深刻化する労働人口の減少と各種コストの高騰は、現在のコンタクトセンター運営において最大の難所と言える。こうした経営課題を克服する鍵として、今や不可欠な存在となったのが、日々進化を続けるAIだ。自動応答に止まらず、オペレーター業務のリアルタイム支援から人材育成のサポートまで、その役割は劇的に広がりつつある。業界をけん引する注目各社に、AI活用の現在地と今後の市場展望について聞いた。
〈ビーウィズ〉
育成期間の短縮に寄与
現場を理解したAI運用が鍵に
AI・DXソリューション部部長
林 慧 氏
キャリア開発部部長
古川 真澄 氏
執行役員 CDO IT基盤部長
伊東 雅彦 氏
——人材確保の状況について。
古川「ここ数年という話ではなく以前から難しい状況。そのため、採用する対象者を増やす考えになり、シフトの柔軟性を持たせている。10年前まではあまり対象となっていなかったようなシニア世代まで広く採用している」
伊東「これまでは採用媒体を打って応募を待つというスタイルだったが、今はリレーションを強化していく採用アプローチに変わっている。友人紹介や人材の登録、スポットワークの活用などを強化したり、仕事検索でもAI検索にかかりやすいようなAIO対策を進めている。
前中計で打ち出していたエイジフリー、エリアフリー、シフトフリーは継続していく。特にエリアフリーについては当社の拠点が無いところでも完全リモートで働いてもらうような仕組みでも行っている」
——シニア人材を含め、新人の業務をAIでサポートするような仕組みは。
古川「顧客との電話応対の中で、次にこれを回答した方が良いという案を画面に出してくれる専用のAIによるFAQ機能『シークアシスト』がある。導入研修は業務の難易度によって1週間で終わるものもあれば、1カ月かかるものもある。研修が長いほど、期間中に自信を失って離脱してしまうケースも出てくる。そのため導入研修は基本的な教育に絞って、あとは現場でシークアシストを使う前提で仕事を始めるということはある。研修期間中の離脱率を抑えるという副次的な効果がある」
——シニア人材の業務習熟度での課題は。
古川「人によって分かれるが、必ずしもシニアだからシステムを使いこなせないということはない。習得までに少し時間がかかる傾向はあるが、結局、現場のフォローによって使いこなせていく実感がある。会話自体はシニアの皆さん得意なので、そういった意味では一長一短なのでは。
実は20代よりも50代の方が後処理にかける時間が短いという社内データもある。若い人はフリック入力が早い一方、タイピングは年配の方が得意ということもある。今はAIによる(後処理作業での)要約機能などもかなり浸透したのでギャップを埋めることができている」
——AIの導入で、育成メニューも時代と共に変化していくか。
林「即時に大きく変わっていくかというとそうではないが、システムの使い方などの部分は今後増える可能性がある。例えばオペレーターのロープレに関して、これまで研修期間の中でやっていたものを、今は業務の隙間時間を活用しながら、AIによる壁打ちをしている。できる環境を提供して、自主的に取り組んでもらうトレーニングのような形。
自分たちの知識アップを図るために使っているプロジェクトもある。テキストを渡してその内容に沿った回答をしてもらうというもので、その評価についてもAIがすべて行うことができる」
伊東「SVなど管理者が忙しいこともあり、これまでは限られた時間の中で中々(評価作業が)できなかった。自主的に行っているオペレーターもいたが、今はインタラクティブにできるようになったという意味では、生成AIの使い道として非常に良いと思う。
関連して、実際の顧客との応対内容の評価もAIで自動化している。これまで人の手で何日もかけていたモニタリング作業自体が、自動的にフィードバックを受けられるようになったため非常に有効だと見ている」
——今後、管理者側が身に付けるべきスキルの変化や、AI活用の注意点について。
伊東「生成AIを業務に活かす一番の部分としては、まず顧客サポートの幅ができたり、正確性や生産性の向上が図れるところだと思う。そのため、AIがきちんと回答を導き出せるように準備をしていくことが求められていく。
AIは、聞けばすべてを回答してくれる夢のような技術ではない。やはり、自分たちが持っている情報を精度高くAIが読みやすい形で整理して提供する必要がある。それを管理するのがベテランのオペレーターであったり、管理者に求められるスキルになる。いかに自分たちのコンタクトセンターは正確な情報を返すことができて、顧客にとって満足な結果を得られる内容を提示できるか。そうしたナレッジマネジメントはこれから特に鍛え上げていくところ」
——今後の市場展望について。
伊東「異業種も含めた新規事業者がBPOサービスに参入してきており、我々の競争相手も変わっていくと見ている。そのため、市場規模自体は微増で推移するが、戦うプレイヤーが変わっていく中では、個性を打ち出していかないと勝てない世界観になってくるだろう。
そうした意味では(クラウドPBXの)『オムニアリンク』などは現場から磨き上げて一定の成長を続けているもの。AIエージェントに関しても、やはり現場のオペレーションを分かっているがゆえに痒いところまで手が届くというアプローチで提供している。応対の部分での差別化だけではなく、その先の裏側においてAIでできるところは何かを本気で考えられるのは、実際のオペレーションが理解できていないと難しい。そうしたノウハウを通じて差別化ができると思う」
〈かんでんCSフォーラム〉
「DXキーマン」を選定
社内全体で人材の底上げ図る
経営本部 経営管理部長兼
営業本部 ソリューション事業部
デジタルイノベーショングループ部長
平田 和義 氏
