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「米企業の日本参入容易に」【両社の責任者に聞く 楽天・ショッピファイ提携の狙いは?①】 楽天市場ユーザーにリーチ

2020年 5月21日 11:05

  楽天とカナダ発の通販サイトプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」を運営するショッピファイ(本社・カナダオリエンタリオ州オタワ、トビアス・リュトケCEO)が、ショッピファイを利用するアメリカと日本のネットショップを対象に、ショッピファイの管理画面を経由して、楽天の運営する仮想モール「楽天市場」の店舗運営を可能にするサービスの提供を開始した。楽天海外営業戦略部シニアマネージャーの藤屋俊介氏(写真㊧)と、ショッピファイ・ジャパンのカントリーマネージャー、マーク・ワング氏(写真(㊨))に提携の狙いや今後の展開を聞いた。

  ――両社が提携した経緯は。

 ワング「ショッピファイが日本に進出したのは2年ほど前のことだ。すでに利用店舗はかなりあったが、これから成長軌道に乗ろうとしているところだった。ショッピファイの機能の一つに『どんなチャネルでも販売できる』というオムニチャネル関連があるが、楽天市場のようなマーケットプレイスもその一つだ。日本においては楽天市場が最上位のマーケットプレイスとなる。また、当社のグローバルにおける潜在的な力を理解してもらえる企業と組みたいと考えていた。楽天は楽天市場をグローバルで展開しており、クロスボーダーで日本市場で販売したいという事業者へのサポートもしていた。そういった意味で、当社やショッピファイの利用企業受け入れる素地があったと感じる」

 藤屋「マークさんには2年ほど前に初めてお会いしたが、その際に『楽天との協業に興味がある』と言っていただいた。特に当社の決済周りに注目していたようで、そこからディスカッションを開始した。楽天市場としては、これまで扱っていなかった海外ブランドを取り扱いたいと考えて動いていた。2017年や18年は、日本ではショッピファイの知名度は低かったものの、北米を中心としてD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)という形で小売りをするブランドが増えていた。こうしたブランドが日本の楽天市場を通じて、簡単に日本の消費者に販売するスキームが整えられれば、と考えるようになった。楽天市場のパワフルな面と、ショッピファイのD2Cブランドをかけ合わせることでシナジーを最大化できると思っているし、両社の中長期的なパートナーシップを考えると、まずは一番強い部分で組むのが重要だ」

 「日本はネット販売の規模は中国・アメリカ・イギリスに次ぐ世界4番目であり、進出したいブランドはたくさんある。とはいえ、まだまだ日本に進出できなかったり、日本語のサイトを作ってもなかなか売れなかったりという企業は多い。日本人はコンサバティブなところがあるので、馴染みのある楽天市場で海外の商品が買えるというのは非常に大きいのではないか。昨年7月に契約を締結して開発に着手した」

 ――ショッピファイではクロスボーダーECへの取り組みはしてきたのか。

 ワング「もちろん、クロスボーダーECはショッピファイにとって重要なものであり、複数言語への対応、関税の計算、グローバルでの出荷・物流連携などの機能を設けてきたが、販売チャネルという意味では、今回の楽天との取り組みが最も野心的で、初となる。アメリカには100万を超えるショッピファイのマーチャントがいるが、多くのブランドはすでに日本でも販売している。ただ、言語の問題があり、多くの消費者にリーチできてないという問題もある。楽天との提携により、シンプルな形で多くの楽天市場ユーザーがアクセスできるようになるというのが重要なポイントだ」

 ――ショッピファイの利用企業における日本市場への意欲はどうか。

 ワング「さまざまな規模のマーチャントが利用しているが、日本で販売している・したい理由もそれぞれだ。大手D2Cブランドはすでに日本で売っているが、楽天を通じて売ることで、日本における顧客基盤を拡大できる。一方、まだ日本に進出していないマーチャントにとっては、新規市場を開拓できる機会になる。なぜ楽天との提携が重要かというと、日本のネット販売市場は非常に大きい。そして、平均的なアメリカのマーチャントにとって、日本市場はなかなか参入が難しい。それは言語のほか、文化の違い、マーケティング、カスタマーサービスといったさまざまな問題がある」

 「しかし、今回の連携によってこのプロセスがシンプルになる。ショッピファイを通じて、RMS(店舗管理ツール)のアカウントを英語で管理できるようになるし、注文処理などもこれまでのオペレーションをそのまま変えずに行うことができる。ショッピファイと楽天との間で深い連携が生まれたことにより、何十万というマーチャントが売り上げを伸ばし、顧客基盤を拡大する非常に大きなチャンスとなったわけだ」

 ――米国事業者間の楽天市場の認知度はどうか。

 ワング「『Rakuten』というブランド自体は非常に認知されている。一方で、日本の楽天市場はどうかというと、Rakutenブランドほどは認知されてない。楽天という企業が日本で大きな存在だということは知られているが、実際にマーチャントが楽天市場でどのように商品を登録し、販売できるかという部分は知られていない。今回のチャネル連携により、その部分が解決されればいいと思っている」 (つづく)
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