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クオカプランニングの岩間建作社長に聞く、オムニチャネルの方向性は?

2016年11月10日 14:52

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製菓・製パン材料のネット販売を行うクオカプランニングは、オムニチャネル展開を進めている。実店舗や卸販売、ネット販売を繋ぎ顧客接点を拡大する。各売り場を通じて共通した情報を発信し、手作りの疑似体験や価値観への共感をきっかけに購買を促していく。2015年9月に社長に就任した岩間建作氏は、積極的にオムニチャネルの活用に取り組んでいる。その方向性を聞いた。

オムニチャネルの基本的な考え方は。

 「オムニチャネルの前提として、当社のミッションを『料理を楽しむ"クオカ(料理人を意味するイタリア語)"を創出し、クオカが他のクオカを連れてくる』と明文化した。製菓・製パン材料を扱うため手作りの温かさや安心感を最も大切にしながら、新しいツールやシステムを導入する必要がある。この考えをベースに、ネット販売や実店舗、クッキングスタジオ、卸の4チャネルを繋ぐオムニチャネルを目指したいと考えている」

 着手していることは。

 「ネット販売や実店舗、スタジオで、色使いなどのルールを定めて空間を統一した。統一した空間の中で、季節の提案など共通したコンテンツを発信している。ユーザーはどのチャネルから入っても、"クオカ"だと気付くことができるようにした」

 コンテンツはどんな内容か。

 「何気ないキュレーションの中でユーザーには『面白そう』『私にもできそう』『やってみたい』と思ってもらうことが重要。手作りの雰囲気や疑似体験を動画で提供し、動画への共感を購買のきっかけにしたい」

 具体的には。

 「秋はモンブランが完成する40秒の動画を作り、通販サイトや実店舗で公開した。タルトの上にクリームが絞られて栗の渋皮煮が置かれ、マロンクリームでデコレーションされる内容だ。また、レシピ動画サイトと連携して、チーズケーキを手作りする動画も公開した。チーズケーキの動画の再生回数は約40万回と多く、動画が流れている間は、使用した道具の売れ行きも良かった。もちろん瞬間的な収益を狙ったものではなく、あくまでも疑似体験で共感してもうことが重要。徹底的に行った結果として収益につなげていく」

 各チャネルをどうつなぐか。

 「ソーシャルメディアを使いながら、オムニチャネルをしやすい環境を整える。今年のバレンタインでは、外箱にQRコードを記載して、無料通信アプリ『ライン』のアカウントを通じてレシピ動画を公開する。イメージを見た上で作ってもらうようにする。そうすると、バレンタインが終わっても、リターゲティングで追うことができる。もともとバレンタインの手作りキットは卸販売を中心に15万個を販売するヒット商品だ。ユーザーはキットを使って作ったものを恋人や友人にプレゼントする。だが、ユーザーはそれきりで当社の顧客にはなっていない。15万の接点が効果的に顧客になるように活かしていなかった」

 新規顧客層とはどういったコミュニケーションを目指すか。

 「『ライン』は、新しいユーザーと繋がるツールと位置付ける。初心者向けにレシピに良く出てくるワードを解説するコンテンツを配信する。成功することを前提にレシピを提案しているが、実際にユーザーが作ったものとのギャップが生じる。このギャップを、言葉の解説や手作りの雰囲気を伝えることで埋める。

 ユーザーの体験は商品を購入して手作りするまでだ。当社のレシピで作り喜んでもらった満足度だけではなく、作る前の不安な気持ちや失敗など、体験はユーザー1人1人違う。それらをSNSやレビューなどで共有できるようにしたい」

 これら取り組みについて、今期(2017年6月期)の収益への貢献度は。

 「売上高は前期比数%増だが、営業利益は2倍を見込む。共感を重視した施策をすすめる一方で、セールの圧縮やウェブ広告を抑えている」

 1Q(7~9月)の進捗は。

 「クリスマスやバレンタイン、誕生日にだけ手作りする購入回数が年1回の人に向けて、購入回数を1・5回に増やすための施策を進めた。マーケティングオートメーションツールを導入して、顧客をセグメントしてメルマガを配信した。また、AIをテスト導入して、サイトを離脱するユーザーに、クーポンを配布する試みも着手している。クリスマスやバレンタインなど手作りする機会が増える下期に、一定の成果が出ることを期待する」

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