——25年度の業績について。
「売り上げは前年比で増収となった。親会社である電力・エネルギー関連の業務が伸長し、通信系も好調に推移した。通販関係では健康食品など既存クライアントからの案件が伸びた。また、昨今の物価高や賃上げの流れもあり、クライアント企業も価格改定に応じてくれているところがあるのでそこも寄与している」
——昨今の人手の確保や育成での課題について。
「現場で予定していた人員を充足できなかったという話も聞くが、既存の人員をシフトすることで上手く回すことができている」
——人材関連の分野においてAIを活用していることは。
「採用活動や育成の場面での活用が始まっている。タレントマネジメント機能の基盤を作ったり、eラーニングや動画での研修活動はもちろん、応対品質評価の自動化、ボットでの代替によるロールプレイングの反復練習などもこれからAIを本格的に導入していくところ。従来のSVによるオペレーターとの面談も、事前にAIでヒアリングを自動化することで一連の作業を効率化していく」
——AIの活用が進むことで、社員に求められるスキルの変化などは。
「特にSVにはこれまでのようなヒューマンリソースマネジメントに長けたスキルだけでなく、AI関連のアプリケーションを使いこなせることなども求められてくる。そのためにリスキリングをしなければならない。
今まさに全社的なDXの対応強化に向けた組織風土の改革に取り組んでいるところ。例えば資格取得の合格祝金制度を大幅に見直していて、DX関連の資格を取得した場合の評価を見直している。全社員に対してオンライン動画学習に関する受講費用の補助を行っているほか、社内で選定した『DXキーマン』が現在38人いる。キーマンにはプロジェクトマネジメント研修やデータドリブン研修などを受講してもらっている。DX人材を底上げすることを目的に、今期から始まった制度。キーマンの下にはさらにSVクラスの管理者人材が数百人はいるので、これからは自主的にDXに取り組まないといけないという会社のメッセージを広く伝えている」
——DX人材の推進を制度化することのメリットとは。
「当社全体のDX系のITリテラシーが高まることで、日々、自動化やAI化が進むクライアントのシステムを使いこなすことができるようになる。我々はBPO事業者でもあるわけで、DX人材が豊富にいることで受けられる仕事もたくさんあると思う。
もちろん、自動音声などではなくきちんと人で対応したいと考えるケースもある。自動化できる範囲は広がっているが、人の能力も高いことがまずは大前提になるだろう。
加えて、個人情報保護、サイバーセキュリティ対策もやるべきことはソフト面、ハード面ともに最大限取り組んでいる。DXを使う以上は切り離せない問題であり、情報漏えいのリスク管理として、安心できる材料になると思う」
——そのほか、近年注力しているサービスは。
「引き続き、クラウドPBXの『Genesys Cloud(ジェネシスクラウド)』の販売を強化している。例えば、デジタル領域の機能としてチャットボットやボイスボットがあるが、そこに有人音声を結合させてシームレスなオムニチャネル対応が可能となっている。さらに、生成AIのバーチャルエージェントやオペレーター・SVを支援するコパイロットなども組み合わせることで、コンタクトセンターの機能を最大限に引き出すことができる。
オムニチャネル対応したいと要望するクライアントは多い。色々な機能をつぎはぎ的に入れるのではなく、ジェネシスクラウドを導入すればこれ一つで対応できる。AIによるオペレーターの応対品質評価の機能もあるため、幅広い業務をカバーできる」
——今後の展望について。
「おそらく業界全体で同じ動きを取っていくとは思うが、そこでいかに当社が先駆けていけるか。デジタルイノベーションとしてAI関連のビジネスを始めてから11年目に入った。先行してスタートした強みを活かしていきたい」
〈トランスコスモス〉
AIで育成習熟度が向上
顧客への提案領域の拡張も加速
常務執行役員
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
総括副責任者兼
デジタルプロデュ—ス事業本部 副本部長
金田 浩充 氏
——25年度の業績を振り返って。
「業界全体として中々厳しくなってはいるが、当社は昨対で超えることができた。早め早めにAI対応をしているので収益率は上がっている状態。コスト効率を追求されるクライアントが多く、私たちもそれに応える形でDXを組み合わせて生産効率の向上や入電自体を抑える取り組みが進んでいる。今は自己解決を促す形が多く、最近では音声AIエージェントで精度の高い仕組みもある」
——人材の採用に関しての苦労や対策は。
「基本的に今は採用市況が厳しい。人を集めるのに苦労はあるが、1年前と比べても非常に精度の高いAIができたことで、深夜帯やインフォマーシャル直後の受電などで音声AIが対応できる場面が出てきた。
具体的には当社とモビルスとの合弁会社であるボッティアが提供するAIエージェントを使っている。今までの技術では相手との会話が少しでも重複すると、上手く対応できなくなることもあったが、今は相手に合わせてかなり柔軟に会話をつないで進めることが可能。先行するクライアントでは導入前にデモを見せるが、皆さん驚くほどで、AIだと気づかないようなレベルになっている」
——育成などでAIを活用することは。
「一つは導入研修パートでのロールプレイングの相手役がある。相手役は高齢者であったり、怒りっぽい人、ゆっくりしゃべる人などあらゆるパターンをプロンプトで簡単に作れる。そこで実際にオペレーターが会話を進めて終わった後に、良い点や改善点などをAIの方が提示する。
