用毀損、広告など事業活動に重大な影響を受ける。消費者庁に優良誤認に導く裁量はなく、優良誤認の蓋然性が高いものでなければ適用できない厳格な運用が必要になる。