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メーカーもサブスク型に【リプロの平田CEOに聞く エンゲージメントマーケの重要性㊦】 プル型CRMは機能しない

2020年 3月16日 13:30

 前号に続き、Repro(リプロ)の平田祐介CEOにカスタマーエンゲージメントマーケティングの重要性を聞いた。

 ――本紙調査では通販実施企業の課題のトップは「新客開拓」だ。

 「通販業界ではファネル型マーケティングが染みついていて、広告費を100万円使うとコンバージョン率は3%だからといった具合に計算する。予算を組むときも3割増を狙うのであれば広告費も3割増やさないと成り立たないよねという発想になるが、獲得コストが上昇すると思うように行かず、『新規獲得が課題だ』という風になる。従来の広告確率論ではダメ。認知や興味・関心の部分にジャブジャブ広告費を使うやり方は資本力でしか勝負できない」

 ――御社はエンゲージメントマーケの領域を強化している。

 「当社はデータとコミュニケーションの多様化が進んでいて、従来は『リプロと言えばアプリ』という印象だったと思うが、もっと統合的なエンゲージメントマーケができるプラットフォームに進化している。世の中に対し、『既存顧客にフォーカスしないと危ない』ということを啓蒙すべきと感じている。ファネル型マーケからエンゲージメントマーケに変えるだけで通販業界は良くなる」

 ――小売りだけでなく、メーカーにも当てはまるのか。

 「5~10年のスパンで見るとメーカーも売り切り型からサブスクリプション型に変わっていくだろう。10万円の家電を売って終わりではなく、毎月数千円であっても20年、30年と利用してもらう事業モデルになったときに従来のプル型CRMでは機能しない。コールセンターに故障やクレームの電話が入ったときに、誰からどんな内容の電話があったのかを記録するのが従来型CRMシステムだが、今後はプッシュ型CRMが必要で、それを米国ではカスタマーエンゲージメントプラットフォームと呼んでいる」

 ――プッシュ型CRMに欠かせないものは。

 「データ活用だ。エアコンが壊れてメーカーに電話しても全然つながらないとイメージも悪くなる。今後はエアコンが壊れる前に『ダメになりそうな部品の交換に伺います』というプッシュ通知が届き、お願いしたら部品交換だけして帰れば、ユーザーにとって非常に良い体験となるし、サブスクサービスになっても解約率は抑えられる。そのコミュニケーション領域を『リプロ』が支えていきたい。実際に、家電メーカーとIoTデータを活用した実証実験を始めている」

 ――通販企業の顧客定着化に向けて有効なマーケ施策は。

 「新規をウェブで獲得し、リピートするくらいのタイミングでアプリに誘導する施策をウェブで行う。アプリであればメール以外のコミュニケーション手段としてプッシュ通知を活用でき、訪問頻度が高まる。ウェブとアプリの両チャネル方を持つEC事業者のデータを分析した結果、ウェブチャネルだけを使っているユーザーと、アプリまで誘導できた顧客のLTVを比較すると後者の方が40%くらい高い」

 「検索の概念が強いウェブで新規客と出会って購入体験をさせたら、2回目以降の購入でどれだけアプリに誘導できるかが大事。倉庫で新規購入者の商品をピッキングする際にアプリだけで利用できる割引クーポンのチラシを入れてもいい。2回目の購入がアプリ経由の比率をKPIとして捉え、その比率を上げることがEC売上高を高める上で一番効果的だ」

 ――アプリを持たない事業者の場合は。

 「アプリでプッシュ通知が打てない場合はメール以外のツールを活用する。ウェブプッシュ通知はPCユーザーの許諾をとりにくかったりするが、許諾を得るためのテクニックもある。SMSやLINEも有効で、販売チャネルとコミュニケーションチャネルの充実は両方大事だ」

 ――実店舗の活用は。

 「オフラインは費用対効果が悪く、エンゲージメントを高める場として活用すべきで、あまり利益を追うチャネルではない。取り扱う商品の良さが大前提になるが、例えば土屋鞄製造所では工房の見学会を始めてからリピート率が上がったという。リアルの場で直接コミュニケーションをとることでブランド価値が上がる」

 ――米国ではどうか。

 「『ジェイ・クルー』の姉妹ブランド『メイドウェル』ではロイヤルティプログラムと同時にオフラインで地域に根ざしたコミュニティーを作っている。店舗の半分くらいは売り場ではなく、地域ごとにまったく異なるロイヤルティプログラムを作って顧客が参加できるワークショップなど体験のパーソナライズを大切にしている。顧客ごとのカスタマイズが大事で、伸びている会社はオフラインを含めたエンゲージメント施策を考えている。少し前にリアル店舗は試着室と言われていたが、それだけではKPIや投資対効果が合わない」(おわり)


 
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