以前はSVやチームリーダーなどがこの研修を担当しており、(他の業務の兼ね合いから)できる回数にも制限があった。これがAIになったことで、制約もなく一人で学習を行えるため、習熟度も相当高めることができる。
動画研修というものが好評で、自分で巻き戻して上手くいかなかった箇所などを何度も聞き直せる。弱点箇所が可視化されて、そこを繰り返し訓練するという工程がAIでできるようになったことで現場の負担は大きく減った。また、効率化されたことで実践デビューするまでの研修期間も短縮できている」
——AIが教育を支援することで、効率化以外のメリットは。
「一つはコスト面。人が付きっ切りではなくなったのでその分のコストがなくなる。また、当社の場合、オペレーターの年齢が比較的高めで40〜50代が集まっている。細かい話ではあるが、若い管理者から直接指導を受けるよりも抵抗感が少ない効果もあるのでは」
——AIの活用推進で管理者側が変わることとは。
「直感的に使えるツールなので習得で苦労することはないが、クライアント側の業務プロセスを理解して、どこにAIやDXを組み込めばいいかという提案を考える必要は出ている。また、日々寄せられる音声データのフィードバックや分析、改善に向けた施策の立て方など、これまで時間を要していた作業がAIで簡単になったため、それ以外の部分でオペレーターをケアしてきちんとKPIに導く作業に力を入れていくことになる」
——クライアントへのAI導入の過程で、考える提案とは。
「例えば音声AIをいきなり全面的に入れるところはまだ少ない。まずは最初の簡単な入り口部分はAIにして、あとは内容によって人が行うなど。通販で言えば、商材にもよるがインフォマーシャル放映直後は人が対応して、ピークが過ぎればAIに切り替えたり、ボットにすることも考えられる」
——AI活用を踏まえた今後の方針は。
「今までは窓口単位で業務を預かって、そこで生産効率を高めることをしていた。ただ、これからはもっと上流に向かっていき、より大きな課題を解決していく方向で動いている。単純に顧客からの電話を受けるだけではなく、そこから新しい商品を案内して提案していくということなど。実際に金融関係では6月に金融サービス仲介業の登録を完了して、相続や口座開設の相談も受けられるようになった。
通販の場合では、AIで分析した顧客データをもとにマーケティング面にも踏み込むようなこともある。当社にはウェブ広告の部隊などがあるのですでに連携しているケースもあるが、今後はそうしたところをより意識して、展開できる領域を拡張していきたい」
〈ベルウェール渋谷〉
部門横断のAIラボ開設
DX推進と新事業創出の拠点に
代表取締役会長
平野 宏 氏
——昨今の人材獲得事情について。
「年々難しさが増している。特に十分な業務経験を持つオペレーターや、複数の業務を管理できるSV、マネジメント人材の採用・育成は業界共通の課題。また、人材不足は採用面だけの問題ではない。採用や教育にかかるコストの増加、既存社員への業務負荷の集中、管理者が目の前の運営対応に追われて人材育成や業務改善に十分な時間を割けないといった影響も生じる。そのため採用人数を増やすだけでなく、AIやデジタル技術を活用して業務そのものを見直し、限られた人材がより高い価値を生み出せる環境を整えることが重要だと考えている」
——業務支援や人材育成の場面で、AIを活用することは。
「業務支援では複雑な業務マニュアルやFAQなどを参照して適切な回答を導き出す『FAQ型AI』や、多数の商品を取り扱う窓口における商品情報の検索、回答案の生成などに活用している。また、クラウド型の音声文字起こし・要約ツールについて、約1年間のPoC(概念実証)を経て、本格導入を開始した。応対履歴の入力や要約といった通話後の事務処理に加え、管理者による通話内容の確認や研修準備に要する工数の削減を進めている。
人材育成では通話録音の内容をもとに、AIがモニタリング評価の一次採点を行う機能や、業務マニュアルからオペレーター向けの理解度テストを自動生成する機能などを自社開発し、現在PoCを実施している。
当社が重視するのはAIによる業務の効率化自体ではなく、そこで生まれた時間と人的リソースを、より良い顧客体験の創出に振り向けること。AIには、検索、要約、分類、一次評価などの大量かつ定型的な処理を担わせる。一方、人は共感を伴うコミュニケーション、高度な判断、個別事情に応じた対応、人材育成、業務改善といった、人だからこそ生み出せる価値に注力する。この役割分担によって、人材不足を補完すると同時に応対品質とCXの向上を両立できる環境を目指している」
——今年開設した「AIラボ」について。
「これまで培ってきた柔軟な事業展開力、現場におけるスピーディーな対応力、多種多様なコンタクトセンターの運用知見とAIを組み合わせ、人とAIがそれぞれの強みを生かす新たなコンタクトセンターモデルを構築することを目的として、立ち上げた。特定の技術部門だけで完結する組織ではなく、コンタクトセンターの運用部門、システム部門、事業推進部門、営業部門などが連携する部門横断型の組織として位置付けている。
現場が抱える課題を起点に、技術面での実現可能性、導入効果、情報セキュリティ、運用定着までを一体的に検討することが特徴。AIを活用した業務支援ツールの企画・開発、既存業務への導入検証、AIを前提とした業務プロセスの再設計、活用ルールやガバナンスの整備、従業員への教育、クライアント企業への導入提案などを推進している。
また、単に新しいツールを導入するのではなく、実際にツールを利用するオペレーターや管理者の意見を取り入れながら改善を重ねる『現場起点』の開発を重視している。社内のDX推進機能であると同時に、将来の新たなサービスや事業を創出するための研究・開発拠点の役割も担う」
