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【免疫解禁 新しい秩序への回廊③】安倍政権のレガシー、制度普及へのエールも

2020年 9月 3日 14:00

 さまざまなファクターで食と薬のグレーソーンだった「免疫」表示。

 今回の解禁理由は、「マクロ」と「ミクロ」の2つで整理されよう。

 ともすれば、現前の事象に捕らわれ、視野狭窄に陥りがちになるが、これまでの経緯は重要である。

 「マクロ」のポイントは「政治主導」の一言に尽きる。これは「第2次安倍政権のレガシー(遺産)」である。

 「健康食品の機能性表示を解禁いたします。」。2013年6月の成長戦略の講演で、安倍晋三総理はこう述べた。日本の総理大臣が、規制省庁から白眼視されていた「健康食品」という言葉を使い、これを規制緩和の俎上に載せると明言した。

 業界はこの時、呆気に取られ、今後に何が起こるのかさえ予想できていなかった。総理の意向を具体化したのが2015年の「機能性表示食品制度」である。この制度があればこそ今回「免疫」の表示が可能となった。

 制度の創設前夜。総理は事業者がより使いやすい制度にするように指示するなど制度への強い思い入れを示したという。関係者は、「研究レビュー」という呼称など、ガイドラインにそれが反映されていると明かす。

 連載の1回目で触れた通り、今回の免疫解禁も今年3月に官邸がとりまとめた「健康・医療戦略」に「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」と盛り込まれ、これが閣議決定されたことが最大のポイントだ。官邸主導の政治案件なのだ。

 後段では「消費者の理解増進のための消費者教育を充実させる」とあり、全体として、機能性表示食品制度への強いエールが送られている。

 安倍総理は今回の辞任の要因となった潰瘍性大腸炎を抱えていることもあり、以前からヘルスケア産業には強い関心があったという。サプリメントについても、2016年2月の予算委員会で、ペット用サプリメントをもらって、昭恵夫人に渡したら間違えてそれを飲んでいたというエピソードを披露し、笑いを誘っている。

 また、2011年1月に出演したラジオ番組「バイオradio」(KISS‐FM)で「潰瘍性大腸炎」がGBF(発芽大麦)で寛解したことを紹介している。このGBFは、厚生労働省許可の「個別評価型病者用食品」で、2000年4月の第一号の取得者はキリンビール。今回、免疫表示で機能性表示食品の第一号と、奇しくも同じだ。

 そして、このラジオ番組の司会を務めていたのが、機能性表示食品制度の発案者とも言える大阪大学の森下竜一教授だ。

 今回免疫表示が新たに公表されたことについて、森下氏は「免疫機能の維持については、健康・医療戦略が策定され、これに盛り込まれ、閣議決定した。その趣旨に沿って今回、その文言が盛り込まれた届出が公表されたことは大変喜ばしいこと。国民の健康の維持増進、健康産業の育成のため、今後も事業者、消費者が活用しやすいよう制度を構築していきたい」とコメントしている。

 社会全体からすれば大きなことではないが、第二次安倍政権が掲げた「規制改革は、アベノミクスの成長戦略の一丁目一番地」は政権の最終盤にも活きていたと言えよう。さらにこれまで官邸の守護神だった菅義偉官房長官が次期総理となれば、レガシーは引き継がれる可能性が高い。

                       ◇

 「マクロ」で「免疫機能の改善等」の導入が決まったとは言え、これを具現化するには、「ミクロ」の部分である法令の調整が必要だ。

 「免疫」を機能性表示食品制度に適合させ、場合によっては、制度の改正を行わねばならない。

 一方で、今回は特にガイドラインの変更等も行わず、障害となりうる薬機法を所管する厚生労働省もすでに「お墨付き」を与えている。

 これはキリンのエビデンスの取り方がガイドラインにうまく適合した内容だったこと
が影響している。そのポイントは「健常者」だ。(つづく)


 
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