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地域支える中核企業【山田養蜂場 措置命令の背景⑦】 地方と中央省庁、執行力に格差

2022年12月15日 13:02

 山田養蜂場は、少なくとも過去2度に渡り景品表示法リスクに見舞われながら危機を乗り越えてきた。背景に、消費者庁による過去の調査に問題があった可能性に加え、地方と中央省庁の執行力の差も指摘される。

 山田養蜂場は、岡山県北部の山間、豊かな自然に囲まれた苫田郡鏡野町にある。町の主な産業は農林業。近年は、就農者の高齢化や減少が課題となっており、観光資源を活かし、トレッキングコースの整備や地域特産品の販売など交流人口の増加を図っている。

 この地に本社を置く山田養蜂場は、14のグループ会社を持ち、グループ売上高は500億円を超える。二代目の山田英生社長がテレマーケティングシステムの導入など通販のインフラを整備し、全国販売で事業を飛躍的に成長させた。地域経済を支える県内有数の企業として知られる。

 地域貢献にも積極的に取り組む。県内外の小学校、養護学校等への図書寄贈、従業員は毎月、児童養護施設を訪問し、子供たちに誕生日プレゼントを届ける。地域イベントへの協賛、福祉車両の寄贈、カンボジアでの小中学校校舎の寄贈、自社農園・養蜂場における体験学習、植樹活動などさまざまな活動に取り組む。「『自然と人間社会との調和』を事業の根幹に置き、全国的にみても地域貢献、災害時の支援等の活動にも真摯に取り組んでいる。そうした会社の姿勢は共感できる部分が多かった」(元社員)と話す。

 最近では、同社が所蔵するミレーやモネなど約300点の作品を本社内ギャラリーで無料公開するなど、地域活性化に向けた取り組みを行う。

 雇用創出にも貢献している。「健康食品、化粧品、養蜂と就職の入口は多く、製造から販売まで幅広く経験できる機会がある。県内の就職サイトにおける評価も高かった」(同)。山田養蜂場によると、県内大学出身者の割合は7%ほど。岡山経済を支える中核企業の一つとして県行政と密接な関係を築き、地域社会に根付く。

                                                                  ◇

 社会貢献活動に積極的に取り組む山田養蜂場ほどではないにしろ、地方に本社を置く企業にはこうした構図がみられることが少なくない。それだけに、景表法の執行など法運用の面では難しさがある。

 別件になるが、最近では中国産のアサリを熊本県産と偽っていた産地偽装問題が全国的な広がりをみせた。全国で2400トン販売されたアサリの約8割が熊本県産と表示していたが、実際は35トンしか熊本県産はなかった。

 本来、全国のスーパーを対象に景表法による執行が可能な案件だろう。ただ、熊本県が一部事業者に食品表示法に基づく是正指示を行うにとどまった。現在は、熊本県がアサリの出荷停止や風評被害を受けて収入が減少した漁業者に対する金融支援を行うなど、主要産業の維持に事業者と連携して取り組んでいる。

 執行の格差は、数字にも表れている。景表法は14年、地方に措置命令権限が委譲された。ただ、執行件数は消費者庁が年間40件ほどで推移しているのに対し、地方自治体は19年度の15件をピークに20年度は8件、21年度は4件と減っている。山田養蜂場が本社を置く岡山県もここ数年で1件しかない。景表法担当者が他の業務と兼務するなど調査・執行の人的資源が限られることに加え、地域経済との関係から地場企業への対応の難しさも背景にある。(つづく)

 
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