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同社によれば、会話のうち80~90%は購入前の問い合わせだという。例えば「早めに届けて欲しいのだが、今日買うといつ届きますか」といったものだ。店舗ページには納期に幅を持たせてある店舗が多いが、実際には当日中に出荷可能なケースもあり、そうなれば記載よりも早めに届くことになる。こうした旨をチャットで伝えれば「ユーザー側も『無理を聞いてもらった』という気持ちになり、購入につながる。より単価の高い商品を納得して買ってもらうという効果も期待でき、営業提案ツールとしては非常に優秀ではないか」(担当のコマースカンパニーオペレーション&マーケティング統括部クライアントコミュニケーション部の西郷佐知子シニアマネージャー)。
チャットには商品ページの左側に表示されるボタンから移行できるが、店舗側で「受付可」「受付不可」のどちらかのステータスが選択できる。営業時間外や、人手が足りない場合などは「受付不可」を選べばチャットを受けない体制となる。
チャット対応は人手が必要になるため、規模の大きな店舗では、専用の人員を用意したり、外部に委託したりできるものの、中小規模、特に1人で運営しているような店舗の場合、対応が難しくなる。西郷シニアマネージャーは「1人で運営している店舗でも、こまめにログイン・ログアウトを繰り返すことで、パソコンの前にいるときだけ対応したり、帰宅後の空いた時間で対応をするケースもあるようだ。負担にならない範囲で取り組んでもらえれば」と話す。
楽天市場では11月末、「ブラックフライデー」関連のセールを実施。特に、セール中の日曜日であり、さらに楽天カード利用者のポイントが上昇する「5の倍数の日」と重なった25日は、チャットの会話数も増加。大半の店舗は日曜日は休業日となっているが、売り上げが見込める日ということで、チャット対応を行った店舗が多かったものとみられる。
ただ、転換率や単価向上といった成果は出ているものの、「チャットを活用していない店舗の方がまだまだ多い」(西郷シニアマネージャー)のも事実だ。問題は店舗の「リソース不足」だけではなく、「ユーザーにチャットサービスに慣れていない」ことにもある。
そこで同社では会話数を増やすために、チャットに関するガイドページの作成や、「チャットに対応している」ことを示すためのバナーを配布するといった対応を計画している。さらには、モール内検索において、店舗が「チャット対応可能」であることを示すためのマークを表示する。なお、チャット対応の可否を検索アルゴリズムに組み込むことはないという。
また、11月28日には、「決済」「返品ポリシー」「営業時間」に関する質問に、自動で返答するチャットボットを全店舗に導入した。(つづく)