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DIY 関係者会議が初会合、楽天が主催でEC拡大など課題議論

2022年10月27日 11:00

 楽天グループは10月20日、同社本社で「DIYサミット」を開催した。小売り企業やメーカー、ベンダーなど、ホームセンター(DIY)業界の関連企業や有識者、楽天の3者で、ECを中心としたテーマで議論するというもので、1年間で計4回の会合を開催する予定。同社が近年進めている、仮想モール「楽天市場」における「商品ジャンルにあわせた戦略の強化」を目的としたもので、業界の課題を解決することでEC化率の低いDIY市場の底上げを目指す。

 






 同社の小野由衣上級執行役員(=写真)は「これまでの楽天市場は全ジャンル同じような買い物プロセスとしてきたが、今後はもっと各ジャンルを深掘りしていく方針だ。ジャンルに尖りを持たせて、ユーザーフレンドリーなモールを作っていくために、業界のさまざまな企業や有識者など意見を聞くようにという指示が上からあった」と、DIYサミット開催の背景を説明。さらに「私たちとしてもDIY業界の知見を深めるとともに、楽天市場の今後25年、50年を一緒に作っていきたい」とした。

 また、同社マーケットプレイス事業ECコンサルティング部ホームライフ事業課の大原麻奈実シニアマネージャーは「DIY市場は他ジャンルと比べてもEC化率が圧倒的に低く、3%程度とみられる。ユーザーの購買行動や買い物体験が多様化していく中で、EC化率を向上させたいという問題意識は業界全体が抱えているが、業界の人間が顔を突き合わせて話し合う機会はあまりなかった。楽天市場に出店していない企業も含め、小売りやメーカーなど、各業態の視点から意見を述べてもらい、議論することでECの可能性をもっと広げていきたい」と、同社としてのDIYサミットに対する期待感を述べた。

 楽天市場におけるDIYジャンルの大手出店者である、大都の山田岳人代表取締役は「国内DIY市場の規模は4兆円弱で、20年間ずっと横ばいだ。4兆円の売り上げを奪い合うだけでは未来がないので、これを5兆円にするにはどうすればいいか、ということを議論していきたい。住宅政策が問題となっている中で、中古住宅の再生・販売に寄与できるDIY業界は国の課題を解決できる。また、DIYを教育に取り入れることも提言していきたい」と、議論の方向性を示した。

 課題のEC拡大については「アメリカの大手ホームセンターであるホーム・デポのEC売り上げのうち、50%は『クリック&コレクト』と呼ばれる店舗引き取りだ。これをなぜ日本でできないのか、需要をどうすれば喚起できるのかという議論をしていく」と述べた。

 第1回は「国内DIY市場の課題と海外成功事例から見た課題検討」をテーマに議論した。グローバル・ホーム・インプルーブメント・ネットワークアジア事務所代表の後藤章夫氏が、海外の事例を紹介。ホーム・デポのEC売上高は3兆円に達しており、全社売上高からみたEC化率は13・7%にのぼる。後藤氏は「ホームセンターが住宅産業の一分野だとすれば、住宅に関する市場の一角を狙わないと、客単価も1店あたりの坪単価も上がらない。ホーム・デポはITへの投資とEC強化を進め、プロ(事業者)の信頼を勝ち取ることで、店を基軸にオムニチャネルを築き上げた」と、ホーム・デポのEC売上高が大きく伸びた理由を説明した。

 DIYサミットに参加した、コーナン商事の村上文彦取締役上級執行役員は「世界の動きを知ることができたので有意義だった。当社では2025年のEC化率5・5%を目標としているが、まだ遠い数字。社内では『ネットショップでの販売のみがEC』という認識だが、ネットを介した店舗受け取りなどもECということを浸透させたい。リアルとネットの融合という意味では、コーナンファンの拡大を加速させていく」と、今後のEC強化への意欲を語った。

 また、他の参加者からは「今回のサミット参加を通じて、DIY・ホームセンター業界が抱える社会的な課題の解決に役立つ取り組みを実現できるのでは、と考えるきっかけとなった。また『空き家問題』の解決に対して、何か対策ができるのではと思った」(ホームセンターバロー)、「海外のホームセンターのECへの移行状況が聞けた点、参加したホームセンターのECへの考え方が聞けた点がとても良かった」(工機ホールディングスジャパン)などといった感想が聞かれた。


 
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