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競争環境が激化【市場考察 オーラルケア市場】 広告効率悪化、LTV重視へ

2023年 6月 1日 12:00

 オーラルケアEC市場の競争環境が激化している。参入増加を受け、各社ターゲット層のすそ野を広げる。一方、広告単価の高騰で、LTVの向上が課題として浮上している。

 市場をけん引するのは、ソーシャルテックだ。口臭ケアサプリ、ホワイトニング歯磨き、マウスウォッシュの3品からなる「ブレスマイル」シリーズを展開。シリーズ売上高は、22年3月期に52億6500万円、前期(23年3月期)は41億6700万円で着地した。

 主力の「ブレスマイルウォッシュ」単体の売上高は、22年3月期に34億8000万円、前期は、横ばいの34億2000万円で推移する。

 サン・クラルテ製薬は他社に先駆け、マウスウォッシュ「ゴッソトリノ」で市場を切り開いた。配合成分が口腔内のたんぱく質と結びつき、”目に見える実感”がある商品設計は、同社が手掛けた。

 22年4月期の売上高は約12億円(本紙推計)。ただ、類似商品の増加から継続率が課題になっている。前期(23年4月期)は、横ばいの11~12億円(同)で着地したとみられる。

 このほか、マウスウォッシュでは、フロムココロ(ブランド名・デイリーワン、以下同)、フューメント(ノッシュ)、ハハハラボ(キラハクレンズ)、グロリアス製薬(キヨラブレス)feileB(デンターキンデル)がしのぎを削る。

 ホワイトニング訴求の薬用歯磨きを中心に展開する企業は、トラストライン(ミカホワイト)、マーキュリー(オーデント)がある。

 有力プレーヤーも参入する。ファーマフーズーマフーズは、今期(23年7月期)から「DRcula(キュラ)」シリーズの展開を本格化。ホワイトニング訴求の薬用歯磨ジェルを中心にマウスウォッシュ、サプリを展開する。

 参入背景には、定期購入をめぐり同社の相談件数が増加するなど特定商取引法をはじめ表示関連法の規制を受け、他商品の広告投資に制約が生じている影響も受けた可能性がある。主力育毛剤も今期は減収で推移しており、新たなブランドの育成を図っている。

 上期を終え、シリーズ売上高は8億4900万円と好調に推移する。ホワイトニングジェルが大半を占め、マウスウォッシュは、1~2割程度(本紙推計)とみられる。

 ウェブの新規獲得は、概ねニュースメディアやSNSのタイムラインに表示されるインフィード広告(記事広告)、SNSやユーチューブのショート動画広告に分かれる。前者は、商品を理解しLTVの高い良質な顧客が獲得できるメリットがある。後者は、幅広い客層にリーチできる反面、理解が浅く、オファー訴求への反応などLTVが低い特徴がある。競争激化からショート動画広告の活用も増えている。代理店筋によると、広告露出は、「キュラ、ブレスマイル、オーデント、デイリーワンが多い」。一方で、広告単価は高騰しており、販売事業者からは、「かつては同梱物を入れなくても継続してくれたが、ショート動画広告で顧客獲得を維持しなければならない状況。費用対効果は悪化している」、「ショート動画広告は定期条件などオファー内容をよく確認せず購入に至るケースも多く、定期トラブルも増えている」との声も聞かれる。別商品だが、ハハハラボは22年3月以降、定期購入の表示で適格消費者団体から指摘も受けている(継続中)。

 変化する客層への対応が必要になり、複数社がLTVを課題にあげる。


継続率の課題顕在化、差別化やクロスセル強化


 オーラルケアEC市場は、参入の増加から広告単価が応答している。多くの企業がLTVを重視した戦略に舵を切る。

 市場全体は、政府が毎年の歯科検診を義務付ける「国民皆歯科健診」を打ち出したことで注目された。消費者の歯の健康に対する意識の高まり、コロナ禍のマスク着用を受けた口臭ケアの関心層の増加も追い風になった。有望市場として企業の参入が増えている。

 EC市場は、表示規制強化を受け、有力アフィリエイターの多くが「明確な効果」を訴求でき、広告審査を通過しやすい医薬部外品関連の案件に流れたことで活性化した。

 当初はサン・クラルテ製薬の「ゴッソトリノ」がけん引。商品は、配合成分が口腔内でたんぱく質を結びつき、”目に見える実感”があることを特徴にする(=画像)。ただ、後発の参入企業の多くが同じOEM企業に商品設計や製造を委託したことで、差別化が図りにくくなっている。製造のキャパシティも市場拡大の障害になった。

 最近では、「シワ改善」など、他の部外品案件も盛り上がりをみせる。「ASPがオーラルケア関連の案件を扱うアフィリエイターを集めにくくなっている。企業は、手っ取り早く新規獲得できるショート動画広告などを活用するが、顧客の質がよいとは限らない。商品への理解が浅く、オファーのみで流入している顧客もいるため、継続が課題になっている」(オーラルケア通販事業者)という。

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 ソーシャルテックは、昨年9月、マウスウォッシュ「ブレスマイルウォッシュ」をリニューアルした。ホワイトニング訴求による差別化を狙い、「タバコのヤニなどを溶解して除去する」と表示できる有効成分「ポリエチレングリコール」を新たに配合。有効成分を2から3に増やした。

 ただ、ホワイトニング訴求は、部外品承認を得なくても「ブラッシングによる」と表示することで一定程度可能であり、思ったように差別化を打ち出せていない。顧客の約6割を女性が占めることから、クロスセル提案を強化するシリーズの歯磨き粉は、女性にも親しみやすいデザインに変えた。顧客コミュニケーションの改善や、顧客セグメント分析を通じたCRMも強化。今期(24年3月期)は、シリーズで38億円の売り上げを見込む。

 サン・クラルテ製薬は昨年10月、クロスセル商品として口臭ケアを目的にしたタブレットタイプの「Uruoiki(ウルオイキ)」を発売。ドライマウス対策、口臭ケアで訴求し、マウスウォッシュとの併用を提案する。

 ECモールの活用も強化。モール内のセールも積極的に活用しており、「継続率に徐々に効果がでている」(同社)とする。双方向のコミュニケーションを意識したCRMの構築を進め、今期は(24年4月期)は「ゴッソトリノ」単体で15億円の売り上げを目指す。

 このほか、オーラルケアの広告案件を手掛ける代理店によると、「ノッシュ」を展開するFUMENTは、ユーチューバーのてんちむのイメージキャラクター起用で、「新規獲得が回復傾向にある」という。

 各社一様に初回割引価格による展開など価格訴求が目立つ。アフィリエイターの獲得効率を意識し、魅力的なオファー提案で競合案件に移ることを防ぐ。一方、これにより低価格競争に陥り、広告単価も上昇している。展開事業者からは、「今後は、オフライン広告の併用、商品理解を意識した記事広告、SEO対策で堅実に顧客獲得を進めるところが増えるのでは」、「効率が合わず広告を休止する企業も出てくると思う」などの見方が聞かれる。


 
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