アンドエスティが自社ECにUAなど参加、5年後GMV1000億円目標に外部企業の誘致加速

2025年10月22日 18:09

2025年10月22日 18:09

 アンドエスティHD(旧アダストリア)グループでプラットフォーム事業を手がけるアンドエスティは、運営するオンラインストア「アンドエスティ」でユナイテッドアローズ(UA)やジュン、ニューバランスジャパン、ICLが展開する人気ブランドを誘致し、自社ECの〝オープン化戦略〟を加速する。


1022180916_68f89f3c2b405.jpg アンドエスティHDでは2030年2月期が最終年となる「中期経営計画2030」において、自社EC内で外部ブランドの商品を販売するオープン化・モール化構想を掲げており、「アンドエスティ」の流通総額(GMV)は25年2月期の403億円に対して5年後に1000億円、外部ブランドの販売構成比は前期の3%から40%(400億円)にそれぞれ高める計画だ。目標の達成には商品カテゴリーの拡充を含めた外部ブランドの取り扱い強化が不可欠で、今回の人気ブランドの参画もその一環となる。

 10月15日にアンドエスティHDの本社オフィスで開催した「and ST VISION CONFERENCE」に登壇した木村治社長は、国内のファッション市場がピーク時から大きく目減りする中、「1社が利益を独占する時代は終わり、シェアする時代になった」と強調。約1年前に自社ECの運営を新設子会社のアンドエスティに移管して以降、「トップ営業をして仲間を増やしてきた。成熟市場では〝ワクワク〟を届けないと生き残れない。『アンドエスティ』がコネクターとなって国内外のブランドとつながり、1社では作れない体験価値を提供する。『競争』を超えて『共創』する未来に向けて新たなステージに入る」と語った。

 今回、アンドエスティの志に賛同して出店を決めたのは4社8ブランドで、ニューバランスジャパンは「ニューバランス」のアパレルアイテムをメインに9月24日に出店。ユナイテッドアローズは10月15日に「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」を出店した。ICLは10月22日に「アフタヌーンティー・リビング」を出店し、ほぼ全商品を販売するという。

 ジュンは10月29日に「アダム エ ロペ」と「サロン アダム エ ロペ」「ロペピクニック」「ビス」「エポール」の5ブランドを出店する。

 「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」の出店に当たっては、メンズとレディースのアパレル、シューズ、アクセサリーといった豊富な商品ラインアップを展開するだけでなく、システム連携して同ブランドの自社ECに掲載するスタッフスタイリングを「アンドエスティ」のコーディネートコンテンツ「スタッフボード」にも約200コーデ掲載する。

スタッフの接客力や会員基盤が魅力

 出店企業がそろって評価するのが、「アンドエスティ」の会員基盤と原宿の旗艦店をはじめとしたリアル店舗や販売スタッフのオンラインを含めた接客力だ。加えて、巨大ECモールでは自社商品が目立ちづらく価格競争に陥るリスクもあるのに対し、「アンドエスティ」はアパレル企業が運営するオンラインストアという距離の近さや規模感にもメリットを感じているようだ。

 9月末時点のアンドエスティ会員は2070万人以上で、アクティブ会員数は770万人、アプリの延べダウンロード数は1100万件、アプリ経由売り上げはECチャネルの70%以上を占める。

 また、実店舗については4月下旬に「アンドエスティ」の旗艦店「アンドエスティ トーキョー」をJR原宿駅徒歩2分の好立地にオープン。集客数は年間100万人を目標としているが、話題のブランドやグループ、コンテンツとのコラボなどを積極的に展開しており、集客数は半期で約55万人と計画以上で推移している。

 同旗艦店は「アンドエスティ」の出店企業がリアルの場での顧客接点を求めてポップアップストアを開催することもでき、ニューバランスジャパンもオンラインストア出店前にポップアップを開催し、アンドエスティのインフルエンサースタッフによるライブコマースを同店から配信するなどして注目を集めた。

 旗艦店以外にも「アンドエスティ」の名前を冠し、自社ECで取り扱うさまざまなブランドを集積したOMO型店舗は全国に30店程度あるほか、約1400店におよぶ各ブランド店舗で働く販売スタッフが「アンドエスティ」のコーデコンテンツで活躍しており、人気スタッフの力を借りれるのも「アンドエスティ」に出店する利点の一つになっている。

 実際、「アンドエスティ」ではスタッフコーデ経由の売り上げが大半を占めるようになるなど、「ECチャネルも進化していて、店頭スタッフの重要性がますます高まっている」(木村社長)とする。

 自社ECのモール化を加速することで、自社ブランドの売り上げが落ちる可能性もあるが、「新しいことをしなければ何も変わらないし、始まらない」(同)と腹をくくる。

 外部企業の商品はアンドエスティのEC倉庫で預かって販売するが、EC在庫のシステム連携も模索していくという。

 同社では「アンドエスティ」の認知拡大に向け、10月末からマスプロモーションを展開する計画だ。

 また、今後は「アンドエスティ」のアプリを〝買い場〟から進化した〝エンタメ化〟を目指す方針で、気になる商品を買うときに開くアプリではなく、毎日訪れたいアプリとして希少性やゲーム性、マッチング、コミュニティなどの機能、コンテンツ展開を構想しているという。

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