〈企業公式X中の人の視点 GMOサインの馬が考える⑥〉 トレンド1位は、何を保証してくれるのか ──順位と、見られている量は別の話

2026年10月05日 10:01

2026年10月05日 10:01

 前回は、AIの回答で成功事例として名前が挙がること、そのために第三者に書かれる状態を積み上げるという話を書きました。今回は少しXの中に戻ります。Xのトレンドの話です。正直なところ、Xのトレンドは以前より入りやすくなったと感じています。トレンド入りを狙って取りにいく企業のキャンペーンも増えました。ただ、そこで気になっていることがあります。「トレンド入り」や「トレンド1位」という言葉だけが、独り歩きしているように見えるのです。

投稿件数が見えなくなり、順位だけが残った


 かつてXのトレンドには、ワードの下に投稿件数が表示されていました。1位が何万件なのか、10位は何千件なのか。規模が誰の目にも見えていたのです。ですが、2026年に入った頃から、その数字が出なくなりました。さらに複雑なのが、トレンドがカテゴリごとに細かく分かれ、そのユーザーの興味関心に合わせて出し分けられるようになったことです。全体のランキングとは別に、一部の人にだけ表示される枠があります。ここに載ることと全体のランキングに載ることはまったく規模の違う話です。ですが、どちらも「トレンドに入りました」と言えてしまいます。実際にそう報告している企業の投稿なども、よく見かけます。件数が見えなくなり、枠の種類も増えたことにより、トレンドという言葉が指しているものが、以前よりずっと曖昧なものになってしまっています。残ったのは、順位や入ったという事実だけです。

トレンド1位でも、トップに表示される投稿が10万代のimpに留まることも


 1005113305_6ac30c610fb79.jpgXのトレンド1位に載るということは、Xの中で最も目立つ場所にトレンドワードが並ぶということです。かつては、1位の上に24時間表示される広告枠が1日1000万円程度だったため、1位には高価な広告換算があると説明することができていました。しかし、最近のXではトレンド1位でもこの数字なのかと思うことが、正直増えてきました。1位のワードを押したとき、トレンドのきっかけとなっているため一番上に表示される企業キャンペーン投稿などのインプレッションが10万台にとどまっているケースなどをよく見かけます。参考までに、わかさ生活で2024年4月23日に「#わかさ生活26周年」でトレンド1位を記録した際の数字を調べてみると、関連投稿で最も伸びたものが23万imp。トレンドを押した際に1番上に表示され続けたキャンペーン投稿単体では46万、その日のアカウント全体では合計110万impに達していました。このトレンド入りはキャンペーンを主軸に据えていたわけではありません。それでも2番目以降に表示された関連投稿は20万impを超えていました。同じ1位でも、そのワードがどれだけ押されて見られているかは、まったく別の話なのです。

 トレンド入りの仕組みを思い出すと、これは不思議なことではありません。トレンドは総投稿数ではなく、短時間でどれだけ急激に投稿が増えたかという、いわば瞬間風速で決まります。つまり、少ない投稿数でも短い時間に集中させれば1位を取ることができます。この順位は「そのワードがどれだけ急に伸びたか」の指標であって、「どれだけ押されて見られたか」の指標ではありません。この二つを同じものとして扱うと、判断を誤るのです。

キャンペーンは、トレンドに入るためのものではなかった


 わかさ生活時代、私は6度トレンド入りを経験しました。企画にはお金をかけず、協賛として無償で他社企業がキャンペーンに商品を提供してくださり、フォロワーさんとともにトレンド入りを目指しました。ここで振り返っておきたいのは、その順序です。キャンペーンを打ってトレンドに入れていたのではありません。キャンペーンを開始する前の時点で、すでにトレンドには入っていたこともありました。順位を上げるブーストとして使っていたのです。ランクインの目指し方によって集まってくる投稿の質や熱量が変わります。キャンペーンで集めた投稿は、応募という行為が動機です。当選確率を上げるために、指定されたハッシュタグを付けて投稿する。そこに書かれているのは自分の言葉ではなく、企画側が用意した文言であることも多いのが現状です。数だけを見れば伸びていますが、ひとつひとつの投稿に熱があるかというと、そうではありません。ブルーベリーの日も創業日も応募目的ではない投稿を土台にして、トレンド入りをしていました。自分の言葉で書かれた投稿か応募目的の投稿かで、同じトレンド入りでも、価値がまったく変わってくるのです。


