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AI活用の最前線 ファッションテックの2社の現状は?

2020年10月22日 13:30

 通販業界でも顧客情報や商品情報などのビッグデータを生かしたAI活用が進んできている。その範囲はユーザー行動予測や需要予測、画像認識、チャットボットなど幅広く、顧客体験の向上やバックオフィスの効率化などを通じて売り上げの拡大や利益改善につながる事例も出始めた。中でも言語化が難しいファッションカテゴリーでのAI活用は通販業界のみならず、ファッション産業への影響を指摘する声もある。ファッションテック企業であるゾゾグループとエアークローゼットのAI・データ活用の現状を見てみる。

識別系と予測系に照準

ZOZOテクノロジーズ


ZOZOテクノロジーズは、ゾゾグループが持つビッグデータを使ったAI活用を推進している。

 「ゾゾタウン」の年間購入者は860万人超、取り扱いブランドは約8000で、商品情報や購買履歴、閲覧履歴、顧客情報などのデータを持つほか、「ウェア」には着こなしデータを含めトレンドを判断する材料も大量にある。加えてゾゾスーツやゾゾマットで得た体型データもあり、これらのデータを使って売上高拡大や顧客体験価値の向上につながるAI活用を進める。

 AIは機能別に「識別系」「予測系」「会話系」「実行系」の4タイプに分類でき、ゾゾグループの”データ×AI”の取り組みは「識別系」と「予測系」にフォーカスしている。

 「識別系」はゾゾスーツやゾゾマットといったスキャンデータに対する解釈を機械に任せる部分や、「ゾゾタウン」と「ウェア」に導入済みの「類似アイテム検索」もそうだ。これはファッション商材の形や色柄などをもとにAIが似ている商品を検出して一覧で表示する機能で、ユーザーが新たな商品と出会う機会を増やす。昨今はさまざまなブランドがAI画像認識のクラウドサービスを使って自社ECに導入し始めているが、ゾゾグループは独自のアルゴリズムを組んでいるためカスタマイズもできる。

 「予測系」は、大きくは顧客予測AIで、例えばユーザーごとに30日以内の購入予測のスコアを出し、スコアに応じたマーケティングを実行する。特定ブランドや高額品、靴などさまざまなセグメントで購入予測をスコア化してマーケティングに取り入れている。

 予測系はさらに、コールセンターの呼量を予測して人員の最適配置につなげたり、古着の最適買い取り価格予測や欠品予測などでもAIを活用している。

ハイブランドと共同マーケティング

 「類似アイテム検索」は昨年8月に「ゾゾタウン」に導入。数万人規模で機能の先行テスト行った結果、利用者は非利用者と比べて滞在時間が4倍以上で、利用率が向上した。また、カテゴリー検索やレコメンド経由では出会わなかった商品を見つけることができるなど、新しい検索の仕方を提供したことで購入機会が増え、「予想以上に売り上げに貢献している」(野口竜司ZOZOテクノロジーズVP of AI driven business)という。

 購入予測AIを使った顧客アプローチではハイブランドの「ロエベ」と組み、「ゾゾタウン」で同ブランドの購入確率が高い顧客に効率的にアプローチする実験を実施した。その際、「ロエベ」だけでなく、高額ブランドの購入意思や直近の購入意欲なども含めてスコア化し、今まさに購入しそうな顧客をAIで予測。スコア上位者にはメールと「ゾゾタウン」でのウェブ接客、アプリのプッシュ通知で需要喚起を図った。

 予測系での取り組みではさらに、「ゾゾユーズド」の古着買い取りでもAI活用が進んでいる。古着の買い取りは、「ゾゾタウン」で新品を購入する際に古着の下取り額を事前に割り引く「買い替え割」の下取りと、「買い替え割」利用時に同梱される古着の2パターンがあり、「買い替え割」の下取り価格提示はAIが決定。古着の販売価格をAIで予測し、それをもとに下取り価格を設定している。

 古着は単品特定が難しく、ブランドやカテゴリー、商品の状態などから値付けしてきたが、グループのビッグデータとAI活用でより精度の高い販売価格を予測。従来以上に高い買い取り価格を提示できるようになった。

