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【三陽商会 ECの成長戦略は?㊤】 自社ECが再成長へ、速度改善や決済多様化、ルビーとの連携も奏功

2019年 4月18日 13:41

 三陽商会は、成長戦略のひとつに掲げる”デジタルトランスフォーメンション推進”の一環として自社ECのコンテンツやオペレーションの強化などに本腰を入れ、ECチャネルの成長を再加速させる。

 前期(2018年12月期)のEC売上高については前年比6・2%増の53億1700万円で着地。内訳は自社ECが同約3%増の38億3600万円、外部モール経由が同約17%増の14億8000万円で、自社ECの構成比は72%と他のアパレルに比べて高い水準を維持している。

 前期は廃止ブランドの影響や全社的な在庫圧縮の取り組みなどがボトルネックとなって上期のEC売上高は前年同期比0・6%増にとどまったが、下期は自社ECの復調と外部モールへの新規出店効果で同12・1%増となり、通期での成長につながった。

 自社通販サイト「サンヨー・アイストア」では、前期までにサイト表示の速度改善に着手。1訪問当たりのページビュー数が1・5倍になるなど成果が出ているほか、アマゾンペイでの決済にも対応するなどユーザーの利便性向上に努めた。

 足もとでは、昨年4月に子会社化したルビー・グループとの連携を強化。例えば、特集企画のランディングページなどは、サイトデザインやプロモーションを含めた運営支援ができるルビーの視点を取り入れたクリエイティブとし、ABテストを繰り返しながら勝ちパターンをより強固にしている。撮影についても1年半ほど前からモデル画像への切り替えを行ってきたが、次のフェーズとしてロケ撮影をしたり、スタジオでも背景を工夫した撮影を行うなどバリエーションを増やすことでコンバージョン率の改善につなげている。

 また、全国の対象店舗と自社ECでポイントが共通利用できるサンヨーメンバーシップ会員とクレストブリッジ単独のメンバーシップ会員についても合計75万人、両メンバーシップ専用アプリも合計約20万ダウンロードとなり、アプリ経由の売り上げが伸びている。

 両アプリは会員証代わりに利用してもらうが、プッシュ通知で自社ECのイベントを告知すると、従来のメールなどよりもEC送客で効果があるという。自社ECのアプリではなく、メンバーシップアプリに情報を届けることは、「回り道をしているようで、つながりという意味では非常に太い」(安藤裕樹デジタル戦略本部デジタルマーケティング部長兼EC運営部長)とする。

 こうした取り組みにより、自社ECは再び成長軌道に乗り、今年1~3月のEC売上高は40%程度の伸び率となるなど出だし好調のようだ。

 一方、外部モールは前期、データ連携を前提に新規出店を加速。「三越・伊勢丹オンラインストア」と「マルイウェブチャネル」「楽天ブランドアベニュー(RBA)」「ストライプデパートメント」「アンドモール」「ロコンド」に出店した。

 とくに勢いがあるのが「RBA」で、ECに慣れているユーザーが多いのに加え、ポイント施策の頻度も高く、テレビCMを始めるなど集客力に圧倒的なパワーがあるという。ポイント10倍キャンペーン時にはプロパー品が伸びる傾向にあり、想定以上にEC売り上げに貢献している。

 「ゾゾタウン」については、常時10%割引となる有料会員サービス「ゾゾアリガトー」の開始以降も品ぞろえは変えていない。三陽商会の顧客とゾゾ会員とは客層が異なるためカニバリが少なく、ゾゾでしかリーチできないユーザーも多いことから、タッチポイントとして重視している。

 三陽商会では、「出店する以上はちゃんと品ぞろえする方がいい。消費者は賢く、セール品はここで買うとか、送料が安いサイトや送料無料ラインも把握していて、買う商品によってサイトを使い分けている」(安藤部長)と指摘。アリガトー割はプロパー品の購入にもつながっているという。

 同社では今後の新規モール出店についても、自社EC比率が一定水準を維持できる状態であればタッチポイントを増やしたい意向だ。(つづく)

 
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