トレンドに入っても、押されるとは限らない


 もう一つ、見落とされがちなことがあります。トレンドに入っても、そのワードがタップされる保証はどこにもないということです。一覧に並んでいるだけで素通りされるワードのほうが、圧倒的に多いのです。だとすれば、考えるべきことは二つに分かれます。押されなくても自社に何かが残る形にすること。そして、押されたときには、自社の投稿が確実に出てくる状態を作っておくことが大事になります。

 わかさ生活で毎年トレンド入りを目指していた「ブルーベリーの日」は、4年連続でトレンド入りし、3年連続で最高順位2位を記録しました。何度挑戦しても同じ日の記念日であった「#世界猫の日」には勝てませんでしたが、365日のうち、トップクラスに記念日が多い8月8日の中で、4年連続トレンドを記録できたのは熱いフォロワーの支えがあってこそでした。そして、このトレンド入りの際に意識していたのは、押されたときに何が出てくるかでした。ブルーベリーの日をタップした人が、その先でわかさ生活の投稿を目にする。毎年トレンドに入ればXだけでなく、朝の情報番組やWEBでの記念日紹介など、外部での波及が増えて、ブルーベリー=わかさ生活という第一想起の仕組みづくりに一役買うと確信していました。

 一方で「#わかさ生活〇周年」のタグは、2年連続でトレンド1位を取りました。25周年というキリの良い2023年に実施し、1位が狙えるならと翌年も実施しました。こちらは「#ブルーベリーの日」とは狙いが違います。ブルーベリーの日が「押された先」の設計だったのに対して、創業日のタグは「トレンドという枠そのものに、自社名を含む投稿を表示させること」に価値を置いていました。これは、押されなくても自社に残る形の答えでした。あの一覧に社名が並んでいる時間そのものが、露出になるからです。同じトレンド入りでも、この二つは設計思想がまったく別のものでした。

次はGMOサインで、その枠を取りにいきたい


 こうして振り返ると、私がやっていたのはトレンドの順位を取ることではなく、トレンドという枠をどう使うかを設計することでした。当時は言語化できていませんでしたが、今ならそう言えます。冒頭で書いた通り、トレンドに入ること自体は以前ほど難しくなくなりました。だとすれば、差がつくのは入ったあとです。順位しか報告できない企画と、中身まで報告できる企画は、外から見える数字が同じでも、実際に残るものがまったく違います。

 わかさ生活の頃は、1分に300〜500の投稿が生まれることでトレンド上位にランクインしたと記憶しています。わかさ生活の公式Xを5年間運用してきた私は、現在、電子契約サービスGMOサイン公式X(@GMO_Sign)の公式Xを担当しています。入社から1年半が経ち、BtoBのアカウントでありながらもフォロワーは2万人以上増え、250名を超えるコミュニティを持つに至りました。この規模になったなら、またフォロワーとトレンド入りを楽しめる記念日を作れるのではないか。今はそう考えています。電子契約といえばGMOサイン。そう第一想起されるきっかけを一つ持つこと。それは会社にとっての追い風にもなり、フォロワーの皆さんと一緒に盛り上がれる思い出にもなります。トレンド欄にGMOサインという言葉が入り、押されたときにGMOサインの投稿が出てくる状態を作り、より多くの人に見てもらう。トレンドという枠を、そのために使いたいと思っています。

GMOサイン(@GMO_Sign)中の人「馬」

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新卒でわかさ生活に入社し、広報として公式Xの運用を担当。馬の被り物という独自の手法で5年間運用し、フォロワー数を約9900人から17万人まで拡大。年間インプレッションは2年連続で3億回を記録。「企業公式中の人」人気ランキング1位。現在はGMOグローバルサイン・HDの電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン(@GMO_Sign)」公式Xを担当。BtoBとして異例の水準を記録しながら、AIによるアルゴリズム変化の最前線で仮説検証と数値分析を重ねている。

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