——AIラボの進捗と、中期的な目標は。
「一次受付や定型的な問い合わせなど、一部業務へのボイスボット導入を進めている。特に夜間や休日など人員確保の負担が大きい時間帯や、問い合わせが一時的に集中する場面で、応答率の向上、省力化、コスト削減の効果を検証している。AIが対応することで、オペレーターは苦情や相談、複雑な手続き、複数の事情が絡む問い合わせなど、人による判断や共感が求められる対応に集中できる。AIから人への切り替えを適切に設計し、利便性を高めながらも、お客様が『人に相談したい』と感じた時には円滑につながるストレスの少ない顧客体験の実現を目指す」
——今後の注力方針とは。
「第一にボイスボットや業務支援AIを活用した、人とAIが協働するコンタクトセンターの構築。第二に電話、メール、チャット、SNSなどの顧客接点を横断し、どのチャネルから問い合わせても一貫した対応を受けられる環境の整備。
第三に蓄積されるVOCの高度活用。問い合わせや苦情件数の集計だけでなく、背景にある不満、購入をためらう理由、解約の兆候、商品・サービスへの潜在的な要望などをAIで分析し、クライアント企業の商品開発、販売促進、顧客維持、業務改善へ還元していく。第四に応対業務だけでなく、ウェブサイトやデジタルコンテンツの改善、FAQの整備、顧客コミュニケーションの設計など、顧客接点全体を支援するサービスの拡充。コンタクトセンターで把握した顧客のつまずきやニーズを、デジタル施策の改善に直結させることで、CX領域全体を支援していきたい」
〈うるるBPO〉
高精度のAI-OCR
データ化のコストと時間を削減
新規事業部 部長
野坂 枝美 氏
——展開している事業や拠点数について。
「弊社グループ会社としては様々な業界に向け複数のSaaSを展開している。サービス領域はバラバラに見えるが、すべての事業において『テクノロジー×人の力』を掛け合わせて価値を提供するという共通のビジネスモデルを持っている。一番大きいものが公共事業の入札情報を収集し民間企業に速報として提供するサービス「NJSS」。入札案件が出る官公庁や自治体のページを常にウォッチして、AIのクローリングとそれで取りきれない部分を在宅クラウドワーカーの手で補填しながら、必要な情報をすべて巡回して入札情報を集めている。
また、子会社であるうるるBPOは国内に5カ所の拠点があり、徳島は作業センターとしてBPOの受託案件のスキャニングを行う。福岡、大分はコンタクトセンターでカスタマーサクセスに特化している」
——現在、特に注力しているサービスは。
「AI—OCRツールの『eas(イース)』がある。元々、当社はデータ入力に特化したBPO事業者という形でスタートした。以前から人力ではなく(帳票類の文字を読み取ってテキストデータに変換する)OCRの仕組みはあったが、精度に問題があった。
ただ、企業としてはOCRで安価に抑えたいニーズが根強く、百パーセントに近い精度でデータ化ができるよう、AIを活用して出来上がったのがこのサービス。企業側の帳票類をAI—OCRで読み取った後、クラウドワーカーが人力でチェックする形で、非常に精度が高いツールとなる」
——AIでどれくらい精度を高めることができたのか。
「従来のOCRでは読み取りの精度が40〜50%だったが、AI—OCRとなったことで90%以上になった。残りの10%を人力でチェックして仕上げている」
——導入企業のメリットとは。
「通販のクライアントで言うと、健康食品などはFAXの注文もあり、また、キャンペーンを打つ時は新聞折り込みや郵便はがきのため、返信も手書きとなり、中々紙から脱却できない事情があると思う。中には旧字体の混ざりや、郵便番号と住所が合わないといった不備も発生してしまう。通販にとって受注処理での誤入力やそれに伴う誤配送などは、LTVの低下に直結する深刻な問題。そこを防ぐ意味でもデータの読み取り・入力の精度や速度は非常に重要。
1日に何万件とある注文の処理を通販企業が自社で行うことは大変だが、このサービスは最短で1時間に3000件を処理できる。加えて、AIによる効率化で原価率の低下も図れることは大きい。導入した通販企業では、以前と比べてデータ化にかかるコストを2〜3割ほど削減できた例もある」
——企業の顧客対応を支えるAIの進化について。
「おそらく各社で自前のBPOセンターなどの仕組みを作られているが、AIが進化する中で、自分たちが作ってきた業務フローやセンターの動きが正しいのかどうか不安に感じている部分もあると思う。現場の人たちも日進月歩で進化するAIを果たしてどの部分で使うことが業務効率化につながるか、今はその正解を探すフェーズに来ている。当社は各社の状況を第三者目線で見て来ており、ノウハウが溜まっているため、どのフローでベストなAI活用ができるのか提案することが可能だ」
——BPO市場が過熱する中、自社の差別化策とは。
「バックオフィス専門のBPO会社などは非常に多く、客先に常駐するスタイルも少なくない。しかし、当社では様々な業種から多様なシーンで細かい作業を受けている。そうした部分でのディレクションのノウハウは非常に強みにしているところでもあり、それを様々な場面で応用して展開できる。
あとは、スキャニングの部分。今は色々な書類の電子化が進んでいるが、国内でこれだけのスキャニング機械の台数を取り揃えて、高度なセキュア体制を取れているところはほかにはない。こうしたインフラ面も大きな差別化になる。
いずれにしても、我々としてはAIと人を掛け合わせたAI—OCRを強調したい一方で、やはりそれだけでは通販企業にとって部分的な問題の解消にしかならないと思う。一番は本当に業務そのものを手放せるという、スキャンやコールなど前後作業も含めたBPOに一貫して対応できることが他社にはない最大の強みだと考えている」
