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ロコンド  黒字転換のポイントと成長戦略㊤

2015年12月10日 15:50

 2-1.jpg靴とファッションのネット販売を手がけるロコンドは、通販サイトの開設から5年弱となる今年10月に単月で黒字化を達成した。綱渡りの資金調達が続いた同社も、自社の利益で投資を行うフェーズに入る。今号から、黒字化のポイントと今後の成長戦略について見ていく。



 同社は2011年2月に「ロコンド」を開設したが、田中裕輔社長が「大失敗のスタートだった」と振り返るように、オープン直後から大々的にテレビCMを打つなどして垂直立ち上げを狙ったものの、初年度(12年2月期)は取扱高が約12億円、営業損失約15億円という結果となり、早々に堅実路線への軌道修正を余儀なくされた。

 そのため、11年~12年にかけては仕入れ形態を買い取り以外に広げたほか、本社移転や倉庫移転も含めたドラスティックな改革を実行。一方で前期(15年2月期)までに取り扱い商品の幅をアパレルなどへ広げたり、メーカー自社EC支援事業やアウトレット専門サイトをスタートするなど、売り上げ拡大に向けた第2、第3の矢を放ってきたものの、送料無料、返品送料無料で"買ってから選ぶ"という他社との最大の差別化要素が収益を圧迫し、何度もギリギリの資金調達で窮地を脱してきた。

 今期は、スポーツ用品大手アルペンとの資本業務提携を皮切りにスポーツ商材の取り扱いや仮想モールへの出店、店舗欠品フォローシステム「ロコチョク」の開始などもあって売り上げが順調に拡大。10月単月の取扱高が過去最高となる9億円を突破し、初めて営業利益、経常利益、純利益のすべての利益項目で黒字化を達成した。

 黒字転換の要因としては、まずは取り扱い商材の拡充が挙げられる。ロコンドは5月に結んだアルペンとの提携によって、同社がメーン出店社として参画するスポーツファッションの通販サイト「ロコスポ」をオープンするなど、品ぞろえの幅をさらに拡大。バッグや服、アクセサリー、スポーツ商材といった靴以外の売り上げが増加し、顧客の年間購入額が20%増加しているという。

 主力の靴についても、プライベートブランド(PB)の「プラスバイココチッチ」がファッション誌「STORY」との共同開発商品の展開などを通じて売り上げを大きく伸ばし、利益面にも寄与した。


リピーターが購入者の8割

 また、ロコンドでは送料無料、返品無料のコンセプトに代表される"顧客至上主義"を徹底しており、通販サイトの使い勝手はもちろん、商品の梱包や問い合わせ対応などすべてのプロセスで顧客満足度改善活動を実施。コンシェルジュに直接届く声や、返品理由などにしっかりと目を通し、素早い対応、返信を心がけるなど徹底的に顧客の声に耳を傾けることで既存顧客の満足度が向上しており、日々の購入者のうちリピーターが占める比率は3年前の25~30%程度に対し、足もとでは80%を超えてきているという。

 広告展開については、リターゲティング広告などリピーター向けで見直しを図っているが、メルマガについては外部企業と作り込んだセグメント配信のシステムを約半年前にスタートして成果が出ており、10月のメルマガ経由売り上げは1億円を突破。リピート率の向上にも寄与している。

 新客開拓に向けてはリスティング広告などを増やしているほか、10月からはコンシェルジュページを刷新し、顧客からの問い合わせなどをQ&A形式でまとめたところ、SEOで上位に表示され、SEO経由の流入数が増加している。

 また、ロコンドでは、8~9月にスタートした新規事業も売り上げ拡大に貢献している。例えば、8月からは「楽天市場」などの仮想モールにロコンドの公式ストア「ロコモール」(=㊤画像)を出店し、"試着できる通販"を掲げたことが注目を集めて出だしから好調という。とくに、スポーツ商材がモール利用者に響いているようで、自社の「ロコンド」よりも客層がマッチしている。スポーツ商材についてはモール出店企業のサービス水準はその他の商材に比べると決して高くないこともあり、送料無料や返品無料、即日出荷などのインパクトは強いようで、男性顧客も含めて新しい客層をモールで獲得できているという。(つづく

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