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現代書林の薬事法違反事件、起訴事実が二転三転、「間接正犯」の立証が争点に

2012年12月28日 10:52

12月20日、健康食品通販のキトサンコーワと商品の関連本を出版していた現代書林(本社・東京都新宿区、坂本桂一社長)の薬事法違反事件の公判が始まった。2011年末の逮捕から約1年。ようやく始まった公判だが、検察が現代書林の犯罪を立証するには、高いハードルが立ちはだかることになりそうだ。

 「この起訴事実が認められたら法曹界が騒ぎになる。裁判官は司法研修の教官も務める優秀な方だが、そのような判決を出せるか」。今回の刑事裁判に関係者はこう漏らす。というのも起訴状には、これまで例のない起訴事実が含まれているためだ。

 まず、事件を整理したい。11年10月、神奈川県警は効果効能をうたい、キトサン配合の健食(未承認医薬品)を販売していたキトサンコーワの國安春子社長を逮捕した。キトサンコーワでは、現代書林に委託して制作した書籍内でキトサンの効能を"ガンが治る"ながとうたい、商品とセット販売。これが"バイブル商法"を言われる所以だ。

 また、県警は現代書林が「書籍を発行すれば商品が売れる」と持ちかけていたとして、同社の武谷紘之元社長ら4容疑者も「販売ほう助」の罪で逮捕した(起訴はキトサンコーワ社長、現代書林元社長ら3人)。

 ただ、現代書林について起訴状では「販売ほう助」を改め、「(キトサンコーワ社長と)共謀して書籍を書店で陳列・販売した」ことが「未承認医薬品の広告の禁止」にあたると嫌疑を切り替えている。さらに「書店販売には複数の取次店を介しており、現代書林が直接販売することはありえない」との弁護側の反論を受け、昨年2月「書店の販売員を介して陳列・販売した」と変えるなど、起訴事実が二転三転している。これが公判に1年を要した理由だ。

 嫌疑を切り替えたのは、出版から10年近くが経過し、現代書林の主体的な関与を立証するのが難しいためとみられる。ただ、新たな起訴事実の立証のハードルも高い。

 「書店を介して」という嫌疑は、刑法上「間接正犯」と呼ばれるもの。他人を道具ように使う犯罪行為のことだ。

 例えば、全く犯罪の事情を知らないような子供を利用して罪を犯した場合、また、ドメスティックバイオレンスなどで他人を支配した状態で犯罪に利用した場合、「間接正犯」は成立する。今回のケースでは現代書林が「書店の販売員を介して広告した」という意味合いになる。

 だが、書店販売が確認されたジュンク堂書店7店舗は、いずれも新規出店で書店サイドが書籍を発注している。現代書林が、書店に強い影響力を持っていたとは考えにくく、「間接正犯」を立証できても、"そもそも書店での販売が「広告」にあたるか"という問題が立ちはだかることになる。

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