深刻化する労働人口の減少と各種コストの高騰は、現在のコンタクトセンター運営において最大の難所と言える。こうした経営課題を克服する鍵として、今や不可欠な存在となったのが、日々進化を続けるAIだ。自動応答に止まらず、オペレーター業務のリアルタイム支援から人材育成のサポートまで、その役割は劇的に広がりつつある。業界をけん引する注目各社に、AI活用の現在地と今後の市場展望について聞いた。
〈ビーウィズ〉
育成期間の短縮に寄与
現場を理解したAI運用が鍵に
AI・DXソリューション部部長
林 慧 氏
キャリア開発部部長
古川 真澄 氏
執行役員 CDO IT基盤部長
伊東 雅彦 氏
——人材確保の状況について。
古川「ここ数年という話ではなく以前から難しい状況。そのため、採用する対象者を増やす考えになり、シフトの柔軟性を持たせている。10年前まではあまり対象となっていなかったようなシニア世代まで広く採用している」
伊東「これまでは採用媒体を打って応募を待つというスタイルだったが、今はリレーションを強化していく採用アプローチに変わっている。友人紹介や人材の登録、スポットワークの活用などを強化したり、仕事検索でもAI検索にかかりやすいようなAIO対策を進めている。
前中計で打ち出していたエイジフリー、エリアフリー、シフトフリーは継続していく。特にエリアフリーについては当社の拠点が無いところでも完全リモートで働いてもらうような仕組みでも行っている」
——シニア人材を含め、新人の業務をAIでサポートするような仕組みは。
古川「顧客との電話応対の中で、次にこれを回答した方が良いという案を画面に出してくれる専用のAIによるFAQ機能『シークアシスト』がある。導入研修は業務の難易度によって1週間で終わるものもあれば、1カ月かかるものもある。研修が長いほど、期間中に自信を失って離脱してしまうケースも出てくる。そのため導入研修は基本的な教育に絞って、あとは現場でシークアシストを使う前提で仕事を始めるということはある。研修期間中の離脱率を抑えるという副次的な効果がある」
——シニア人材の業務習熟度での課題は。
古川「人によって分かれるが、必ずしもシニアだからシステムを使いこなせないということはない。習得までに少し時間がかかる傾向はあるが、結局、現場のフォローによって使いこなせていく実感がある。会話自体はシニアの皆さん得意なので、そういった意味では一長一短なのでは。
実は20代よりも50代の方が後処理にかける時間が短いという社内データもある。若い人はフリック入力が早い一方、タイピングは年配の方が得意ということもある。今はAIによる(後処理作業での)要約機能などもかなり浸透したのでギャップを埋めることができている」
——AIの導入で、育成メニューも時代と共に変化していくか。
林「即時に大きく変わっていくかというとそうではないが、システムの使い方などの部分は今後増える可能性がある。例えばオペレーターのロープレに関して、これまで研修期間の中でやっていたものを、今は業務の隙間時間を活用しながら、AIによる壁打ちをしている。できる環境を提供して、自主的に取り組んでもらうトレーニングのような形。
自分たちの知識アップを図るために使っているプロジェクトもある。テキストを渡してその内容に沿った回答をしてもらうというもので、その評価についてもAIがすべて行うことができる」
伊東「SVなど管理者が忙しいこともあり、これまでは限られた時間の中で中々(評価作業が)できなかった。自主的に行っているオペレーターもいたが、今はインタラクティブにできるようになったという意味では、生成AIの使い道として非常に良いと思う。
関連して、実際の顧客との応対内容の評価もAIで自動化している。これまで人の手で何日もかけていたモニタリング作業自体が、自動的にフィードバックを受けられるようになったため非常に有効だと見ている」
——今後、管理者側が身に付けるべきスキルの変化や、AI活用の注意点について。
伊東「生成AIを業務に活かす一番の部分としては、まず顧客サポートの幅ができたり、正確性や生産性の向上が図れるところだと思う。そのため、AIがきちんと回答を導き出せるように準備をしていくことが求められていく。
AIは、聞けばすべてを回答してくれる夢のような技術ではない。やはり、自分たちが持っている情報を精度高くAIが読みやすい形で整理して提供する必要がある。それを管理するのがベテランのオペレーターであったり、管理者に求められるスキルになる。いかに自分たちのコンタクトセンターは正確な情報を返すことができて、顧客にとって満足な結果を得られる内容を提示できるか。そうしたナレッジマネジメントはこれから特に鍛え上げていくところ」
——今後の市場展望について。
伊東「異業種も含めた新規事業者がBPOサービスに参入してきており、我々の競争相手も変わっていくと見ている。そのため、市場規模自体は微増で推移するが、戦うプレイヤーが変わっていく中では、個性を打ち出していかないと勝てない世界観になってくるだろう。
そうした意味では(クラウドPBXの)『オムニアリンク』などは現場から磨き上げて一定の成長を続けているもの。AIエージェントに関しても、やはり現場のオペレーションを分かっているがゆえに痒いところまで手が届くというアプローチで提供している。応対の部分での差別化だけではなく、その先の裏側においてAIでできるところは何かを本気で考えられるのは、実際のオペレーションが理解できていないと難しい。そうしたノウハウを通じて差別化ができると思う」
〈かんでんCSフォーラム〉
「DXキーマン」を選定
社内全体で人材の底上げ図る
営業本部 ソリューション事業部
デジタルイノベーショングループ部長
平田 和義 氏
