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ヘルスケア表示 拱手の代償④ マルチとの相似

2020年 9月 3日 14:00

成果報酬に潜む罠

 アフィリエイト広告の危うさを露呈させた大阪府警による薬機法違反の摘発。ある関係者は、こう語る。「ビジネスの基本構造がマルチ商法のようだ」と。

 「答えかねる。社員もこの件について詳しく聞いておらず、対応できる人がいない」。

 社長を含め、3人の逮捕者を出したKMウェブコンサルティングは取材依頼にこう述べる。事件発覚後、社に繰り返し電話したがいずれも空鈴、8月31日に初めて繋がった。保釈されたという社長に話を聞くべく、こちらの電話連絡先を伝えたがまだ返信はない。

 業界関係者によれば、逮捕された社長はもともと個人のアフィリエーター。実績と信用を得て、法人化したという。ネット広告の代理店はこうしたケースは多いとされる。

 「KMはASPに法人登録していた。代理店からすれば使い勝手がいい」(関係者)。制作から出稿まで、幅広く請け負う縁の下の力持ちとして評価されていたようだ。

 ただし、ビジネスはあくまで法律の枠内でなければならない。そこを踏み越え、今回、薬機法違反容疑がかけられている訳だ。

 これはアフィリエイト広告というビジネスの構造にも関わる問題といえるだろう。

 アフィリエイトは個人などが広告の代理店となるビジネス。ネット上にさまざまな形で広告をアップし、そこから発生した売り上げに応じ「成果報酬」を受け取る。そのため、「過激表現」に走りやすい面は否定できない。

 さらにアフィリエイトで報酬を得ようとすれば、業種横断を含め、多くの広告を展開して、数をこなす必要がある。制作にあたって、どこまできちんとした業界や製品知識を得ているかもポイントだ。安易に体験談などに走りがちなのも、こうした背景があろう。

 広告制作や展開が「多段階(マルチ)」になっている点も問題だ。

 クライアントが、元請けの代理店にアフィリエイト広告を依頼する。その後、広告制作等は二次、三次へと広がり、それが仮想空間で展開される。実質的に、広告内容と展開は把握できず、単に売り上げと報酬が数字で管理されることになる。

 この構造において、規制が厳しく相当な法的知識が必要なサプリメントの広告が展開されれば、法令違反リスクは高まる。個人やバイトが、サプリメントの広告を簡単につくれる訳がない。これを平然と行っていたこと自体が「危ない橋」(関係者)であろう。

 事情通はさらなる問題も指摘する。ある程度の法知識を持つ一部の悪質なアフィリエーターは、完全に法的にクリーンな広告を一次代理店に見せて安心させ、深夜に「過激な広告」に切り替えて、報酬を荒稼ぎするという。こうなると違法広告の確信犯だ。

 今年初め、興味深い一コマがあった。一月に行われたJADMAなど業界団体が開催した講演会で、アフィリエイトの問題を聞かれた消費者庁の田中誠氏(現‥ヘルスケア表示指導室長)は、特にサプリメントの広告は薬機法、景品表示法、健康増進法など、関連法規が多く、制度も特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品などがあり、それぞれで運用やルールが異なると紹介。毎日、仕事として取り組む行政官でさえ、身につけるのに時間がかかる旨に言及している。「広告チェックを完全に一人で任せられるようになるには、最低でも10年はかかる」。大手企業の担当者はこう打ち明ける。素人が手を出すべきお手軽なビジネスではないのだ。

 実は10年近く前までは、サプリメントの販売は、マルチ商法が大きな売り上げシェアを持っていた。これは、ディストリビューターと呼ばれる販売員が、知り合いに製品を紹介し、売り上げに応じてコミッションを得ていく。誰でも始められるのがポイントだが、報酬やトーク内容をめぐるトラブルも多い。不慣れな個人が多数参加するからだ。

 時代を経て、管理責任は厳しさを増す。「ディストリビューター、アフィリエーターがやったこと」という言い逃れは通用しにくくなってきている。企業や製品のブランドを守る上でも当然のことであろう。(つづく)


 
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