前期はECが2桁増収【WEB事業部責任者の林亮介氏に聞く AOKIのEC戦略の現状と今後㊤】 4つのOMO施策が奏功
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――直近のスーツEC市場における環境変化について。
「他のカジュアル業態でもそうだが、コロナが5類に移行して実店舗への来店者が増えた。実店舗回帰は業界全体で進んでいる。また、リモートから出社が増えたことで、しばらくスーツを購入していなかった人がビジネスウェアを購入するケースも見られる。各社の決算を見る限りECは伸びているが、成長率ではコロナ禍の時と比べるとやや落ちているのかもしれない。ただ、コロナが終わってもECを利用する人はかなり残っていると思う。
また、ビジネスウェア自体にスーツ以外のものが増えてきた。当社で言えば『パジャマスーツR』など、従来のドレスウェアとは異なるものが好調に動いている。カジュアル感のある商品はECで販売しやすいものなので、特に売れている」
――2023年3月期のEC売上高については。
「前年比2桁増で、非常に好調だった。昨年に関してはまず、『PayPay』や『d払い』など多様な決済手段に対応するようになった。加えてOMO施策の強化も実施している。商品面では先ほどのパジャマスーツRやレディースの打ち出しも強く行った。EC限定商品の開発では(着て休むだけで疲労回復をサポートする機能性商品の)『リカバリーケアプラス』があり、すぐに完売した。現在も第2弾、第3弾と販売しており、一部実店舗でも扱うようになっている」
――ビジネススーツの需要については。
「急激に伸びたということではないが、堅調に推移した。ECで一番売れたものはシャツで、レディースのブラウスなどトップスがとても良かった。基本的にシャツの構成比は実店舗と比べて高い。昨年に関してはオフィス勤務の回帰で、枚数をまとめて買う傾向が見られたため、そこに合わせて行ったセットセールの利用率が高かった」
――OMO施策については。
「大きくは4つある。まずはEC購入商品の『店舗受け取り』。そして、ECで見つけた商品を(試着のために)店舗に取り寄せる『取り置き予約』。さらに、実店舗に置いてない商品をECでオーダーしてそれを自宅に配送する『ウェブオーダー』。最後が、『テイクアウト』。これは、顧客が実店舗でスーツの接客を受けた際に、他の店舗の商品も見てから購入するというケースもあり、以前は店舗スタッフが裏面に品番を書いた名刺を渡していた。このサービスでは紹介した商品を二次元コードにまとめて、後にスマホで読み取ってもらえればそのままECで購入できるというもの。これら4つのサービスは以前から行っていたが、前期でさらに加速させたイメージ」
――具体的には。
「ウェブオーダーについては、昨年の段階では50店舗での展開だったが、今は『ORIHICA』については全店舗で展開しており、『AOKI』でも今は2店舗でトライアル導入し、今後も順次拡大していく予定。
他の3つに関しては昨年の時点ですでに全店で展開していたので、そのサービス認知を高めるためのキャンペーンを行った。例えば昨年秋には、取り置き予約の利用で割引クーポンを付与するなどパジャマスーツRの企画と合わせて特集した。やはり実際に着てみないと良さが伝わらない商品もあると思うので、まずはECで見て店舗で試してもらうということで誘引した。取り置き予約は利用者数が想定以上に増えていて前年は前々年の倍にまで増えた。特にレディースが多く、サイズ感や生地感、丈感などを確認する様子が見られた」(つづく)