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中国向け通販のキーマンに聞く・SBIベリトランス 沖田貴史代表取締役 「関心増も意識は保守的」

2010年10月29日 19:33

052.jpg決済代行事業のSBIベリトランスでは、昨年から日本企業が参加する中国向け仮想モール「バイジェイドットコム」を運営している。これまではヨドバシカメラやコメ兵といった大手企業が中心だったが、今年春から間口を広げたことで、売上規模のあまり大きくない企業も増えてきている。「出店企業はバイジェイをテストマーケティングの場に活用してほしい」と語る同社の沖田貴史社長に、今後の事業展開を聞いた。 (聞き手は本紙記者・川西智之)

――サイトの現状について。
 「出店企業数は30社程度だ。これまでは来日した中国人が銀聯カードを使うことが多い、実店舗を持つ大手企業が中心だったが、今年春から間口を広げたことで、若い女性に人気のファッションブランド「アナップ」を展開するANAPや、地方の特産品を販売する会社など、規模のあまり大きくない企業も増えてきた。すでに、20社ほどが出店に合意しており、早期に50社に到達する見込みだ」

 「サイトのページビューは、キャンペーンを実施するときは月間100万に達することもある。会員数は約15万人。取扱高は公表していない」

――初期費用と月額料金が無料のプランも利用した。
 「当社の決済サービスを利用する顧客が対象だが、通常は売上高の5%を徴収するところを7%としたほか、やや機能を絞った簡易プランだ」

――どんな商品が売れているのか。
 「ベビー用品の需要が高いようだ。特に人気の粉ミルクは口蹄疫問題で輸入禁止となっていたが、最近解除されたことでまた売れている」

 「ネットユーザーは若年層が多く、価格には敏感だ。出店企業の中には『店舗では高価な商品を買う顧客が多いのだから、高い値付けにしたい』というところもあり試してみたが、やはり全然売れなかった。また、とにかく納期に関する問い合わせが多い。早く届けば届くほどいいという感覚があるようだ」

――モールの知名度を上げるための施策は。
 「中国銀聯が会員向けに発行している会報誌に特集を掲載してもらったり、新聞広告を出してもらったりしている。また、最近はくちコミによるリピーターも増えている。今後はテレビも有効に活用していきたい」

――黒字化の見込みは立っているのか。
 「バイジェイのみで利益を出そうとは考えていない。仮想モールはゴールではなくファーストステップであり、出店企業にはあくまでテストマーケティングの場として活用してもらいたい。今後、独自サイトの構築や現地法人での販売まで発展した際に、決済などの面で当社が支援していくわけだ。来日中国人観光客に向けた情報サイト『ジェイジェストリート』など、中国関連事業全体で2012年3月期にはトントンにしたいと考えている。また、今後は中国以外のアジア向けサービスも手掛けたい」

――7月に海外向けモールの運営を手掛けるナビバードと提携した。狙いは。
 「ナビバードは海外での販売実績があるため、商品発送やサイトの翻訳など一部を委託している。今後は自社が持つアジアの会員向けに仮想モールを始めたい事業者に対し、サイトの運用や物流などを共同で販売していく方針だ」

――通販企業の中国向けネット販売に対する意識は変わってきたか。
 「開設当初に比べると関心は格段に高まっているが、保守的な意識はあまり変わっていないのではないか。担当者に意欲があっても『前例がない』『同業他社が展開していない』などの理由で最終的に企画が通らないことが多いからだ。ユニクロなどの著名企業を別にすれば、日本のネット販売企業における成功事例が伝わっていないのも、企業が躊躇(ちゅうちょ)する要因となっているのではないか。ネット販売黎明期に似た状況だと感じている」

――中国の通関手続きが厳しくなっているが、影響はあるか。
 「顧客への配送に遅延はなく、大きな障害は起きていないようだ」

――楽天やヤフーなど、中国向け仮想モールを展開する企業が増えている。
 「競合を過剰に意識することはない。今はマーケットを作るフェーズだと考えている。同じようなサービスが出てくるのは市場拡大という面で良いことではないか」
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