——25年度の業績について。
「売り上げは前年比で増収となった。親会社である電力・エネルギー関連の業務が伸長し、通信系も好調に推移した。通販関係では健康食品など既存クライアントからの案件が伸びた。また、昨今の物価高や賃上げの流れもあり、クライアント企業も価格改定に応じてくれているところがあるのでそこも寄与している」
——昨今の人手の確保や育成での課題について。
「現場で予定していた人員を充足できなかったという話も聞くが、既存の人員をシフトすることで上手く回すことができている」
——人材関連の分野においてAIを活用していることは。
「採用活動や育成の場面での活用が始まっている。タレントマネジメント機能の基盤を作ったり、eラーニングや動画での研修活動はもちろん、応対品質評価の自動化、ボットでの代替によるロールプレイングの反復練習などもこれからAIを本格的に導入していくところ。従来のSVによるオペレーターとの面談も、事前にAIでヒアリングを自動化することで一連の作業を効率化していく」
——AIの活用が進むことで、社員に求められるスキルの変化などは。
「特にSVにはこれまでのようなヒューマンリソースマネジメントに長けたスキルだけでなく、AI関連のアプリケーションを使いこなせることなども求められてくる。そのためにリスキリングをしなければならない。
今まさに全社的なDXの対応強化に向けた組織風土の改革に取り組んでいるところ。例えば資格取得の合格祝金制度を大幅に見直していて、DX関連の資格を取得した場合の評価を見直している。全社員に対してオンライン動画学習に関する受講費用の補助を行っているほか、社内で選定した『DXキーマン』が現在38人いる。キーマンにはプロジェクトマネジメント研修やデータドリブン研修などを受講してもらっている。DX人材を底上げすることを目的に、今期から始まった制度。キーマンの下にはさらにSVクラスの管理者人材が数百人はいるので、これからは自主的にDXに取り組まないといけないという会社のメッセージを広く伝えている」
——DX人材の推進を制度化することのメリットとは。
「当社全体のDX系のITリテラシーが高まることで、日々、自動化やAI化が進むクライアントのシステムを使いこなすことができるようになる。我々はBPO事業者でもあるわけで、DX人材が豊富にいることで受けられる仕事もたくさんあると思う。
もちろん、自動音声などではなくきちんと人で対応したいと考えるケースもある。自動化できる範囲は広がっているが、人の能力も高いことがまずは大前提になるだろう。
加えて、個人情報保護、サイバーセキュリティ対策もやるべきことはソフト面、ハード面ともに最大限取り組んでいる。DXを使う以上は切り離せない問題であり、情報漏えいのリスク管理として、安心できる材料になると思う」
——そのほか、近年注力しているサービスは。
「引き続き、クラウドPBXの『Genesys Cloud(ジェネシスクラウド)』の販売を強化している。例えば、デジタル領域の機能としてチャットボットやボイスボットがあるが、そこに有人音声を結合させてシームレスなオムニチャネル対応が可能となっている。さらに、生成AIのバーチャルエージェントやオペレーター・SVを支援するコパイロットなども組み合わせることで、コンタクトセンターの機能を最大限に引き出すことができる。
オムニチャネル対応したいと要望するクライアントは多い。色々な機能をつぎはぎ的に入れるのではなく、ジェネシスクラウドを導入すればこれ一つで対応できる。AIによるオペレーターの応対品質評価の機能もあるため、幅広い業務をカバーできる」
——今後の展望について。
「おそらく業界全体で同じ動きを取っていくとは思うが、そこでいかに当社が先駆けていけるか。デジタルイノベーションとしてAI関連のビジネスを始めてから11年目に入った。先行してスタートした強みを活かしていきたい」
〈トランスコスモス〉
AIで育成習熟度が向上
顧客への提案領域の拡張も加速
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
総括副責任者兼
デジタルプロデュ—ス事業本部 副本部長
金田 浩充 氏
——25年度の業績を振り返って。
「業界全体として中々厳しくなってはいるが、当社は昨対で超えることができた。早め早めにAI対応をしているので収益率は上がっている状態。コスト効率を追求されるクライアントが多く、私たちもそれに応える形でDXを組み合わせて生産効率の向上や入電自体を抑える取り組みが進んでいる。今は自己解決を促す形が多く、最近では音声AIエージェントで精度の高い仕組みもある」
——人材の採用に関しての苦労や対策は。
「基本的に今は採用市況が厳しい。人を集めるのに苦労はあるが、1年前と比べても非常に精度の高いAIができたことで、深夜帯やインフォマーシャル直後の受電などで音声AIが対応できる場面が出てきた。
具体的には当社とモビルスとの合弁会社であるボッティアが提供するAIエージェントを使っている。今までの技術では相手との会話が少しでも重複すると、上手く対応できなくなることもあったが、今は相手に合わせてかなり柔軟に会話をつないで進めることが可能。先行するクライアントでは導入前にデモを見せるが、皆さん驚くほどで、AIだと気づかないようなレベルになっている」
——育成などでAIを活用することは。
「一つは導入研修パートでのロールプレイングの相手役がある。相手役は高齢者であったり、怒りっぽい人、ゆっくりしゃべる人などあらゆるパターンをプロンプトで簡単に作れる。そこで実際にオペレーターが会話を進めて終わった後に、良い点や改善点などをAIの方が提示する。
