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海外の展示会で協業先開拓へ【ZOZO NEXTの金山社長に聞く テクノロジーの可能性は?㊦】 デジタル上の自己表現も手助け

2022年 3月 3日 13:00

 前号に引き続きZOZO NEXT(ゾゾネクスト)の金山裕樹社長(=顔写真)に、研究開発の現状やテクノロジーの可能性などについて聞いた。

                      ◇

 ――バーチャルヒューマンとバーチャルクロージングは両軸でビジネス展開を考えているのか。

 「両軸で考えているし、ふたつを組み合わせることで成り立つものもある。バーチャルヒューマンについてはAIや3Dを活用したバーチャルファッションプロジェクトで先行している」

 ――バーチャルヒューマンは通販サイトにも活用できる。

 「通販サイトでファッションアイテムを閲覧するとき、さまざまなタイプのユーザーがいるのに、皆同じモデルが着用している画像を見ながら、自分に似合うかを想像して買うかどうか悩んでいる。本来はユーザー一人ひとりに刺さりやすいモデルやポージングがあるはず。ただ、実現するにはたくさんのモデルを起用して撮影しなければならず、非効率でコストもかかる」

 「現在のCGの技術は、人の目では本物の人かどうか判断できないレベルにきている。CGで各ユーザーに合った着用モデルを生成することができればいい。そのためにもバーチャルヒューマンの技術は必要になる」


 ――実現するのに時間がかかりそうか。

 「バーチャルヒューマンよりもバーチャルクロージングの方に時間がかかる。服の方がリアルな画像を自由自在に見せるためのコストがかかる。服は設計段階でデジタルになっていないことが多いため、アナログのものをデジタルにする工程が必要だ。デジタルの設計図があって、そこからアナログの服も作るという風になればバーチャルクロージングも作りやすくなる」

 ――3月に米国で開催されるテクノロジーなどの祭典「SXSW2022」に計測テクノロジーやスマートテキスタイル、バーチャルヒューマンなどを出展する予定だ。

 「ゾゾグループは海外では知名度がほとんどない。グループが持つテクノロジーは海外でも活用できるため、展示会を通じて知ってもらう。計測技術に関しては、企業向け、消費者向けともに海外のニーズは強いと見ている。体型の幅が日本よりも大きく、計測技術が生きてくる。テクノロジー面での協業先も探す。ゾゾグループを知ってもらい、何かしらのプロジェクトを進められたらいい」

 ――今後のアパレル市場やテクノロジーの可能性をどう見る。

 「1日24時間の中で人が自分を投影している場所が、5年前と比べてデジタル空間にあることが圧倒的に増えている。コロナ禍で仕事までオンライン上になっている。人が見ているところ、視線や注目が集まっているところには必ずビジネスが生まれる。アパレルが持っている自己表現力をデジタル上で課金して提供していく時代が来ている」

 「今はそれがオンラインゲームで起きている。『フォートナイト』や『エーペックスレジェンズ』などは基本プレイ無料で、課金することで見た目が変わる。ファッションとしてデジタルアイテムを購入し、他のプレイヤーからのフィードバックを通じて自己を認識するというケースがもっと増える」


 ――そういう市場も狙っていくのか。

 「当社としてもビジネスチャンスは常に探っている。デジタル上でのファッション表現を助けるようなもののマーケットは今後10倍、100倍になっていくはずだ。そういうマーケットにゾゾグループとしてどうリーチしていくか、ビジネスに結びつけるかは重要課題のひとつで、研究とトライ&エラーの両面でかなり真剣に取り組んでいかないといけない。私自身の考える時間の8割を占めている」

 ――それだけのポテンシャルがある。

 「可処分所得や時間も含めてアパレル市場の競合となるのはデジタル領域のはず。そこで、ゾゾグループの強みである、見られたい自分、なりたい自分に挑戦することで結果的に笑顔になるということを、デジタル空間でも手助けしていきたい。それを実現するには何をどの順番で取り組むべきかを考えている。バーチャルヒューマンの取り組みも可能性を感じているが、もっと直接的にお客様に対して提供できるサービスもあるはずだ」

 ――ゾゾネクストとしては何に人とコストを投入しているのか。

 「マトリックス(R&D部門)とZOZO研究所、海外子会社でちょうど3分の1ずつくらいで、基礎研究や研究に類することが約6割、実践やトライアルが4割程度だ。成果を見ながらその辺りの配分ややり方は修正していく。業績面ではゾゾが元気なので、当社としては常に3年後、5年後のマーケットを想像しながら仕事をしていきたい」

 ――前澤前社長が退いた後のゾゾを客観的にどう見ている。

 「奇策がなくなって会社としての楽しさは減ったというのが正直なところだ。ハラハラ感やスリリングな感じはなくなって、本当に安定している。その分、未来のファッションを描くことは私のミッションだと思っている」

 「ゾゾの良いところは服をネットで買うとか、ツケ払いするとか、世の中に新しい価値や新しい物の見方を提供してきたことにあると思う。ゾゾに対してワクワクし、期待感をもってくれるからこそ仲間になってくれて、買い物をしてくれたり、ビジネスパートナーになってくれたりする部分がゾゾの強みだ。ふと気づいたら、つまらないゾゾになっているというのが一番怖い」(おわり)

 
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