コロンビアスポーツウェアジャパン 情報発信は販売スタッフが主役 動画などでコンテンツ強化
2022年 8月 2日 10:00
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「コロンビア」は米国で創業したブランドであるものの、日本向けの商品は日本で企画・デザインするアイテムも多いため、商品に対して熱い思いを持つ企画担当者やデザイナーが社内にいる。
加えて、全国に50店舗以上の直営店を展開。インショップやアウトレット店舗を含めると100店舗以上、500人規模の販売スタッフを抱えていることから、作り手や売り手として商品の情報を発信できる人が大勢いるのは、オンライン上で顧客とコミュニケーションをとる上で大きな強みだ。
コロナ1年目の2020年は最初の緊急事態宣言で実店舗が休業となったため、EC比率は従来の倍近くまで一気に高まった。
緊急事態宣言の解除後に実店舗が再開しても従来のような接客はしづらい状況が続いた。「コロンビア」は自社開発のテクノロジー素材に強みを持つが、防水や保温、冷感、吸湿・速乾といった商品の特徴は、接客を行うことで興味を持ってもらったり、納得してもらったりすることが多い。
コロナ禍では積極的な接客が行えない分、店頭に商品の特徴を記載したPOPを設置したほか、QRコードから説明動画を見てもらう取り組みも20年夏にテストとして50店舗で実施したという。
また、販売スタッフは店舗再開後の隙間時間を利用してSNS経由の情報発信を加速した。コロナ以前は炎上リスクなども考慮してスタッフのSNS発信には積極的ではなかったが、「コロンビア」の原宿店からテスト的に始め、徐々に展開店舗を増やして20年後半には全店舗に広げた。
スタッフの投稿画像は所属する各店のインスタグラムアカウントと自社ECにアップされるようにしたことで、「コロンビア公式通販サイト」内のコンテンツが充実化し、実店舗再開後もEC売り上げの拡大につながった。
同社では「実店舗と販売スタッフは大事な資産。店舗スタッフは自社ECの主役であるべき」(石田顕教Eコマース部コンテンツクリエイティブ&CRM課長=顔写真)とし、徐々に店舗スタッフの露出を増やしている。
ブランドの世界観や新商品の特徴を伝えるシーズンルックにも店舗スタッフをモデルに起用することで、スタッフのモチベーション向上だけでなく、来店の動機付けにも期待している。
同社では投稿画像の閲覧数やEC売り上げへの貢献度などを把握できるようにしており、今後はそうした数値を店舗ごとの評価に加える制度も検討しているようで、すでにオンライン上でも活躍するスタッフや店舗が出てきているという。
異業種コラボや「マクアケ」活用も
21年9月にはシステム刷新に合わせ、ユーザービリティの改善を目的に、自社ECと直営店の顧客IDを統合。リアルでもネットでも同じポイントを貯めて使えるようにし、両チャネルを併用するユーザーの割合も徐々に高まってきている。
自社ECの新客開拓については、日清食品ホールディングスの「カップヌードル」やヤッホーブルーイングの「よなよなエール」など異業種とのコラボ企画を実施し、これまでリーチできなかった層に「コロンビア」を知ってもらう企画を展開している。
また、応援購入サービスの「マクアケ」では複数回、プロジェクトを実施した。自社の顧客とは異なる、アーリーアダプターと呼ばれる層へのアプローチを図っている。
今春の第2弾プロジェクトでは、日本の夏のキャンプを快適に過ごせる、冷感機能搭載の「キャンプパジャマ」を「マクアケ」で先行販売して目標金額の約5倍の応援購入額を達成。「マクアケ」での反響の高さに応える形で、7月からは自社ECと「ゾゾタウン」限定で一般販売を始めた。
今後は、コロナ禍で増えたEC利用者の定着化に向け、会員プログラムの詳細設計やMAツールの積極的な活用など、会員サービスの向上とエンゲージメントの強化に注力することで、EC売上高の拡大とともに実店舗とECの併用ユーザーを増やしていく。
加えて、アウトドアウェアメーカーならではの価値や魅力の発信に努める。コロナ禍で店頭スタッフによる情報発信が加速したことや、EC部門の人材がそろってきたこと、システムの刷新でできることも増えたことから「準備は万端」(石田課長)とし、今後はさらなるコンテンツの充実化を図る。
「コロンビア」は登山やフィッシングを軸とするブランドのため、よりフィールドに近いところでの情報発信もしていく。
一方、商品に触れられないというECの課題解決の一環として、動画活用を本格化する。これまでにインスタ投稿を全店舗で始め、さまざまな体型のスタッフが商品を着こなすことでサイズ感などは分かりやすくなったが、商品の素材感までは伝え切れていないと判断した。
コロンビアは、CRI・ミドルウェアのウェブ動画ソリューション「CRI LiveAct(ライブアクト)」を昨年4月にテスト導入してABテストを実施した結果、動画を付けた商品のコンバージョン率が15%上昇したという。
「CRI LiveAct」は圧縮技術によって動画の画質を損なわずに低容量で動画を配信できるほか、コマ撮り不要で撮影された動画から高品質な360度スワイプ動画を自動作成できるなどの強みがある。
コロンビアは年に2回、卸向けの展示会を開催しているが、コロナ禍で来場できない企業もあることから、卸向けのリッチコンテンツとしても動画を活用。PDFカタログに360度スワイプ動画へのリンクを付けることで、商品画像や説明文だけでなく動画も確認してもらってから、各商品の発注量を決めてもらうことができる。
同社では、当該動画を自社ECの商品詳細ページにも掲載することで、消費者の購入判断をサポートするほか、動画作成のコスト効率を高めており、「卸向けも含めて欠かせないツールになっている」(石田課長)とする。
動画の撮影については、卸向けの展示会に合わせてモデルを務める販売スタッフを呼び、2日間で約100本を撮影している。
「CRI LiveAct」は動画をアップする際に管理画面でリンク先を設定でき、閲覧中の動画をクリック、タップするとリンク先に遷移させることができるため、今後は同社の強みでもあるテクノロジー素材をユーザーに知ってもらい、より興味を持ってもらえるようにサイト内導線を工夫していく。
また、現状ではシューズ類に360度スワイプ動画を活用していないが、撮影方法を工夫することでアウトドア用シューズの大事な要素でもあるソール部分をしっかり見せられるため、9月からの秋冬シーズンの立ち上がりに向けて当該動画の実装を検討する。
ECでのシューズ購入はハードルが高いものの、「シューズを一度でも購入して頂いたお客様の定着率は高い」(石田課長)ことから、動画やサイズソリューションなどを活用することでシューズ類の購入率も高めたい考え。