以前はSVやチームリーダーなどがこの研修を担当しており、(他の業務の兼ね合いから)できる回数にも制限があった。これがAIになったことで、制約もなく一人で学習を行えるため、習熟度も相当高めることができる。
動画研修というものが好評で、自分で巻き戻して上手くいかなかった箇所などを何度も聞き直せる。弱点箇所が可視化されて、そこを繰り返し訓練するという工程がAIでできるようになったことで現場の負担は大きく減った。また、効率化されたことで実践デビューするまでの研修期間も短縮できている」
——AIが教育を支援することで、効率化以外のメリットは。
「一つはコスト面。人が付きっ切りではなくなったのでその分のコストがなくなる。また、当社の場合、オペレーターの年齢が比較的高めで40〜50代が集まっている。細かい話ではあるが、若い管理者から直接指導を受けるよりも抵抗感が少ない効果もあるのでは」
——AIの活用推進で管理者側が変わることとは。
「直感的に使えるツールなので習得で苦労することはないが、クライアント側の業務プロセスを理解して、どこにAIやDXを組み込めばいいかという提案を考える必要は出ている。また、日々寄せられる音声データのフィードバックや分析、改善に向けた施策の立て方など、これまで時間を要していた作業がAIで簡単になったため、それ以外の部分でオペレーターをケアしてきちんとKPIに導く作業に力を入れていくことになる」
——クライアントへのAI導入の過程で、考える提案とは。
「例えば音声AIをいきなり全面的に入れるところはまだ少ない。まずは最初の簡単な入り口部分はAIにして、あとは内容によって人が行うなど。通販で言えば、商材にもよるがインフォマーシャル放映直後は人が対応して、ピークが過ぎればAIに切り替えたり、ボットにすることも考えられる」
——AI活用を踏まえた今後の方針は。
「今までは窓口単位で業務を預かって、そこで生産効率を高めることをしていた。ただ、これからはもっと上流に向かっていき、より大きな課題を解決していく方向で動いている。単純に顧客からの電話を受けるだけではなく、そこから新しい商品を案内して提案していくということなど。実際に金融関係では6月に金融サービス仲介業の登録を完了して、相続や口座開設の相談も受けられるようになった。
通販の場合では、AIで分析した顧客データをもとにマーケティング面にも踏み込むようなこともある。当社にはウェブ広告の部隊などがあるのですでに連携しているケースもあるが、今後はそうしたところをより意識して、展開できる領域を拡張していきたい」
〈ベルウェール渋谷〉
部門横断のAIラボ開設
DX推進と新事業創出の拠点に
代表取締役会長
平野 宏 氏
——昨今の人材獲得事情について。
「年々難しさが増している。特に十分な業務経験を持つオペレーターや、複数の業務を管理できるSV、マネジメント人材の採用・育成は業界共通の課題。また、人材不足は採用面だけの問題ではない。採用や教育にかかるコストの増加、既存社員への業務負荷の集中、管理者が目の前の運営対応に追われて人材育成や業務改善に十分な時間を割けないといった影響も生じる。そのため採用人数を増やすだけでなく、AIやデジタル技術を活用して業務そのものを見直し、限られた人材がより高い価値を生み出せる環境を整えることが重要だと考えている」
——業務支援や人材育成の場面で、AIを活用することは。
「業務支援では複雑な業務マニュアルやFAQなどを参照して適切な回答を導き出す『FAQ型AI』や、多数の商品を取り扱う窓口における商品情報の検索、回答案の生成などに活用している。また、クラウド型の音声文字起こし・要約ツールについて、約1年間のPoC(概念実証)を経て、本格導入を開始した。応対履歴の入力や要約といった通話後の事務処理に加え、管理者による通話内容の確認や研修準備に要する工数の削減を進めている。
人材育成では通話録音の内容をもとに、AIがモニタリング評価の一次採点を行う機能や、業務マニュアルからオペレーター向けの理解度テストを自動生成する機能などを自社開発し、現在PoCを実施している。
当社が重視するのはAIによる業務の効率化自体ではなく、そこで生まれた時間と人的リソースを、より良い顧客体験の創出に振り向けること。AIには、検索、要約、分類、一次評価などの大量かつ定型的な処理を担わせる。一方、人は共感を伴うコミュニケーション、高度な判断、個別事情に応じた対応、人材育成、業務改善といった、人だからこそ生み出せる価値に注力する。この役割分担によって、人材不足を補完すると同時に応対品質とCXの向上を両立できる環境を目指している」
——今年開設した「AIラボ」について。
「これまで培ってきた柔軟な事業展開力、現場におけるスピーディーな対応力、多種多様なコンタクトセンターの運用知見とAIを組み合わせ、人とAIがそれぞれの強みを生かす新たなコンタクトセンターモデルを構築することを目的として、立ち上げた。特定の技術部門だけで完結する組織ではなく、コンタクトセンターの運用部門、システム部門、事業推進部門、営業部門などが連携する部門横断型の組織として位置付けている。
現場が抱える課題を起点に、技術面での実現可能性、導入効果、情報セキュリティ、運用定着までを一体的に検討することが特徴。AIを活用した業務支援ツールの企画・開発、既存業務への導入検証、AIを前提とした業務プロセスの再設計、活用ルールやガバナンスの整備、従業員への教育、クライアント企業への導入提案などを推進している。
また、単に新しいツールを導入するのではなく、実際にツールを利用するオペレーターや管理者の意見を取り入れながら改善を重ねる『現場起点』の開発を重視している。社内のDX推進機能であると同時に、将来の新たなサービスや事業を創出するための研究・開発拠点の役割も担う」
——AIラボの進捗と、中期的な目標は。