 古着のAI値付けは9月時点で「ゾゾユーズド」で買い取りをしている古着の6割強に上る。「ゾゾタウン」や「ゾゾユーズド」で扱いのない商品は現状では高精度な価格予測が難しく、AI値付けをしていない。

 AI値付けでは「ゾゾユーズド」の販売実績や、定価を含む「ゾゾタウン」での一次流通の商品情報も機械学習に変数として加えたことで、販売価格予測の精度が高まった。



服との出会いをサポート

エアークローゼット


 ファッションレンタルサービスを手がけるエアークローゼットは、データ解析・AI開発を主導する「データサイエンスチーム」を設け、パーソナルスタイリングに紐付く洋服やコーデパターン、物流などの各項目から派生する膨大なデータを解析、活用している。

 「エアークローゼット」の最大の提供価値はスタイリストのコーデによる洋服との出会いで、たくさんの洋服に出会ってもらうためにスタイリストが利用者にスタイリング提案し、その感想をレーティングとコメントの形でフィードバックを得る。それを元に提案の精度を高める仕組みがサービスの根幹で、この概念がデータ活用を出発点にしている。

 ユーザーの登録写真を見ながらスタイリングを組むが、AI活用で目指すのは、スタイリストの腕や個性を生かしたまま、効率よく価値を提供できるスタイリングのパートナーとしてのAI開発だ。現状、「AIはスタイリストのセンスにまったく勝てない」(天沼聰社長兼CEO)とし、スタイリストがメインでスタイリングを考えつつ、数十万着の服の中からスタイリストが選びやすいようにAIやデータを使って効率化を図っている。

 また、300人以在籍するスタイリストにはそれぞれに得意なスタイリングテイストがあり、ユーザーにも好みがあるため、満足度の高いスタイリングを届けるにはスタイリストの「得意」とユーザーの「好み」をつなげる必要がある。

 そこで、同社は独自のマッチングシステムを開発。登録情報やフィードバック情報をもとに、他のユーザーのフィードバックとの類似性を計算。算出された類似度から好みが似ているユーザー同士を抽出するなどして、「得意」と「好み」のマッチングを実現した。ユーザーからネガティブな反応がなければマッチングは正しかったと判断し改善を進める。

返却予測のAIで成果

 成果が明確に分かるAI活用としては、今日何着の洋服がユーザーから戻ってきて、明日は何着戻ってくるかという返却予測AIがある。「エアークローゼット」は返却期限がなく、すぐに返却する人もいれば数カ月間手元に置く人もいて各ユーザーの保有日数を予測するのは難しいが、過去の経験に基づく勘からAI活用に切り替えたことで、推定返却数と実際の返却数の誤差は10%以内にとどまり、スタッフ不足による返却作業の遅延や、スタッフ過多によるコスト増を回避している。

 今後は倉庫でもデータ活用を進める。戻ってきた服がいつ貸し出されるかを過去情報から導き出し、返却された服の最適な保管場所を把握して倉庫人員の動線改善につなげる。

 一方、同社では豊富な種類の洋服を届けるためにシーズンごとに大量の服を仕入れている。その際、最適な在庫量を把握することが大事だがレンタルの特性上、簡単ではない。

 販売して終わりのECとは異なり、洋服が倉庫からユーザーの手元、クリーニング工場へと循環するため、再び在庫化するまでにある程度の日数がかかる。また、ユーザーが気に入った洋服を買い取れることや、修繕不可で廃棄する洋服もあり、同社在庫から抜け落ちる洋服も出てくる。

 そこで、同社は新たに在庫最適化シミュレーションを立て、保有するすべての洋服を総在庫とし、その中で倉庫に保管されている服、ユーザーの手元にある服、メンテナンス中の服という3つのプールを仮定してそれらをイベント駆動で動かし、トータルで理想的な最適在庫量を導き出している。同社は将来的にアパレル企業にシステムを提供することも視野にあり、「データの力でアパレル業界の廃棄問題に貢献したい」(天沼社長)とする。

 今後はスタイリング面でさらにデータ・AI活用を推進。とくに画像解析の精度を高められれば、取り扱い商品の登録ステップが省略でき業務フローが効率化できるほか、従来はユーザーからのフィードバックで満足度を判断していたが、画像解析を追加することで満足度が高いコーデのポイントを高い精度で分析できるという。




 
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