「一次受付や定型的な問い合わせなど、一部業務へのボイスボット導入を進めている。特に夜間や休日など人員確保の負担が大きい時間帯や、問い合わせが一時的に集中する場面で、応答率の向上、省力化、コスト削減の効果を検証している。AIが対応することで、オペレーターは苦情や相談、複雑な手続き、複数の事情が絡む問い合わせなど、人による判断や共感が求められる対応に集中できる。AIから人への切り替えを適切に設計し、利便性を高めながらも、お客様が『人に相談したい』と感じた時には円滑につながるストレスの少ない顧客体験の実現を目指す」
——今後の注力方針とは。
「第一にボイスボットや業務支援AIを活用した、人とAIが協働するコンタクトセンターの構築。第二に電話、メール、チャット、SNSなどの顧客接点を横断し、どのチャネルから問い合わせても一貫した対応を受けられる環境の整備。
第三に蓄積されるVOCの高度活用。問い合わせや苦情件数の集計だけでなく、背景にある不満、購入をためらう理由、解約の兆候、商品・サービスへの潜在的な要望などをAIで分析し、クライアント企業の商品開発、販売促進、顧客維持、業務改善へ還元していく。第四に応対業務だけでなく、ウェブサイトやデジタルコンテンツの改善、FAQの整備、顧客コミュニケーションの設計など、顧客接点全体を支援するサービスの拡充。コンタクトセンターで把握した顧客のつまずきやニーズを、デジタル施策の改善に直結させることで、CX領域全体を支援していきたい」
〈うるるBPO〉
高精度のAI-OCR
データ化のコストと時間を削減
新規事業部 部長
野坂 枝美 氏
——展開している事業や拠点数について。
「弊社グループ会社としては様々な業界に向け複数のSaaSを展開している。サービス領域はバラバラに見えるが、すべての事業において『テクノロジー×人の力』を掛け合わせて価値を提供するという共通のビジネスモデルを持っている。一番大きいものが公共事業の入札情報を収集し民間企業に速報として提供するサービス「NJSS」。入札案件が出る官公庁や自治体のページを常にウォッチして、AIのクローリングとそれで取りきれない部分を在宅クラウドワーカーの手で補填しながら、必要な情報をすべて巡回して入札情報を集めている。
また、子会社であるうるるBPOは国内に5カ所の拠点があり、徳島は作業センターとしてBPOの受託案件のスキャニングを行う。福岡、大分はコンタクトセンターでカスタマーサクセスに特化している」
——現在、特に注力しているサービスは。
「AI—OCRツールの『eas(イース)』がある。元々、当社はデータ入力に特化したBPO事業者という形でスタートした。以前から人力ではなく(帳票類の文字を読み取ってテキストデータに変換する)OCRの仕組みはあったが、精度に問題があった。
ただ、企業としてはOCRで安価に抑えたいニーズが根強く、百パーセントに近い精度でデータ化ができるよう、AIを活用して出来上がったのがこのサービス。企業側の帳票類をAI—OCRで読み取った後、クラウドワーカーが人力でチェックする形で、非常に精度が高いツールとなる」
——AIでどれくらい精度を高めることができたのか。
「従来のOCRでは読み取りの精度が40〜50%だったが、AI—OCRとなったことで90%以上になった。残りの10%を人力でチェックして仕上げている」
——導入企業のメリットとは。
「通販のクライアントで言うと、健康食品などはFAXの注文もあり、また、キャンペーンを打つ時は新聞折り込みや郵便はがきのため、返信も手書きとなり、中々紙から脱却できない事情があると思う。中には旧字体の混ざりや、郵便番号と住所が合わないといった不備も発生してしまう。通販にとって受注処理での誤入力やそれに伴う誤配送などは、LTVの低下に直結する深刻な問題。そこを防ぐ意味でもデータの読み取り・入力の精度や速度は非常に重要。
1日に何万件とある注文の処理を通販企業が自社で行うことは大変だが、このサービスは最短で1時間に3000件を処理できる。加えて、AIによる効率化で原価率の低下も図れることは大きい。導入した通販企業では、以前と比べてデータ化にかかるコストを2〜3割ほど削減できた例もある」
——企業の顧客対応を支えるAIの進化について。
「おそらく各社で自前のBPOセンターなどの仕組みを作られているが、AIが進化する中で、自分たちが作ってきた業務フローやセンターの動きが正しいのかどうか不安に感じている部分もあると思う。現場の人たちも日進月歩で進化するAIを果たしてどの部分で使うことが業務効率化につながるか、今はその正解を探すフェーズに来ている。当社は各社の状況を第三者目線で見て来ており、ノウハウが溜まっているため、どのフローでベストなAI活用ができるのか提案することが可能だ」
——BPO市場が過熱する中、自社の差別化策とは。
「バックオフィス専門のBPO会社などは非常に多く、客先に常駐するスタイルも少なくない。しかし、当社では様々な業種から多様なシーンで細かい作業を受けている。そうした部分でのディレクションのノウハウは非常に強みにしているところでもあり、それを様々な場面で応用して展開できる。
あとは、スキャニングの部分。今は色々な書類の電子化が進んでいるが、国内でこれだけのスキャニング機械の台数を取り揃えて、高度なセキュア体制を取れているところはほかにはない。こうしたインフラ面も大きな差別化になる。
いずれにしても、我々としてはAIと人を掛け合わせたAI—OCRを強調したい一方で、やはりそれだけでは通販企業にとって部分的な問題の解消にしかならないと思う。一番は本当に業務そのものを手放せるという、スキャンやコールなど前後作業も含めたBPOに一貫して対応できることが他社にはない最大の強みだと考えている」